お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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えり抜きエントリー選集
  • 2011.03.03: 世界の材料科学者トップ100にランクイン
  • その他 | 16:08 | comments(0) | - | - |
    最新版 RIETAN-FP・VENUS システムのお披露目を兼ねた講習会

    1. 「ソフトは無料、参加費も無料!」へのこだわり


    私は長年、粉末回折に関する講演や講義の依頼に応じてきました。その間の経験を通じ、一方通行の講義だけの講習会を受講しても粉末構造解析技術の習得は困難だと痛感するに至りました。そのため、科学技術人材育成事業 Nanotech CUPAL の一環として構造解析(サブコース A : 粉末回折)の講師に就任後は、PC を使う実習を積極的に導入するとともに懇切丁寧なチュートリアルを執筆し、できるだけ教育効果を上げるよう努めました。さらに、英語での講義用に作成した英文スライドは156枚に上ります。

    2014年以来、当該人材育成事業に従事した結果、次の二点を再認識しました。
    1. ソフトウェアや解析技術について教えるには座学だけでなくハンズオン(体験学習)も必要不可欠である。
    2. ハンズオンでは、文献、URL、注意事項などが記載されており、実習内容を復習するのに役立つチュートリアルを配付することが望ましい。
    講義や講演は事前の準備が楽な反面、聞き流されがちで、技術の習得はさほど期待できないといって過言でありません。

    過去三年半にわたり営々と作成しブラッシュアップしてきた教材、すなわち講義用 PDF ファイル、インストーラー、チュートリアルは龍谷大岡山大神戸大京大九大で催したワンマン無料講習会で再利用しました。その結果、ほぼ同じ内容の講習会を NIMS 外で開けば、労せずして十数倍の参加者が集まるという深刻な格差を繰り返し直視する羽目に陥りました。主につくば市の研究機関が育成実施機関となっている Nanotech CUPAL 全般の傾向として、地理的理由から敬遠されるのです。おまけに、募集要項は講師の名前を明記しない不可解な様式に統一されています。こんな体たらくでは、実績と知名度で人を引き寄せられる講師はいないと暗示しているのも同然です。あくまでポスドクの雇用が主目的で、教育活動には腰が引けているという姿勢が透けて見えます。

    そこで、少しでも多くの方々に入門コースに参加して頂くため、せめて参加費は無料にしてほしいと担当者に要望しましたが、その願いは叶いませんでした。育成対象外の方々、とくに学生からお金を徴収するのは苦痛以外の何物でもありません。心がポキッと折れてしまった私は、2017年度限りで Nanotech CUPAL に見切りを付け、その講師を辞任する決意を固めました。つくば市は交通の便が悪いだけでなく、市内にある筑波大、KEK、産総研からの受講者がさほど期待できません。自ら全国各地に足を運んで無料講習会を開けば、人が集まりやすい上、受講者の交通費と宿泊費も節約できる、と三年かけて悟ったのです。

    一方、私は最低限のバランス感覚も備えています。東工大と Nanotech CUPAL の共催で粉末構造解析に関する無料ワンマン講習会(サブコース A の入門コースに相当)を東工大・大岡山キャンパスで9月末に開催し、遅ればせながら Nanotech CUPAL の「卒業式」に代える心積もりです。詳細が決まり次第、本 HP に掲示します。初の東京開催ともなれば、Nanotech CUPAL 入門コースの四年分を上回る受講者が集まるでしょう。

    2. 独演講習会 = 座学 + Windows・macOS を使う体験学習


    来年度はまずゴールデンウィークの直後に名古屋で無料講習会を開催します:


    第 22 回 ナノ構造研究所 材料計算セミナー

      RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析 

    日時: 2018 年 5 月 7 日(月)・8 日(火)
    会場: ファインセラミックスセンター地図



    二日間にわたる実習付きセミナーの開催はファインセラミックスセンター (JFCC) で初めてだそうです。ちなみに、私は2018年度から JFCC の客員研究員に就任します。本講習会は新所属先での初仕事に他なりません。

    本セミナーは粉末構造解析・三次元可視化システム RIETAN-FP・VENUS システムなどを利用した構造解析技術に関する講義と実習からなっています。実習では Windows 機と Mac に半日ずつ割り当てるという前代未聞の試みにチャレンジします。上記 PDF ファイル中の「申込み方法」に従い、A、B、C を一つ以上指定して参加登録してください。UNIX コマンドの集合体 BusyBox を活用したシェルスクリプト (Windows) と誕生間もないテキストエディター Jedit Ω を基盤とする RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境 (macOS) をお披露目します。両者を実装したWindows・macOS 用インストーラーに加え、詳しいチュートリアル(約130ページ)を配付するため、実習内容の復習は簡単です。講義には百数十枚のスライドを使いますが、カラー印刷の経費と手間をカットするため、参加者には二つの講義用 PDF ファイル
    • 粉末回折データの解析技術 — リートベルト法
    • 粉末回折データの解析技術 — パターン分解、未知構造解析、MEM
    を当日までに差し上げます。さらに二種類の副読本も付録として添付します。

    ハンズオンには秀丸エディタ, Jedit Ω, Sumatra PDF, RIETAN-FP v2.86, gnuplot, WinPLOTR (Windows 用のみ), DICVOL, ORFFE, lst2cif, cif2ins, combins, sda, ALBA, superflip, EDMA, FOX, MPF_multi.command+Dysnomia, VESTA などのプログラムを使います。上記のソフトウェア群は
    1. ピークサーチ
    2. 指数づけ
    3. バックグラウンドの決定
    4. リートベルト解析
    5. 多相リートベルト解析用入力ファイルの自動作成
    6. パターン分解
    7. 最大エントロピー・パターソン解析
    8. 未知構造モデルの構築: 双対空間法とレプリカ交換法
    9. MPF (MEM-based Pattern Fitting) 解析
    10. 結晶構造と電子密度分布の三次元可視化
    といった広大な領域を網羅しています。リートベルト解析は one of them に過ぎません。ただし時間の都合上、一部のプログラムは臨機応変にスキップする可能性が大です。といっても、上述のように実習内容はチュートリアルに詳述してありますから、受講者に迷惑をかける恐れはありません。

    中でも cif2ins と 未公開ユーティリティー combins の連携プレーは注目に値します。cif2ins は CIF 中の結晶データをひな形ファイル template.ins に導入することにより RIETAN-FP 用入力ファイル *.ins に変換します。一方、 combins は複数の *.ins から多相解析用入力ファイル multi_phase.ins を自動生成します。multi_phase.ins を改名し、必要に応じて中身を編集してからリートベルト解析に移行します。

    ストリームエディター sed や Perl を活用したシェルスクリプト sda.command による逐次リートベルト解析の自動化は、他に類を見ない独創的な技術です。もちろん文字列の置換には正規表現を使えます。今回の実習では、BaSO4 の粉末X線回折データのリートベルト解析における選択配向ベクトルの決定に応用します。sda.command は温度、圧力、化学組成を変化させて測定した一連の強度データを一挙に自動解析できるよう設計しました。

    比較的時間のかかる計算中に、訴求効果の高いデモンストレーションとして
    を実演します。両者を実習から外すのは TeX LiveMiniconda3 がかなり大きなディスクスペースを占有するためです。ただし後述のチュートリアルを参照すれば、TeX Live と Miniconda3 は容易にインストールできます。

    3. RIETAN-FP・VENUS統合支援環境の新装開店


    参考までに、新たに支援環境に導入した BusyBox と Jedit Ω を以下に紹介しておきます。

    3.1 BusyBox に魅せられて


    Windows 用 RIETAN-FP・VENUS システムに含まれるバッチファイルでは、GnuWin32 の UNIX コマンドを長く利用してきました。コマンドプロンプトが提供する貧弱な環境やコマンドは複雑なデータ処理に向いていないためです。今年の初めに Windows 用 BusyBox を64ビット化した busybox64.exe の存在を知り、非力かつ時代遅れなバッチファイルを撲滅するために一も二もなく飛びつきました。組み込みシステムが主な用途の一つである BusyBox で、一部のコマンド(たとえば bc)や機能(たとえばプロセス置換)が削られているのは承知の上でした。

    Windows Subsystem for Linux は Windows 10 でしか使えない上、純然たる Linux に比べると性能が落ちます。Cygwin はエミュレーターなので、プログラムの実行速度を低下させます。それに、拙作ソフトのユーザーにそれらのインストールを強制する訳にはいきません。

    Windows 用 BusyBox の bash ウィンドウや bash スクリプトでは、BusyBox が内蔵している全 UNIX アプレットがパスを通さずに使えます。UNIX 用アプリケーションを Windows 機に移植するのでない限り、軽量級の BusyBox で十分です。BusyBox さえあれば、既存バッチファイルを bash スクリプトに置き換えられます。そこで、1月下旬から約一ヶ月かけて Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境に含まれる全バッチファイル *.bat を bash スクリプト *.command に書き換え、GnuWin32 のコマンドと onigsed(日本語文字列置換用)の代わりに RIETAN_VENUS¥Commands フォルダー(下図)に置きました。*.command に対応する秀丸マクロ *.mac も並行して改訂しました。今後、配付ファイルと実習用インストーラーにそれらを含めるのは言うまでもありません。



    RIETAN_VENUS¥Commands フォルダーの内容。qpdf は PDF ファ
    イルの合体に使用するプログラム。busybox64.exe は bash.exe に改
    名した。bash.exe のサイズが 511 KB しかないことは注目に値する。

    3.2 Jedit Ω の徹底活用を目指して


    従来、macOS 用 RIETAN-FP・VENUS システムは Jedit Ω の前世代版 Jedit X 上に構築していましたが、64ビット・アプリケーション Jedit Ω に乗り換えました。Jedit Ω は
    1. 構文カラーリング(下図)
    2. 正規表現を使えるスマートインデックス(下図)
    3. メニューショートカットによる AppleScript の実行
    4. 階層化したマクロメニュー
    5. 優れた GUI を通じ二つのファイルを比較
    といった至便の新機能を備えています。 5は別売りのユーティリティー Jdiff X に相当します。Jedit Ω は Jedit X より動作が俊敏で、価格は1,200円と手頃です。OS X 10.10 (Yosemite) 以降で使えます。スマートインデックスで後方参照(\1, \2, …)を使えるのには感激しました。秀丸エディタの相当機能、すなわちアウトライン解析の枠では、そのような離れ業は無理な相談です。



    スマートインデックスメニューで段付けされたブックマークを表示し、
    “Structure parameters” を選ぶ。構文カラーリングにより Select ブ
    ロックと If ブロックの構文がそれぞれ赤と青の文字で表示されている。

    4. おわりに


    当初、JFCC における実習では Mac だけを使い、9月末に開催する東工大での講習会で Windows 機を使用する予定でしたが、強力なモチベーションに背中を押された結果、コロっと気が変わりました。Windows・macOS 上での実習を一日で終わらせなければならぬ上、実習は遅れるのが常なので、昼休みは抜きも同然と覚悟しています。タイミング的・体力的にも悲愴感が漂うデスマッチとなるでしょう。喉の酷使により声が割れたり、かすれたりするのが心配ですが、微力を尽くして乗り切ります。

    JFCC では今秋に VESTA の講習会(ハンズオンを含む)も開催します。ご期待ください。

    本講習会の参加登録者が想定外の勢いで増え続けたため、A (講義) と B (実習: Windows) の定員をそれぞれ90名と65名に増やしました。実習の定員の方が少ないのは充電用コンセントの数がやや少なかったためです。なんと JFCC のホームページに会告が掲示される前日(4月2日)にいずれも満席となってしまい、参加登録を締め切らざるを得ませんでした。90名という参加登録者を2017年度の Nanotech CUPAL サブコース A(計4回)の参加者18名と比べると、後者の5年分に相当する人数を一回で集めたことに相当します。JFCC に着任後の初仕事がこれほどの盛会となったことは嬉しい限りです。
    粉末構造解析講習会が九州に上陸
    2015年秋以来、龍谷大学岡山大学神戸大学京都大学で開催し、好評を博してきた粉末構造解析に関する実習中心の講習会を2018年1月15日 (月)・16日 (火) に九州大学 伊都キャンパスで催します。


    Windows 機に事前インストールすべきソフト、アクセス、キャンパスの地図などについては ナノ材料組織解析学・金子研究室の Web ページに掲示されている会告をご覧ください。

    京大ではハンズオン(体験学習)だけの一日コースを初めて試みましたが、今回は講義(半日)+実習(一日)に戻します。いずれか一日だけの参加も認めます。九州での講習会は初めてなので、定員(120名、先着順)は多めに設定しました。といっても180名収容の大教室が会場ですから、詰め込み感のない環境で受講していただけるでしょう。もちろん学外者にも解放します。万障お繰合せの上ご参加頂ければ幸甚に存じます。

    講義には百数十枚のスライドを使いますが、カラー印刷の経費と手間をカットするため、参加者には二つの講義用 PDF ファイル
    1. 粉末回折データの解析技術 — リートベルト法
    2. 粉末回折データの解析技術 — パターン分解、未知構造解析、MEM
    を当日までに差し上げます。さらに二種類の副読本も付録として添付します。

    ハンズオンには秀丸エディタ (+統合支援環境), RIETAN-FP v2.86, gnuplot, WinPLOTR, DICVOL, ORFFE, lst2cif, cif2ins, combins, sda, ALBA, superflip, EDMA, FOX, MPF_multi.command+Dysnomia, VESTA などのプログラムを使います。上記のソフトウェア群はピークサーチ、指数づけ、バックグラウンドの決定、リートベルト解析、多相リートベルト解析用入力ファイルの自動作成、Le Bail 解析、最大エントロピー・パターソン解析、未知構造モデルの構築(双対空間法とレプリカ交換法)、MPF解析、結晶構造と電子密度分布の三次元可視化といった広大な領域を網羅しています。リートベルト解析は one of them に過ぎません。ただし時間の都合上、FOX はスキップする可能性が大きいです。

    中でも cif2ins と 未公開ユーティリティー combins の連携プレーは注目に値します。cif2ins は CIF (Crystallographic Information File) 中の結晶データをひな形ファイル template.ins に導入することにより RIETAN-FP 用入力ファイル *.ins に変換します。一方、 combins は複数の *.ins から多相解析用入力ファイル multi_phase.ins を自動生成します。multi_phase.ins を改名し、必要に応じて中身を編集してからリートベルト解析に移行します。ストリームエディター sed を活用した sda による逐次リートベルト解析の自動化も便利です。今回の実習では、BaSO4の粉末X線回折データのリートベルト解析における選択配向ベクトルの決定に応用します。

    最後に訴求効果の高いデモンストレーションとして
    1. EXPO2014 を用いた直接法による cimetidine の構造モデル構築
    2. cif2pdf と E2J による CIF の LaTeX 文書化
    3. RIETAN-fP, PyAbstantia, VESTA の連係プレーによるリチウムイオン二次電池用正極材料(三元系: NMC)における Li+ イオンの拡散経路の可視化
    を実演します。1の EXPO2014 の入手は登録が必要なので、実演に留めました。2と3を実習から外すのは TeX LiveMiniconda(python 3.6を使うのに最小限必要な環境)がかなり大きなディスクスペースを占有するためです。ただし後述のチュートリアルを参照すれば、TeX Live と Miniconda は容易にインストールできます。

    参加者には Windows・macOS 用インストーラーも事前配付します。実習・実演の円滑な進行を図るとともに、その内容に遺漏がないように Windows・macOS 上での操作手順を逐一記述したチュートリアル(計132ページ)をインストーラーに同梱します。チュートリアル中には近年書きためてきたブログ・エントリーEvernote の公開ノートへのリンクを多数張ってあるため、豊富な付加的情報が手に入ります。後日、実習・実演内容を再現する際、強力な援軍となるでしょう。

    なお、来春にファインセラミックスセンターで、来夏に東京工業大学で同様な無料講習会を催すという計画に変わりはありません。大学、研究機関、民間企業の別を問わず講義の依頼は随時受け付けておりますので、遠慮なく声を掛けてください。

    おかげさまで本講習会は102名の参加登録者を集め、盛会の内に終了しました。世話人としてご尽力頂いた佐藤幸生先生に厚く御礼申し上げます。
    NIMS 発の論文で被引用数トップの地位を獲得!
    昨年、2000〜2010年の間に世界トップクラスの被引用数を獲得した100人の材料科学者のうち、唯一の日本人が不肖私めだったという椿事について「世界の材料科学者トップ100にランクイン」と題するエントリーに記しました。この衝撃的事実は、特別顧問を務めている PANalytical のオランダ本社からの通知により、遅ればせながら2016年夏に知りました。当時、同社から広報活動用に使わしてもらえないかと打診されたのですが、何分にも5年前の調査結果だったため、丁重にお断りしました。その代わり、東日本大震災の直前にタイムスリップした私が書き散らしたという体裁に脚色し、上記エントリーに仕立て上げた次第です。

    NIMS の所内ホームページでは Web of Science に収録された論文のうち NIMS の研究者が2004年以降に発表した全論文(現時点で20,053報)の被引用数を調査できます。以前は最新データが利用できませんでしたが、今年から頻繁に更新されるようになりました。

    本日、被引用数1,000以上の論文を検索したところ7報の論文がヒットしましたが、なんとそのうち2報が VESTA に関する論文 (Momma & Izumi, 2008; Momma & Izumi, 2011) でした。門馬と泉はもはや NIMS の職員ではありませんが、両論文ではいずれも所属が NIMS となっているため、スクリーニングをくぐり抜けて検索結果にもぐり込んだのです。

    特筆大書すべきなのは、VESTA 3に関する論文 (Momma & Izumi, 2011) の被引用数が2,512に達し、単独首位に躍り出たことです。2万報を超す論文の頂点に立ったのは快挙といって過言でありません。


    下の棒グラフに示すように、この論文は発表以来、被引用数/年が単調に増加し続けているモンスター級論文であることから、数年後に2位以下の NIMS 発論文が絶対に追いつけない、ぶっちぎりのレベルに達するのは確実です。


    可及的速やかにそのような伝説的水準に到達させたいので、VESTA で作成したイメージを含む原著論文やレビューを投稿する際には、ライセンス契約を遵守し、上記論文を必ず引用してください。多種多様な分野の論文で引用されることは VESTA 普及の原動力となります。故意か過失かは知る由もありませんが、かなりの割合で引用されていないように見受けられます。引用を怠った上、プレス発表資料にまで使う不届き者さえいるのは苦々しい限りです。

    今日、VESTA は CrystalMakerDIAMOND に代表される高価な結晶構造作画ソフトを駆逐するためのキラー・アプリケーションとして世界中で活用され、高い評価を得ています。結晶構造だけでなく VASP, ABINIT, WIEN2k を始めとするメジャーな電子状態計算プログラムで得られた voxel データも手軽に視覚化できることが VESTA の普及と知名度向上に拍車を掛けています。

    なお、旧バージョンに関する論文 (Momma & Izumi, 2008) の方は4位に留まりました。とはいえ、未だに年間200回強も引用されているのですから大したものです。「お役目ご苦労さん」と声を掛けたくなります。

    VESTA の前身である VICS・VEND のペアについては、別なエントリー「VESTA の両親 VICS・VEND 秘話 ― 道楽の果て」(2011年12月20日)と解説記事「結晶構造と電子状態の三次元可視化システム VENUS」をお読みください。なお VICS・VEND のソースコードは CD-ROM 版「セラミストのためのパソコン講座」に収録されておりますので、独自の可視化ソフトを製作したいという勇猛果敢な方は参考にしてください。ただし、結晶構造描画と voxel データ可視化を受け持つ個別プログラムを統合し、なおかつ VESTA 3 を凌駕する逸品を製作しない限り、無価値の誹りを免れません。

    VICS・VEND が存在しなかったら VESTA は影も形もなかったに違いありません。私が定めた仕様を具現化するため、プログラマーとして奮闘してくれた Ruben A. Dilanian(現所属:メルボルン大学)に深く感謝します。

    予想通り、2018年5月1日現在、VESTA 3に関する上記論文は被引用数で2位のレビュー論文 (Waser & Aono, 2007) を 633 も上回り、トップを独走中です。彼らの論文が本論文の4年前に発表されたことを考慮すると、にわかには信じ難いレベルの大差です。
    文献 | 09:34 | comments(0) | - | - |
    粉末構造解析ハンズオンの開催(京都大学)
    3月21・22日に神戸大学で Mac ユーザーのための粉末構造解析講習会を開催しました。参加登録者は3月21日(講義)が90人、3月22日(実習)が37人でした。初日が望外の人気だった一方、Mac の使用は二日目の参加者を激減させてしまいました。一方通行の座学を通じて蓄えた知識はなかなか血肉化しないため、実習をスキップされた方々が大半だったのは残念でなりません。そこで9月28日に Windows 機を使用するハンズオンを京都大学・桂キャンパスで開催していただくことにしました。9:30〜18:00の長丁場ですが、年齢的、体力的には余裕綽々です。喉を痛めないよう適時、休憩を入れます。

    詳しくは会告をご覧ください。会場の電気系大講義室は階段教室で見通しが良い上、適度に空席が入るよう定員を60名に抑えるため、快適に受講していただけるでしょう。世話人を快く引き受けていただいた宮崎晃平先生に深謝します。

    実習だけの講習会は初の試みです。神戸大学での講習会の二日目に相当しますが、プレゼンテーションを若干増強することにより、講義を受けていなくても一連の粉末構造解析を体験できるよう工夫を凝らします。

    参加者には Windows・macOS 用インストーラーを事前配付します。実習の円滑な進行を図るとともに,その内容に遺漏がないように Windows・macOS 上での操作手順を逐一記述した懇切丁寧なチュートリアルをインストーラーに同梱します。チュートリアルでは近年書きためてきたブログ・エントリーEvernote の公開ノートへのリンクが多数張られているため,貴重な付加的情報も入手可能です。チュートリアルは現時点で計106ページに達していますが、9月までに一層熟成させます。後日、実習内容を再現する際、強力な援軍になるでしょう。

    2015年秋以来、独演の無料講習会(通常は講義を含む二日間コース)を各地で催しています。これまで龍谷大学岡山大学、前述の神戸大学で開催し、好評を博してきました。来春にはファインセラミックスセンター(名古屋)で、来夏には東京工業大学(大岡山キャンパス)で開く予定なので、東海3県や首都圏の方々にはそちらに参加するという選択肢もあります。

    本講習会は参加申込者が定員を10数名超過したため、7月20日に参加登録を締切りました。
    13 回目の恒例行事 at 神楽坂 (2017)
    1996年以来ほぼ一年おきに催し、好評を博してきた粉末X線回折の講習会を今年も開講します。


     日本結晶学会講習会「粉末X線解析の実際」

    日時: 2017 年 7 月 12 日(水)・ 13 日(木)・14 日(金)
    会場: 東京理科大学 神楽坂キャンパス 1号館


    同講習会の来歴については、ブログエントリー 「粉末X線回折講習会の歴史」をご参照ください。前回同様、私が独断でプログラムを編成しました。第一線で活動中の研究者に高度な内容を教授していただくとともに粉末X線回折の新潮流に対応するため、実績のあるベテラン研究者(虎谷秀穂、河野正規)と新進気鋭の若手(冨中悟史)に新規講師を依頼しました。

    虎谷先生にはAコースで二つの講義を担当して頂きます。Aコース最後の講義では、リートベルト法を使わずに済む新定量分析技術を紹介されます。多相結晶質試料の定量は反応生成物や工業材料のキャラクタリゼーション、工程管理などに広く使われています。昨年末にお会いしたとき、リートベルト法に勝るとも劣らない分析結果が得られると胸を張っておられました。

    河野先生(Cコース)は多孔性配位高分子 (金属有機構造体) の専門家です。近年、非対称単位内の原子数が多い配位高分子の結晶構造をシンクロトロン粉末X線回折により次々に決定されました。幾何学的パラメーターに抑制条件を課す構造精密化に長く RIETAN-FP を使って頂いているのは光栄です。原子数の多い有機化合物の未知構造を解くための手続きとノウハウを詳しく教えてくださるでしょう。

    冨中先生がCコースで講義される二体分布関数 (Pair Distribution Function: PDF) の解析は将来有望な手法です。PDF 解析は短波長のシンクロトロンX線や Ag Kα 特性X線で測定した広い Q 範囲の強度データを解析することにより古典的構造精密化法であるリートベルト法を補完してくれます。詳しくは2016年10月21日のブログエントリー「第10回 結晶性萌芽材料 粉末回折研究会開催のお知らせ」と当該研究会のアブストラクトをお読みください。冨中先生が鋭意開発中の PDF 解析ソフトはいずれ無償配付される予定であり、RIETAN~FP の行列サイズ拡張版が組み込まれるため、個人的にもその登場を心待ちにしています。胸を張って自作プログラムについて語る講師が増え、しかも NIMS に所属しておられるというのは喜ばしい限りです。

    私はBコースにおける午後の講義「RIETAN-FP と周辺プログラムとの連携」で RIETAN-FP が出力するファイルを通じた ALBA, superflip, EXPO2014, Dysnomia などとの連携について話します。リートベルト解析やパターン分解の枠を超えた高度な解析を通じて、粉末回折データからさらに構造情報を引き出せます。

    よんどころない事情から井田 隆先生にはAコースからCコースに移って頂きました。粉末回折における新たなトレンドとしてベイズ推定による構造解析について解説されます。ベイズ推定については「構造解析におけるベイズ推定の応用」を参照してください。

    「粉末X線回折講習会の歴史」に記したように、過去3回の本講習会では、A・Bコースで定員を上回る参加申込みがありました1)。A・Bコースの受講を希望する方は早めの参加登録をお奨めします。

    本講習会は他に類を見ないほど多くの参加者を引き寄せてきましたが、来年以降も(主催者、名称、内容などを変えて)続くのか否かについては、見通しが立ちません。いずれにせよ、神楽坂キャンパスで開催するのは今回が最後となるでしょう。

    1) 予想通り、A・Bコースの受講者は定員(180名)を超過した。
    Mac ユーザーのための粉末構造解析講習会
    2017年3月21日(火)・22日(水)に神戸大学で無料講習会「RIETAN-FP•VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」を開催することになりました。二日間にわたる出前講習会は龍谷大学岡山大学に続き3回目です。奮ってご参加ください。

    拙作ソフトの実習に Mac を使うのはこれが初めてです。後述のように Windows ユーザーが講義だけでも聴講する意義があるよう配慮しました。

    実習には Jedit X (+RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境), RIETAN-FP v2.84 (未公開), FOX, VESTA, gnuplot, ORFFE, lst2cif, refln, cif2ins, ALBA, superflip, EDMA, Dysnomia + MPF_multi などの無料プログラムたちを総動員します。ピークサーチ、指数づけ、バックグラウンドの評価に使うソフトは WinPLOTR から FOX に切り換えます。FOX にはベイズ推定によりバックグラウンドを見積もれるというメリットがあります。得られた離散バックグラウンド強度を含む XML ファイル hoge.xml を RIETAN-FP で直接読み込み、hoge.bkg を自動的に作成できるようにしました。

    さらに、最近開発した未公開ユーティリティー
    • 多相リートベルト解析用入力ファイル自動作成マクロ combins
    • 正規表現置換エンジン(sed, perl, ruby など)を駆使する逐次リートベルト解析マクロ sda
    をお披露目し、両者の秀逸なパフォーマンスを実感していただきます。いずれも RIETAN-FP を日常的に利用している現場で絶大な威力を発揮し、解析に要する労力と時間を大幅に減らすと確信しています。

    参加者には講義に使う全スライド (PDF ファイル)、インストーラー、チュートーリアルを事前に配付します。チュートーリアルは macOS 用に一部を書き直します。本講習会では参加者数を度外視していますが、圧倒的多数派である Windows ユーザーのために Windows 用のインストーラーとチュートーリアルのアーカイブファイルも講習会終了後に配付し、波及効果の最大化を図ります。さらに、Mac を持ち合わせていないため初日の講義だけ聴講するという方にも Windows 用アーカイブファイルを差し上げます。

    macOS・Windows 用チュートーリアルは計98ページの力作です。懇切丁寧に書かれた LaTeX 文書であり、これらを参照するだけで実習内容を自習できます。実習以外の有用な情報についても多数言及しています。

    参考までに RIETAN に関する論文二報の被引用数の年次変化を下図に示します。「RIETAN vs. Z-Rietveld」中のグラフと多少異なっているのは、Web of ScienceScopus を文献収集能力で凌駕している Google Scholar で調べたためです。日本発の研究成果が徐々にシュリンクしていく中で、全体として増加傾向にあるのは驚きです。RIETAN-FP や周辺ソフトが未だに進化の歩みを止めていないのが功を奏しているのでしょう。


    (事後報告)参加登録者は3月21日が90人、3月22日が37人でした。Mac ユーザーが少数派であることを思い知らされましたが、講義聴講者が望外に多かったことに救われました。
    GNU sed 4.4 の公開
    Mac 用 RIETAN-FP・VENUS システム用のシェルスクリプトでは、文字列の置換や行の抽出・削除などにストリーム・エディター sed を使いまくっている。grep や awk よりも利用頻度がはるかに高い。

    E2J.command では、英語 → 日本語置換のためにパイプ経由で sed を繰り返し実行することにより、LaTeX 文書の「和訳」を実現した。パイプによる並列処理はきわめて高速で、E2J における律速段階は pLaTeX による組版の方だ。反射リストからデータを抽出して CIF を作成するシェルスクリプト refln.command では、反射リストと数値の抽出に sed を使用する。極め付けは逐次リートベルト解析用スクリプトsda.commandで、ユーザーが正規表現対応の置換エンジンとして sed コマンドを自分で入力する仕組みとなっている。

    それほどお世話になっている sed が最近 v4.3 にバージョンアップしたことを知り、小躍りしたのは言うまでもない。その直後に早くも v4.4 にマイナー・アップデートされた。v4.3以降では、正規表現マッチング速度が約10倍高速化したそうだ。

    v4.4は次の手続きに従ってビルドできる。
    1. GNU sed の Web サイトから sed-4.4.tar.xz をダウンロードする。
    2. sed-4.4.tar.xz をダブルクリックして解凍すると、sed-4.4 フォルダーが生成する。
    3. sed-4.4/INSTALL(テキストファイル)に記載されている手続きに従ってビルドする。
    4. 実行可能プログラム sed-4.4/sed/sed が生成する。
    Mac 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境のシェルスクリプトはすべて sed 4.4 を使うよう変更した。今後も積極的に sed を活用していく所存である。

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