お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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RIETAN-FP v2.8X リリース時の掲示(まとめ)
RIETAN-FP ユーザーのために便宜を図るべく、「泉 富士夫の粉末回折情報館」の新着情報に掲示した RIETAN-FP v2.8X に関する全記事を一つのエントリーとして合体した。RIETAN-FP v2.8 が小刻みに改善され v2.82 にまで至った経緯が把握できよう。

1. 2016年5月6日(金)新 RIETAN-FP・VENUS システム配付ファイルの公開

RIETAN-FP v2.8 の完成を受け、Windows・OS X 用 RIETAN-FP・VENUS システムの配付ファイル三つを先ほどアップロードしました。遅れに遅れて約半年ぶりのリリースとなったのは、人材育成事業(Nanotech CUPAL)を優先せざるを得なかったためです。中でも百数中枚に達するスライドの英訳には疲れ果てました。

主な変更点は RIETAN-FP_manual.pdf の最終パート「多目的パターンフィッティング・システム RIETAN-FP の新機能について」中の
5 X線分散補正項と質量減衰係数のグラフ化
27.5 反射リストを CIF に追加するマクロ refln(「反射リストからデータを抽出して CIF を作成するシェルスクリプト」参照)
27.6 LaTeX 関係のマクロ
に記しました。RIETAN-FP_manual.pdf は documents.zip の展開により生成する documents フォルダーに入っています。同フォルダー中の Readme_*.pdf 4つも改訂しました。Windows 版に同梱しているフリーソフトウェアのうち、gnuplot は v5.0.3 に、Ghostscript は v9.19 にバージョンアップしました。OS X 版のユーザーは gnuplot を v5.0.3 にアップデートしてお使いください(「RIETAN-FP への gnuplot の導入」参照)。Plot と xdc を使うには最新版が必要です。Windows 版ではさらに RIETAN_VENUS¥Commands フォルダーにプログラミング言語 AWK の処理系 gawk.exe (refln で使用) と pdftk.exe (PDF ファイル処理コマンド、Windows 用 cif2pdf で使用) を追加しました。

92元素に対する質量減衰係数(mass attenuation coefficient)ρm のフォトン・エネルギー依存性をテキストファイル mac.tbl として保存しました。これに伴い、多相試料でミクロ吸収 (microabsorption) を補正する際、構成元素の ρm が自動計算されるよう改善されました。

hoge.ins で NPRINT = 2 に設定して RIETAN-FP を実行した後、xdc マクロを選択し元素名を指定すると、X線分散(俗に言う異常分散)の実数項 f ' と虚数項 f ''、ρm が波長(フォトン・エネルギー)の関数としてプロットされます(下図)。



吸収端の波長をブラウザーで表示するという離れ業も楽しめます。この新機能は放射光だけでなく特性X線でも使えます。hoge.ins において純粋な化学種 (pure chemical species) として任意の元素名をダミー入力して当該元素のグラフを描くという裏技も忍ばせました。一般に物質によるX線の吸収スペクトルを測定すると、吸収端より高エネルギー側で吸収が激増します。急激に吸収が強まる端っこという意味で吸収端と呼ばれます。これは 殻電子のような内殻電子を励起するのに必要なエネルギーに他なりません。吸収端より高エネルギー側では、 殻や 殻から電子が落ちてくるとき発生する蛍光X線も強まります。xdc が出力するグラフはたとえば Cu Kα 特性X線で粉末回折データを測定するとき Ni フィルターで Cu Kβ 線をカットし、Fe を主成分として含む試料でバックグラウンドが高まるといった現象の理解に役立ちます。Nanotech CUPAL と名工大向けの教材として本新機能を支援環境に加えました。

LaTeX 用マクロ cif2pdf は
  1. hoge-cif: lst2cif と refln で作成した結晶構造データ、幾何学的パラメーター、反射リストなどの CIF (Crystallographic Information File)、
  2. hoge.pdf: RIETAN-FP によるリートベルト解析結果に基づいて Plot マクロで作成した観測・計算・差パターン、
  3. hoge-struct.pdf: VESTA で作画した結晶模型、
  4. hoge-density.pdf: VESTA で描いた電子・干渉性散乱長密度分布のイメージ、
  5. hoge-mscs.pdf: MSCS マクロで作成した Williamson–Hall あるいは Halder–Wagner プロットのグラフ、
  6. append.pdf: hoge-report.pdf の末尾に追加すべき PDF(たとえば xdc の出力 xdc-*.pdf や "International Tables for Crystallograhy," Vol. A 中の特定空間群のページ)
を合体し、hoge-report.pdf(英語)を作成します。cif2pdf のhoge-report.tex作成部分の実体は FORTRAN 90 プログラム cif2ins に他なりません。引き続き E2J を実行すると、日本語文書 hoge-report-j.pdf に「翻訳」されます。組版エンジンには高速性を重視し pdflatex (cif2pdf) と platex + dvipdfmx (E2J) を採用しました。両マクロを使うのに必要不可欠な TeX Live のインストールについては「OS X・Windows 用 TeX Live のインストール」を参照してください。

CIF は単なるテキストファイルに過ぎず、科学情報を過不足なく伝えるだけの表現力を持ち合わせていません。理工系文書に頻出するイタリック、上付き、下付き、ボールド、オーバーライン、ギリシャ文字などの書体や数式については、完全にお手上げです。そこで CIF を文書化するプログラムが過去に多数出現しましたが、図や付録を自動挿入できる上、日本語に「翻訳」までしてくれる cif2pdf + E2J のような賢いソフトは寡聞にして存じません。画期的なユーティリティーと言ってよいでしょう。

簡易タイプセット用マクロ Typeset, BibTeX, MakeIndex による手っ取り早く高速な組版も実現しました(「Jedit X 用 LaTeX 組版支援環境」参照)。OS X では PDF ファイル閲覧プログラム Skim をインストールしてから、お使いください。これら三つはあくまで自分用のマクロであり、人様に使って頂くことは念頭に置かずに設計・製作しました。従来、LaTeX 文書のタイプセットには TeXShop を愛用してきましたが、タブでウィンドウを切り換えられない旧態依然の GUI には失望していました。TeXShop の使用を前提とする「Mac 用 TeX による英文・和文のタイプセット」という文書を公開している自分ですが、TeXShop にはもう見向きもしていません。ここまで LaTeX に肩入れするのは、商用ソフト(Microsoft Word)の鈍重さと不適切なカーニングに日ごろ辟易していることに加え、優れた無償ソフトを普及させたいと願っているためです。cif2pdf や E2J で LaTeX に慣れ親しんでおけば、自ずと LaTeX の世界に引き込まれていくと思われます。

グラフではセリフでなくサンセリフを選択することが望ましいという "Gnuplot in Action" 中での指摘に触発され、Plot, MSCS, xdc マクロで作成するグラフ中のフォントを Times から Helvetica に変えました。gnuplot スクリプトファイル hoge.plt を書き直せば、欧文基本35書体の PostScript フォントに変更できます。フォント名は RIETAN-FP_manual.pdf の17.7.1に列挙しておきました。さらに上図と同様に、リートベルト解析パターンの横軸(上部)に格子面間隔 d の目盛、数値、ラベル(d/Å)を付けられるようにしました:



このグラフではタイトルと信頼度の指標4つも表示しています。ご覧のように、計算パターンの色は cyan に戻しました。

Windows 用プログラムの起動に使うバッチファイルのうち cif2ins.bat, Plot.bat, refln.bat, RIETAN.bat, Typeset.bat は FINDSTR + (&& or ||)(「FINDSTR 実行後の ERRORLEVEL に応じた条件分岐」参照)により文字列検索後に場合分けするよう改善しました。洗練されていない FOR 文が減ったのは実に良い気分です。UNIX 系コマンドがインストール済みの環境で MPF_multi.command が正常に動作しないという不具合を修正しました。PATH 指定の順番が不適切でした。また念のために Plot.bat で遅延環境変数を展開するよう改めました。

RIETAN-FP の入力ファイル hoge.ins のひな形に多少手を入れました。とくに ORFFE 用入力(「ORFFE による結合角と二面角の計算」参照)の部分には大なたを振るいました。適切な最大結合距離を指示した 201 命令さえ hoge.ins に含まれていれば、ORFFE を2回続けて実行するだけで全結合角を計算できることを考慮しました。それでもまだ完璧からは程遠いでしょう。意味不明な箇所や誤りがありましたら、遠慮なくご指摘ください。なお、Cimetidine のリートベルト解析において構造パラメーターを固定していたことに気づき、すべての可変パラメーターを精密化するよう Cimetidine.ins を変更しました。

その他、細かい修正は多数にのぼりますが、省略します。

従来、OS X 版では RIETAN_VENUS/template_commands フォルダーに入っているシェルスクリプト *.command のひな形から解析ファイル専用のシェルスクリプトを RIETAN_VENUS/commands フォルダーに生成するサービスを提供してきましたが、今回、廃棄処分に踏み切りました。MPF_multi.command は commands_common フォルダーに移しました。Jedit X 上で動作する RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境に比べると使い勝手が今一つだからです。老骨に鞭打って孤軍奮闘している自分としては、メンテナンスの手間を省けるのは助かります。

これまで OS X 用支援環境におけるショートカットの設定には BetterTouchTool の使用を推奨してきましたが、システム環境設定の [キーボード] で [ショートカット] タブをクリックして設定するオーソドックスな手続きに立ち戻ることにしました(Readme_scpt.pdf, 2.3.3参照)。 [キーボード] で設定したショートカットがしばしば無効になるという不具合が El Capitan では解消したためです。[キーボード] による設定には、登録したショートカットがマクロのプルダウンメニューに表示されるという利点があります。

2. 2016年5月15日(日)RIETAN-FP・VENUS システムの更新

RIETAN-FP を v2.81 にバージョンアップし、9日前に公開したばかりの RIETAN-FP・VENUS システムを早々とマイナーチェンジしました。

Gnuplot が "terminal postscript eps ....." コマンド("gnuplot 5.0 ― An Interactive Plotting Program", p. 225参照)により EPS 形式の PostScript ファイルを出力するよう変更した結果、Windows・OS X 版のいずれにおいても pdfcrop によるマージンの切り取りが不要になりました。すなわち TeX Live をインストールしていなくても、余白のない PDF ファイルが得られます。処理速度が遅い pdfcrop を実行せずに済むため、グラフが表示されるまでの時間がかなり短縮されます。

Windows 版では、32ビット版 Ghostscript、すなわち gswin32c.exe によって PostScript ファイルを PDF ファイルに変換するよう変更しました。Ghostscript パッケージに含まれる pdfcrop や pdfcrop14 などは EPS ファイルを正常に処理できないためです。

hoge.ins 中で NPRINT = 2 に設定すると "_pd_peak_intensity = ....." が2回出力され、その結果 refln マクロでトラブルが発生するというバグを解決しました。

その他、5つのマニュアルと RIETAN-FP 用入力ファイルのひな形 hoge.ins を少しずつ修正しました。



ここ何年か、RIETAN-FP の新バージョンを公開するたびに講演会や研究会でお披露目するのが恒例となっています。それらの集会までに RIETAN-FP をバージョンアップせねばならぬという状況に自らを追い込むべく、意識的にそう心がけてきました。偶然ですが、今回も RIETAN-FP v2.81 と過去一年間に開発・改善した周辺ソフトについて紹介する機会に恵まれました:

「RIETAN-FP・VENUS システム ― 最近の進歩」
日時:6月1日(水)16:30〜17:30、場所: ファインセラミックスセンター(名古屋市熱田区)

MacBook Pro による実演を交えながら熱弁を振るいます。当日までに gnuplot の pdfcairo ターミナルを使うスクリプトファイル hoge.plt を出力する RIETAN-FP v2.82 を完成させ、GUI 抜きのグラフ化エンジン gnuplot+cairo+pango 複合体の利点、すなわち高速性と高品質イメージ・フォントを最大限に活かせるようにします。また OS X 用 gnuplot が専用インストーラで使えるようになります。

部外者のご来聴も歓迎します。ご希望の方はあらかじめ担当者(小西)に参加登録のメールをお送りください。折り返し、アブストラクトを添付した受付メールをお送りします。

3. 2016年5月20日(金)RIETAN-FP・VENUS システムの微修正

5月16日以降、
  • バッチファイル Plot.bat, cif2ins.bat, cif2pdf.bat(Windows 版)
  • それらに相当するシェルスクリプト Plot.command, cif2ins.command, cif2pdf.command(OS X版)
  • RIETAN-FP のひな形ファイル BiCoO3.ins と Cu3Fe4P6.ins
に誤りが見つかったため、以下のように修正し、急遽 Windows_versions_20160520.zip とOS_X_versions_20160520.dmg を RIETAN-FP・VENUS システム配布ファイルにアップロードしました。

Plot.bat と Plot.command で裏技が正常に動作しないのを修正しました。Gnuplot スクリプトファイル hoge.plt 中で set terminal postscript eps ..... に乗り換えたのを反映させていなかったのが原因です。

cif2ins.bat, cif2pdf.bat, cif2ins.command, cif2pdf.command において cif2ins 実行形式プログラムの引数(ファイル名)が一部間違っていたのを正しました。pdfcrop を使用していた時のファイル名に留まっていた他、余分な引数が一つぶら下がっているスクリプトがありました。

RIETAN-FP v2.8 以降、不要になった質量減衰係数の入力行が多相試料のひな形ファイル BiCoO3.ins と Cu3Fe4P6.ins に残存していたことがパワーユーザーから指摘されたため、削除しました。

4. 2016年6月14日(火)RIETAN-FP v2.82 のリリース

RIETAN-FP を v2.82 にマイナーチェンジし、RIETAN-FP・VENUS システムの配付ファイル三つを更新しました。

v2.82 では gnuplot における terminal(出力先)を古典的な postscript eps から pdfcairo に変更しました。4月中旬に入手した "Gnuplot in Action", 2nd ed. が pdfcairo への移行を促してくれました。pdfcairo の採用に伴い、フォントやマークのサイズは元通りになりました。目盛がグラフの境界線に比べ約半分の線幅に固定されてしまうという postscript eps 使用時の深刻な不具合も解消しました。また pdfcairo はグラフの余白を自動的に切り取るため、TeX Live の pdfcrop や Ghostscript の gswin32c コマンドはもはや不要です。したがって、これまで Windows 版に同梱していた Ghostscript は削除しました。

pdfcairo は余白をカットした後、PostScript コードを経由せずに PDF ファイルを直接出力するため、Plot, MSCS, xdc マクロの実行時間が大幅に減りました。

pdfcairo への切換時に獲得した重要な知識と情報はすべてブログエントリー「OS X 用 gnuplot で pdfcairo ターミナルを使うための手続き」に記録しておきました。pdfcairo 活用の一助となれば幸甚です。

従来はタイトルや軸のラベルの一部が欠落しないよう一部の文字列の先頭あるいは末尾に "¥n"(改行コード)を挿入していました。このような苦し紛れの対症療法は好ましくないと判断し、gnuplot スクリプトファイル *.plt 中に "set margins <left>, <right>, <bottom>, <top>" コマンドを挿入しました。

OS X 上では gnuplot を Homebrew でなくスタンドアローンのインストーラーで Applications フォルダーにインストールするよう変更しました。この gnuplot は二次元グラフィックス・ライブラリー cairo と多言語テキスト配置・レンダリング用ライブラリー pango を包含しています。旧バージョンの Mac ユーザーはお手数ですが、上記エントリーの記述に従って gnuplot をアンインストール・再インストールするようお願いします。

5月6・15日と本日の最新情報から、gnuplot の徹底活用を目指し私がいかに精進してきたかを読み取れるでしょう。力不足のために短期間に3回も配付ファイルを更新し、拙作ソフトのユーザー様を徒に混乱させたことをお詫びします。

5. 2016年7月19日(火)RIETAN-FP・VENUS システムの微修正

RIETAN-FP・VENUS システムのマニュアル類を収めたアーカイブファイル documents.zip を更新しました。RIETAN-FP_manual.pdf 中のタイプミスを修正するとともに、数値–単位間のスペースを一文字分の空白の 3/18(LaTeX では '¥,')に統一しました。

6. 2016年8月10日(水)秀丸エディタ用設定ファイルの改訂

Windows 用 RIETAN-FP・VENUS システムをほんの少しだけ改善し、Windows_versions_20160810.zip としてアップロードしました。といっても、RIETAN-FP のバージョンは 2.82 のままです。

秀丸エディタ用設定ファイル RIETAN-FP.key と RIETAN-FP.reg を単一ファイル RIETAN_VENUS.hmereg に統合しました。「その他 > 設定内容の保存/復元」で "設定情報をファイルから復元する" のラジオボタンをチェックした後、RIETAN_VENUS.hmereg を読み込み、レジストリに設定情報を書き戻します。統合支援環境のセットアップ時間が少しだけ短縮されます。つい最近まで拡張子 .hmereg のファイルに全設定を保存できることを寡聞にして存じませんでした。詳しくは、秀丸エディタヘルプ中の「秀丸エディタにおける設定内容の保存/復元」をお読みください。Readme_macros.pdf にもその変更点を反映させ、マニュアル類のアーカイブファイル documents.zip を更新しました。

なお、mcz.bat という謎のバッチファイルを Batch_files フォルダーに忍ばせておきました。実習時の余興用なので、マニュアルには記載していません。

7. 2016年8月25日(木)RIETAN-FP・VENUS システムの配付ファイル二つを更新

最新の Windows 10 上で RIETAN-FP・VENUS システムをインストールまたはアンインストールしようとしても、コマンドプロンプト窓にフォルダー・ファイルを処理するためのコマンドがまったく表示されないという不具合が見つかりました。Install_RIETAN_VENUS.bat と Uninstall_RIETAN_VENUS.bat のダブルクリックだけでインストール・アンインストールできるようにしたのが裏目に出たようです。

そこでバッチファイルを右クリックしてから「管理者として実行」を選び、ユーザーアカウント制御 (UAC) の下でインストール・アンインストールするよう変更しました。さらに Readme_Win.pdf 中の関連する記述を修正しました。

8. 2016年11月28日(月)RIETAN-FP v2.83 のリリース

RIETAN-FP を v2.83 にバージョンアップし、RIETAN-FP・VENUS システムの配付ファイル三つを更新しました。新機能はとくになく、v2.8を熟成させただけです。OS X から macOS への改称に対応するため、Mac 用配付ファイル OS_X_versions_YYYYMMDD.dmg(YYYY: 年、MM: 月、DD: 日)は macOS_versions_YYYYMMDD に改名しました。

主な変更点は以下の通りです。
  1. hoge.ins 中の変数とラベルの名前が規則に従っていない場合は、誤りを指摘するようにした。
  2. 変数名はアルファベットの大文字、数字、"@" からなり、ラベル名は英数字と "@" からなると正式に定めた。"@" を使えるようにしたのは、近日中に作成する多相リートベルト解析用 hoge.ins 生成マクロ combins の仕様を考慮したためである。
  3. hoge.ins から一部のデータを入力中にエラーが発生した場合、エラーメッセージを出力するよう改善した。
  4. 放射光の波長が 0.413 280 7 Å より短いときは、自分でX線分散の補正項 f' と f" を入力するよう促すことにした。
  5. MEM 解析などに用いる a, b, c 軸方向の分割数(NVOXA, NVOXB, NVOXC)を第一相の格子定数 a, b, c と比較し、大小関係が不適切だったらプログラムを終了するよう改訂した。Voxel データを使わないのにエラーメッセージに煩わされるときは、すべてゼロを入力しておけばよい。
  6. 共役方向法のサイクル数を3桁まで出力するよう修正した。
  7. 多相試料の放射光粉末回折データをリートベルト法で解析する際には構成元素の質量減衰係数 (mass attenuation coefficient) を入力しないよう hoge.ins を改訂した。
  8. Nanotech CUPAL などにおける MPF 解析の実習用に使うために、ひな形ファイル Cimetidine.ins 中に水素原子の構造パラメーターを追加するとともに、選択配向は補正しないよう変更した。
  9. gnuplot スクリプトファイル中の DLW と BLW のデフォールト値を1.0に変更した。
  10. gnuplot スクリプトファイル xdc.plt 中に gnuplot 5.0.5 以降で使える命令 "set minussign"(負の値における先頭のハイフンをマイナスに置き換える命令)を注釈として挿入した。
  11. Windows 用 gnuplot でリートベルト解析・シミュレーションのパターンをプロットする際、ピーク位置を表す縦棒の中心に小さなセンターシンボル()が現れるというバグを修正した。
  12. Windows 上で lst2cif を実行した後、一時ファイル hoge.tmp が残存するという瑕疵を取り去った。これは Fortran コンパイラーに起因する障害のように見える。
  13. Windows 用の自作プログラムはすべて64ビット版に統一した。32ビット版 Windows 機へのインストールは拒絶する。
  14. Windows 用配付ファイルに同梱している gnuplot 5.0.4 を64ビット版に替えた。
今回のバージョンアップにあたり、32ビット版 Windows(時代遅れ!)は惜しげもなく切り捨てました。まだレガシー OS ではありませんが、孤立無援状態に陥っている今、余計な手間は能う限り省きたいのです。今どき32ビット CPU の PC など、ほとんど生き残っていないでしょう。必要なら、Zinstall WinWin のような引っ越しソフトを使って、64ビット Windows に入れ換えればいいだけのことです。暫定的に残している前配付ファイル Windows_versions_20160825.zip は、いずれ予告なしに削除します。
ORFFE による結合角と二面角の計算
RIETAN-FP の入力ファイル hoge.ins のひな形では、幾何学的パラメーターを計算するためのプログラム ORFFE 用の結合距離計算命令 201 と結合角計算命令 002 についてごく簡単に説明している。通常は非対称単位内の原子を対象に結合距離を計算するための 201 命令だけを (2I5, 15X, I5) という書式で入力すればよい。三つの整数、すなわち

Col. 1–5: 201
Col. 6–7: 非対称単位内の原子の数(独立サイトの数)
Col. 26–30: 10×最大結合距離/Å

はいずれも右詰で入力する。

RIETAN-FP・VENUS システムに同梱した ORFFE (Busing, Martin & Levy, 1964) では、ORFFE を二回続けて実行すると結合距離と結合角が次の2段階で計算される:

1回目: 201 命令を実行した後、特定サイトの結合をすべて組み合わせた 002 命令が hoge.xyz の末尾に追加される。
2回目: 201 命令を再実行した後、002 命令により結合角が計算される(RIETAN-FP_manual.pdf, Appendix D.3を見よ)。

hoge.ins 中に 002 命令を入力せず ORFFE に任せてしまえば、時間の節約になる上、入力ミスを犯さずに済む。ただし、かなり多くの結合角が出力され、hoge.dst が膨れ上がるのを覚悟してほしい。

ORFFE の出力ファイル hoge.dst に記されているように、ORFFE では三つの整数 A, S, C により原子の種類と位置を特定する
An atom is designated by a pair of integer numbers in parentheses (A,1000*C+S).
A is the number of the atom in the list of atomic parameters.
S is the number of the symmetry information to be applied, and C defines the unit-cell translations
hoge.dst に A, S, C の一覧表が出力される。

ORFFE のマニュアルでは、二面角 (dihedral angle) を
Angle between normals to planes defined by atoms 1, 2 and 3, and atoms 4, 5 and 6, respectively. If right-hand fingers are curved so that they can pass successively through atoms 1, 2 and 3 then the thumb is in direction of normal. Sign of angle will be positive if this normal makes an acute angle with vector from atoms 4, 5, and 6.
と定義している。hoge.dst には "Dihedral angle between planes each defined by three atoms" と出力される。

二面角は 003 命令で計算する。hoge.ins には、それら6原子の A と 1000*C+S を原子1, 2, 3, 4, 5, 6の順に5桁ずつ右詰で入力する:

Col.   1–  5: 003
Col.   6–10: A1
Col. 11–15: 1000*C1+S1
Col. 16–20: A2
Col. 21–25: 1000*C2+S2
Col. 26–30: A3
Col. 31–35: 1000*C3+S3
Col. 36–40: A4
Col. 41–45: 1000*C4+S4
Col. 46–50: A5
Col. 51–55: 1000*C5+S5
Col. 56–60: A6
Col. 61–65: 1000*C6+S6

VESTA の Utilities メニューで Geometrical Parameters を選んで、*.ffe 中の結合距離と結合角を結晶模型と対応させれば、6原子の A と 1000*C+S を容易に知ることができる。

ORFFE は分散共分散行列の非対角項まで含めて幾何学的パラメーターの標準不確かさ (standard uncertainty) を計算するため、論文や報告書には ORFFE で計算した値を報告することが望ましい。上述の三命令で計算した値を報告すれば十分だろう。
Jedit X 用 LaTeX 組版支援環境
近年、主に Mac 用プログラム TeXShop で LaTeX 文書をタイプセットしてきた(「Mac 用 TeX による英文・和文のタイプセット 」参照)。しかし、タブで *.tex を切換えられない旧式なエディターは、複数のファイルを並行処理するのに向いていない。分割コンパイルではソースウィンドウがやたらに増えてしまう。さらに内蔵 PDF ブラウザーがやや重く、使い勝手も今一つだった。

こうした不満が昂じた挙げ句、ついに OS X 用エディター Jedit X 上で LaTeX 文書のタイプセット用マクロ Typeset, BibTeX, MakeIndex の自作に踏み切った。いずれも AppleScript (*.scpt) と bash スクリプト (*.command) の連携により作動する。システム環境設定の「キーボード」でそれぞれ ⌘-T, ⌘-B, ⌘-I のショートカットを割り当てた。*.tex が最前面のファイルになっていると、「表示 > 構文のカラーリング」で
   ✓ LaTeX
とチェックされる。Jedit X の操作に習熟している自分にとっては、非常に使いやすい。Typese.scpt はまず編集中のファイルのファイル名を絶対パス付きで取得し、必要なら自動保存してから、当該ファイル名を引数として Typeset.command に起動する。

Typeset.command の中核部分を以下に示す。

if egrep -q '^\\documentclass.*{j.+}' ${hoge}.tex ; then
   platex -kanji=sjis -file-line-error ${hoge}.tex
   dvipdfmx ${hoge}.dvi
elif egrep -q '^\\documentclass.*{ltjsarticle}' ${hoge}.tex ; then
   luajittex --fmt=luajitlatex.fmt ${hoge}.tex
else
   pdflatex --file-line-error ${hoge}.tex
fi
open -a Skim ${hoge}.pdf

${hoge}.tex は LaTeX テキストファイルの名前である。変数 ${hoge} は Jedit X の最前面ファイルの名前から取得する。egrep により拡張正規表現で documentclass を検索し、3種類の組版エンジン (pLaTeX, LuaJITTeX, pdfTeX) から一つを選ぶ。もともと軽量なツールである egrep を quite mode (-q) で実行するので、documentclass の判定は瞬時に終わる。私は jsarticle と ltjsarticle 以外の日本語用 documentclass は使わないので、場合分けは三つで済む。

LuaJITTeX を使えるようにするための手続きは http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texwiki/?LuaJITTeX を参照していただきたい。「インストール > TeX Live の場合」に記されている。

*.tex ⇄ PDF 相互参照機能 SyncTeX を切り捨てたことから、pLaTeX と pdfTeX による組版は高速である。とくに英文専用の pdfTeX は滅法速い。一方 LuaJITTeX は just-in-time compiler で実行するにもかかわらず鈍足な上、イタリックフォントに関する目障りな警告をコンソールに吐き出す。枯れ切った pLaTeX と比較すると、とりたててメリットを感じない。

PDF は軽快なフリーソフトウェア Skim で閲覧することにした(最後の行)。Adobe Reader と違って現在表示中の PDF がロックされず、再組版後に同じページが表示されるという点でプレビューに優っており、LaTeX との相性がすこぶる良い。

かねてから Jedit X 用マクロのプログラミングに習熟しているため、短時日のうちに環境を構築できた。自分にとって余計な機能をそぎ落とした簡易 LaTeX 組版機能に過ぎないものの、自作マクロに対する愛着も手伝い、とても気に入っている。その結果、長く愛用してきた TeXShop の存在意義は薄れてしまった。併用はしていくが、その出番は激減するだろう。

これらの自作マクロは汎用性がないため公開を控えるが、物好きにも利用を希望される方には喜んで差し上げる。
反射リストからデータを抽出して CIF を作成するシェルスクリプト
RIETAN-FP で NPRINT > 0 に設定してリートベルト解析を実行すると、"Summary of possible reflections (based on the refined parameters)" というタイトルの反射リストが標準出力ファイル hoge.lst の末尾近くに記録される。このリストから
  1. h
  2. k
  3. l
  4. 格子面間隔 d
  5. 観測積分強度 Io
  6. 結晶構造因子 |F|
  7. 半値全幅 H
を取り出し、各データをスペースで区切って Crystallographic Information File (CIF) を作成するためのシェルスクリプト refln.command を作成してみた。lst2cif で出力した CIF と hoge.lst から PDF を作成するユーティリティー cif2pdf に反射リフトを供給する役割を受け持つ。

Cu Kα 特性X線で測定した粉末回折データの場合、Kα2反射のデータがリストに含まれる。また、部分的にプロファイルが欠落した高角反射(Iobs: H)の行も記録される。多相試料のリートベルト解析では、不純物相の反射も出力される。これらの不要な行は削除し、残った行から必要なデータをピックアップして標準出力に流せばよい。refln.command のソースコードは次の通り:

#!/bin/bash
# Output parts of a reflection list after refinement in hoge.lst

# Labels for associated multiple data values
cat << EOS

_loop
   _pd_peak_id
   _refln_index_h
   _refln_index_k
   _refln_index_l
   _pd_peak_2theta_centroid
   _pd_peak_d_spacing
   _pd_peak_intensity
   _rietan_i100_meas
   _refln_F_cal
   _pd_peak_width_2theta
EOS

sed -n '/Iobs *Ical/,/^$/p' $1 | sed '1d;$d' | \ (1)
awk -v c9=$(grep "_pd_peak_intensity =" $1 | sed 's/^.* \* //') \ (2)
   '$2 == 1 && match($6, /[+-]2/) == 0 && $9 != "H" \ (3)
   { i++; if ($9 == "-") print i, $3, $4, $5, $7, $8, $9, $9, $11, $14; \ (4)
   else printf "%s %s %s %s %s %s %10.5f %6.2f %s %s\n", \ (5)
   i, $3, $4, $5, $7, $8, c9*$9, 0.001*$9, $11, $14 }' | \ (6)
sed -r 's/\s\s+/ /g' (7)

exit

_rietan_i100_meas は最強反射の観測積分強度を 100 としたときの相対強度の自家製定義である。本来はピーク強度を対象とすべきなのだろうが、hoge.lst を処理対象としているため、積分強度を対象として計算せざるを得なかった。

この bash スクリプトはややこしいリスト処理をわずか一行の呪文でやってのける。その行は非常に長いので、(1)(7) に7分割した。

(1) では、sed の2連発により hoge.lst から反射リストの部分を抜き取る 。

(2) では、grep と sed をパイプでつなぎ hoge.lst から抽出した数値を -v オプションで変数 c9 として awk に渡す。

(3) は awk のパターン部分であり、Kα2反射や 2θmax 付近の反射(9番目のフィールドが "H")をフィルターにかける。必要に応じて (3) を変更すれば、PDF に出力する行を変えられる。

(4)(6) が awk のアクション部分であり、フィールド(3〜5, 7〜9, 11, 14)を指示して出力する。 Iobs が '-'(一部の観測データが欠落)の反射はそのまま出力する (4)(5)(6) がすべてのデータがそろっている反射の処理に相当する。最強反射で 100 000 となるように正規化した観測積分強度 Iobs にそれぞれ c9 と 0.001を乗じた値をフィールド No. 9 と 10 として出力する。

最後に sed によりフィールド間を単一スペースに統一する。そこまで徹底する必要はないが、いざとなれば特定のフィールドを cut で抽出できるというメリットがある。

refln.command の引数 ($1) は hoge.lst である。refln.command をパスの通ったフォルダーに置き、
   refln.command hoge.lst > hoge-refln.cif
というように入力して標準出力をテキストファイルにリダイレクトすれば、CIF が生成する。Windowsの場合は、RIETAN_VENUS¥Command フォルダーに置かれた bash.exe のウィンドウで実行すればよい。

たとえば Fapatite.lst を処理すると、次の出力が得られる:
_loop
   _pd_peak_id
   _refln_index_h
   _refln_index_k
   _refln_index_l
   _pd_peak_2theta_centroid
   _pd_peak_d_spacing
   _pd_peak_intensity
   _refln_F_cal
   _pd_peak_width_2theta
1 1 0 1 16.877 5.24918 1.21318 5.35 11.0711 0.07402
2 2 0 0 21.891 4.05690 2.34131 10.33 29.9436 0.07424
3 1 1 1 22.945 3.87283 2.10185 9.27 21.1948 0.07430
4 2 0 1 25.464 3.49510 0.62246 2.75 12.8217 0.07449
5 0 0 2 25.864 3.44192 13.12474 57.88 147.1135 0.07452
6 1 0 2 28.139 3.16861 4.29895 18.96 37.4418 0.07472
7 2 1 0 29.095 3.06673 5.02640 22.17 58.8922 0.07482
8 1 2 0 29.095 3.06673 0.46282 2.04 17.8710 0.07482
9 1 2 1 31.921 2.80131 9.46481 41.74 66.0020 0.07514
・・・

エディターや表計算ソフトなどで GUI を通じて同様の表処理を繰り返すのは、あまりにも泥臭く面倒だ。場合分けを含む表形式テキストデータの複雑な処理は awk の独壇場といって過言でない。このスクリプトをひな形として書き換えれば、RIETAN-FP などが出力する種々のテキストファイルから、必要に応じて任意のデータを抽出してテキストファイルに出力できる。ぜひ活用していただきたい。
RIETAN-FP v2.7 と cif2ins の公開
RIETAN-FP v2.7 を含む Windows・OS X 用 RIETAN-FP・VENUS システムのファイル三つをアップロードしました。新配付ファイルにおける改善点は以下の通りです:
  1. hoge.ffo 中の "I"(積分強度)として CALCI(I) を出力し、吸収因子などの寄与を含めた。
  2. hoge.inflip 中で FWHM と |F|2 のデータ間に余程のことがない限りスペースが入るように、|F|2 に割り当てる桁数を一つ増やした。
  3. Crystallographic Information File (CIF) のテキストファイル hoge.cif を RIETAN-FP 用ユーザー入力ファイル hoge.ins に変換するためのユーティリティー cif2ins を新たに作成した。*.ins の雛形ファイルとして template.ins(固定名)というファイルを同一フォルダーに置くという仕様にした。
  4. cif2ins で hoge.ins にデータを書き込む都合上、文字型変数 PHNAME の長さを 68 に増やした。
  5. Bond Valence Sum (BVS) マップ可視化用 Python スクリプト PyAbstantia の入力ファイル BVS3D.inp を出力する機能を RIETAN-FP に追加した。単位胞中の原子リストの作成には既存ルーチンを再利用した。BVS3D.inp 中には単位胞中の全原子について元素名、分率座標 (x, y, z)、占有率が出力されており、電子状態計算などで流用することも可能である。
  6. RIETAN-FP による粉末回折パターンのシミュレーション (NMODE = 1) に引き続き PyAbstantia を実行し、計算結果を VESTA で視覚化するようシェルスクリプト RIETAN.command を拡張した(OS X 限定)。
  7. OS X 用シェルスクリプト *.command でファイル関連のエラーが発生したとき、ターミナル・ウィンドウの閉じ方を指示するようにした。
  8. Windows 用 MPF 解析シェルスクリプト MPF_multi.command における RIETAN-FP の実行形式ファイル名を修正した。
  9. Windows・OS X 用インストーラーを徹底改良した。
  10. documents フォルダー内の5つの PDF ファイルを v2.7 に対応した内容に改訂した。
  11. Windows 用 Ghostscript を v9.18 にバージョンアップした。
cif2ins は CIF をかなり綿密にチェックしてくれるので、CIF の記述ミスを検出するのにも使えます。たとえば CIF 中の各行は80桁を越えてはならないというルールがありますが、cif2ins で hoge.cif を処理すると、80桁オーバーの行をただちにターミナル (OS X) あるいはコマンドプロンプト (Windows) のウィンドウ中で指摘します。hoge.cif 中に "#std" (standardize の略) という注釈行を挿入すると、cif2ins は RIETAN-FP に内蔵されている Structure Tidy による結晶データ標準化用の hoge.ins を出力します。"#std" を追記すべきか否かは、自分で判断してください。引き続き、hoge.ins を対象として RIETAN-FP を実行すると、hoge.lst の末尾に標準化された格子定数と原子座標が出力されます。後は hoge.ins にそれらをフィードバックするだけです

CIF の文法に則っているにもかかわらず cif2ins が正常に hoge.ins を出力しないときは、お手数でも当該 CIF を私にお送りいただければ幸甚です。将来のバージョンで改善するよう努めます。

BVS マッピングは化学結合の本質の一部を把握した秀逸な手法であり、リチウム・ナトリウムイオン二次電池や固体酸化物燃料電池 (SOFC) におけるイオン伝導経路を推定するための強力、簡便、ローコストなツールとして役立ちます。参考までに、超イオン伝導体 α-AgIナトリウムイオン電池材料 Na2/3(Mg0.28Mn0.72)O2 の伝導経路をご覧ください。

PyAbstantia は Adams (2000) が提案した方法により BVS の三次元分布を計算するためのプログラムであり、西村真一氏(東大)により開発されました。著作権の関係上、今回の配付ファイルには同梱していません。PyAbstantia をお使いになりたい方は、西村氏に直接問い合わせるようお願いいたします。PyAbstantia が出力するバイナリーファイル BVS3D.pgrid 中のボクセルデータは VESTA で 3D 可視化できます。BVS-3D マップと PyAbstantia については11月20日(金)に名工大で研究会を開き、作者自身に詳しく解説していただく予定です。また「BVS の 3D 分布計算プログラム PyAbstantia」という長文ノートを Evernote で作成しましたので、今後 PyAbstantia を利用していくことにした方々は私にご連絡ください。公開ノートの URL をお教えします。

今回からマニュアルは pdfTeX や pLaTeX でなく LuaTeX で組版するよう変更するとともに、フォントサイズと行間隔を統一しました。ドキュメンテーションは苦役以外の何物でもないので、将来性のあるタイプセット・エンジンの導入は、新しもの好きの自分にとって格好の気晴らしになりました。処理はやや遅いものの、英文・和文共通のためタイプセットメニューでのコマンド切り替えが不要で、PDF ファイルが直接得られる点が気に入っています。今、自作ソフトに LuaTeX を応用しようと目論んでいる最中です。
RIETAN-FP v2.64 のリリース
7月中旬以降、シンクロトロン光利用者研究会(第3回 XRD グループ)での実習と教材作りに間に合わせるべく、酷暑の中、倦まず弛まず RIETAN-FP・VENUS システムのアップグレードとドキュメンテーションに取り組んできました。本日、ついに Windows・OS X 用 RIETAN-FP・VENUS システムの最新版を公開しました。Windows 用配付ファイルに同梱している Ghostscript v9.16 から不要なフォルダーやファイルの大半を削除した結果、転送量が無制限の Web サーバーに置けるようになりました。

今回のアップグレードでは RIETAN-FP を v2.64 にバージョンアップし、documents フォルダー中の三つの PDF ファイルを改訂しました。主な変更点は次の通りです:
  1. 粉末回折用グラフィックツール WinPLOTR で見積もったバックグラウンド(離散点)ファイル hoge.bgr 中のデータを補間することにより全回折点のバックグラウンド強度ファイル hoge.bkg を出力できるようにした。
  2. NMODE = 1(シミュレーション・モード)で反射リストが出力されないというバグを取り除いた。
  3. NPRINT = 2 のとき出力される観測・計算強度 vs. 2θ のラインプリンター・プロットの機能はもはや時代遅れなので、削除した。
  4. 抑制条件の計算結果のリストにおける "TA" (Torsion Angle) を "DA" (Dihedral Angle) に訂正した。
  5. Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境を構成している秀丸マクロの順序を一部入れ換えるとともに、三つの新マクロ (WinPLOTR/INT, WinPLOTR/ITX, DICVOL14) を追加した。これに伴い、誤って F1 に割り当てていた [数値選択] などをステータスバーから削除した。
WinPLOTR/INT は WinPLOTR で強度データファイル hoge.int を入力し、ピークサーチ、平滑化、バックグラウンドの見積もり、指数づけなどを行うのに使います。空間群に関する情報も得られます。WinPLOTR/ITX はパターンフィッティングの結果を収めた Igor テキストファイル hoge.itx のデータをグラフとしてプロットします。DICVOL14 は秀作の呼び声が高い最新指数づけプログラムですが、WinPLOTR パッケージにはまだ含まれていません。各自、入手するようお願いします。DICVOL14 は WinPLOTR が出力した DICVOL06 用入力ファイル hoge.dic を DICVOL14 で直接処理するためのマクロです。今回のバージョンアップにより、Windows 用 RIETAN-FP・VENUS システムは WinPLOTR の全機能を実質的に取り込んだも同然です。

v2.64 の目玉機能である hoge.bgr 経由の hoge.bkg の作成や WinPLOTR によるピークサーチと指数づけなどについては、Evernote の公開ノート

「RIETAN-FP と WinPLOTR との連携」

をお読みください。過不足のない情報が得られるでしょう。私の Evernote ノートブックは700を超すノートからなっていますが、特定のノートをオープンにするのは初めての試みです。三つの新秀丸マクロや OS X 用 WinPLOTR を敬遠する理由についても、上記ノートに記しました。公開ノートには、プライベート・ノートの添削結果がリアルタイムで反映されるという利点があります。

RIETAN-FP 用入力ファイル hoge.ins は注釈行の一つが変更されただけで、v2.63 の入力ファイルがそのまま使えます。なお、秀丸エディタ v8.54 が昨日リリースされたので、Windows ユーザーはそちらの方もバージョンアップしておいてください。

名工大の実習用 PC では、外部から持ち込むプログラムとデータは Z ドライブにしかインストールできません。そこで拡張版 Install_RIETAN_VENUS.bat と前処理プログラムを新たに書いています。少々バテ気味ですが、今後、同研究会と前日の第8回 結晶性萌芽材料 粉末回折研究会での講演・実習の準備を少しずつ進めていくつもりです。
RIETAN-FP の入力ファイル hoge.ins 用のしおり
RIETAN-FP v2.62では、RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境上で hoge.ins を編集する際、しおりのクリックにより先頭文字が半角感嘆符 "!" の注釈行にジャンプできるようにし、支援環境の利便性を大幅に向上させました。"!" に続く文字列が注釈というのは、Fortran 90/95の文法を踏襲しています。しおりは行頭以降のスペース数に応じて段付け表示されます。しおり用注釈行は好きなように挿入、修正、削除して構いません。もちろん日本語の注釈も OK です。さらに spgra.dat 中の一行を修正しました。

前バージョン 2.61 をリリースして間もなく PANalytical 粉末X線回折セミナーで2回講演し、12日後に新バージョンと最新マニュアルの公開に漕ぎ着けたのは、我ながら信じられないような早業です。東京会場では v2.62 への言及は避けましたが、翌週の大阪会場では急遽しおり機能のスライドを見せびらかしました(笑)。

Windows 用では秀丸エディタアウトライン機能を活用しました。表示メニューで「アウトライン解析の枠」がチェックされていれば、しおりを自動表示します。Cu3Fe4P6.ins の編集時に "Profile function" のしおりをクリックした場合のスクリーンショットをご覧ください:




この例では、階層構造のしおり(折りたたみ可能)を使って3相試料の入力ファイルを編集しています。新たな「!+注釈」を hoge.ins に書き込むや否や、その変更がアウトライン解析枠に反映されます。しおりに使うフォントとサイズはテキストと独立に指定できます。

OS X 用では Jedit Xブックマーク機能を通じてしおりの表示を実現しました。表示メニューで「情報ドロワを表示」を選び、ブックマーク用 AppeScript 中の正規表現を微修正したマクロ Shiori.scpt を実行すれば、情報ドロワにシンプルなブックマークリストが段付け表示されます。「ツールバーのカスタマイズ」で「ブックマーク」のアイコンをツールバーで表示するように設定しておくことを推奨します。NUPDT = 1に設定して解析した場合は hoge.ins をカレントウィンドウにしてからしおりを作り直す必要があるのが残念ですが、BetterTouchTool で Shiori のショートカットを設定すれば、一発で更新できます。私は control-S を割り当てました。

バージョン番号2.62は前バージョンに比べ0.01しか増えていません。しかし hoge.ins の編集作業能率が劇的に向上することを考慮すると、v2.7と称してよいレベルの進歩ではないでしょうか。このような持続的改良が高く評価されていると見え、RIETAN-2000/FP に関する論文の被引用数 (2014年) は206に達し、9年連続で約200の被引用数を持続しました。

RIETAN-FP によるリートベルト解析を前面に掲げた「粉末X線解析の実際」講習会の B コースは未曾有の猛スピードで参加登録数が増えており、開催まで42日前の6月1日現在、約200名もの参加者を集めています。RIETAN-FP がかくの如く人気を博し、全コースを牽引する役割を担っていることが v2.6X 開発のモチベーションを著しく高めてくれました。この場を借りて、同講習会の受講者に御礼申し上げます。
Williamson-Hall と Halder-Wagner プロットを好みに応じて変更する方法
RIETAN-FP v2.6に追加した新機能、Williamson–Hall (WH) と Halder–Wagner (HW) プロットでは、gnuplot が hoge.plt と hoge.gpd から作成したグラフが PDF ファイル hoge-mscs.pdf に出力され、スクリーンに表示される。たとえばひな形ファイルの Fapatite.ins 中で MSCS = 2 (HW プロット) と設定したとしよう。β を積分幅(装置に由来する拡がりの寄与を差し引いた値)、θ をブラッグ角、K を形状因子、λ を波長、D を結晶子サイズ、ε をミクロ歪みとすると、Halder–Wagner の式は


と表される。β の単位はラジアンなので、(β/tanθ)2 と β/(tanθ sinθ) はいずれも無次元である。回帰直線の傾きから Kλ/D が、y 切片から 16ε2 が求まる。ε = Δd/d なので、16ε2 も無次元だ。

RIETAN-FP によってリートベルト解析を行った後、MSCS マクロで作画した HW プロット


をご覧いただきたい。ほぼ全反射のポイントがきれいに回帰直線に乗っているものの、y 軸で小数点・指数表記の数値が混在しており、やや見苦しく感じるだろう。y 軸に目盛った物理量 (β/tanθ)2 を1000倍すれば、程良い感じになりそうだ。そこで、Fapatite.plt の後半に注釈行として追加した Halder–Wagner プロット命令の一部を次のように変えてみた:

Line 61 (修正前): #YMAX = 1.49607E-04 # Maximum value for the y axis
Line 61 (修正後): #YMAX = 1.49607E-01 # Maximum value for the y axis

Line 78 (修正前): #set ylabel "({/Symbol-Oblique b} .....
Line 78 (修正後): #set ylabel "1000&{|}({/Symbol-Oblique b} .....

Line 81 (修正前): ..... using ($9/$7**2):(($9/$7)**2) .....
Line 81 (修正後): ..... using ($9/$7**2):(1000*($9/$7)**2) .....

Line 85 (修正前): # 0.00000 2.321955E-07
Line 85 (修正後): # 0.00000 2.320145E-04

Line 86 (修正前): # 7.947186E-02 1.351583E-04
Line 86 (修正後): # 7.947186E-02 1.351583E-01

Line 61では y 軸の最大値を1000倍し、Line 78では y 軸のラベルを 1000(β/tanθ)2("{|}" はわずかな空白を表す)とし、Line 81では y 軸にプロットする物理量を 1000(β/tanθ)2 とし、Line 85と Line 86ではそれぞれ y 切片と最高角のポイントの y 座標を1000倍している。

上記のように書き直し保存してから、MSCS マクロを最実行して得られたグラフを以下に示す。


y 軸の目盛りに付けた数値がかなり見やすくなった。この他、線の太さ、円の大きさ、フォントサイズなども RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境内で容易に変えられる。たとえば、y 軸の数値をすべて小数点以下二桁の書式に変更したい場合は、"#set ylabel ....." の直後に
#set format y '%.2f'
という行を追加すればよい。"#set ylabel ....." 中の offset の値は必要に応じて調節する。

MSCS マクロは WH・HW プロット用スクリプトファイル hoge-mscs.plt を hoge.plt と同一のフォルダーに残す。これを再利用しない手はない。Gnuplot 用の GUI アプリケーション Cueplot, Xgfe, Qgfe, UnigPlot, RubyPlot, QPlot などで hoge-mscs.plt を入力した後、細かい作画条件を変更するという選択肢を覚えておけば、時には助かることもあろう。

一般に、アプリケーションにブリトインされたグラフ作成ルーチンは融通が利かず、様々な微調整ができない。RIETAN-FP がグラフ作成を gnuplot のような外部プログラムに委ねているのは、リートベルト解析パターンや WH・HW プロットを自分好みに仕立て上げられるためである。

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