お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
<< October 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
 
MOBILE
qrcode
PROFILE
無料ブログ作成サービス JUGEM
 
VESTA の講習会、Eコースの実習内容
10月23日(火)・24日(水)に JFCC で開催される第25回 ナノ構造研究所 材料計算セミナー、Eコースの実習・実演内容(今後、変更・追加の予定)は以下の通り。
  1. 64ビット Windows 用 RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムをインストールし、秀丸エディタに RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境を導入し、それらの概要を説明する。
  2. 高温超伝導体 YBa2Cu4O8 の CIF を VESTA で入力し、結晶データを標準化した後、「Utilities > Powder Diffraction Pattern」を選んで RIETAN-FP により粉末X線回折パターンをプロットする。
  3. RIETAN-FP が確実に読み込める CIF を VESTA で複数出力し、cif2ins と combins の連携プレーにより多相リートベルト解析用入力ファイルを作成する。
  4. VESTA が出力する最新ルールに則った CIF を ListReplace マクロによって MedeA が読み込める旧フォーマットの CIF に変換する。
  5. リートベルト解析後に ORFFE を2回実行して生成した hoge.ffe を VESTA で入力し、リスト中の結合距離と結合角を選択して結晶模型中の該当部分が選択状態になることを確認する。
  6. リートベルト解析途上の結晶データを含む VESTA 形式のファイル hoge.vesta を逐次生成する。
  7. チャージフリッピング、最大エントロピー法、イオン拡散経路の可視化などで必要となる a, b, c 軸方向に沿った単位胞の分割数を VESTA により分解能から決定する。
  8. RIETAN-FP、PyAbstantia、VESTA の連携によりイオン伝導体における可動化学種の拡散経路を BVS・BVEL 法で可視化する(Pythonnumpy をインストールした人を対象とする実習)。
  9. RIETAN-FP, Superflip, EDMA, VESTA の連携プレーにより結晶構造モデルを構築し可視化する。
  10. RIETAN-FP により Cimetidine の放射光粉末回折データをリートベルト法で解析する。さらに Dysnomia と RIETAN-FP の連携により coarse-to-fine アルゴリズムを採用した拡張 MPF を実行し、得られた電子密度分布を VESTA で表示する。
  11. DV-Xα分子軌道法により cimetidine の電子密度と静電ポテンシャルを計算し、静電ポテンシャルで彩色した電子密度の等値曲面を VESTA で表示した後、MPF で求めたイメージと比較する(実演のみ)。
  12. cif2pdf と E2J で解析結果を PDF ファイルとして文書化する際に VESTA で作成した結晶模型と電子密度の等値曲面を含める(実演のみ)。
JFCC で粉末構造解析の無料講習会をアンコール開催!
2015年10月以来、龍谷大学岡山大学神戸大学京都大学九州大学ファインセラミックスセンター(JFCC)に「RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」と題するワンマン講習会を出前してきました。昨年秋には、とある民間企業にもお邪魔しました。講義だけでお茶を濁すのでなく、PC を使うハンズオン(人に教わりながらの体験学習)に重点を置くのが特徴です。

JFCC で本年5月7・8日に開催した第22回材料計算セミナーの定員は当初60名でしたが、私のホームページ、ブログ、Twitter で宣伝し始めるやいなや参加登録者が破竹の勢いで増え続けました。会告が渾身の力作だったことが主な原因でしょう。そこで A (講義) と B (Windows での実習) の定員をそれぞれ90名と65名に増やしました。実習の定員が少ないのは充電用コンセントの数がやや少なかったためです。ところが JFCC のホームページに会告が掲示される前日の4月2日にいずれも満席となり、早々と参加登録を締め切る羽目に陥りました。最終的には100名を越える申込者があったそうです。

私は JFCC に着任後の初仕事が空前の成功を収めたことだけで十分満足しましたが、主催者からは「かなり多くの人達が参加できなかったのは残念なので、材料計算セミナーを再度開催してもらえませんか」と要請されました。私は常日頃からイベントへの協力依頼は四の五の言わずに引き受けるよう心がけています。前代未聞のアンコール講習会を8月上旬に開催すると決断しました。旺盛な需要への対応を先延ばしするようでは、出前請負人たる私の存在意義が薄れかねません。


第 24 回 ナノ構造研究所 材料計算セミナー

   RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析   

日時: 2018 年 8 月 7 日(火)・8 日(水)
会場: ファインセラミックスセンター地図


共催: 文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究「複合アニオン化合物の創製と新機能」


下記のように、実習用 OS を Windows だけに絞った結果、第22回材料計算セミナーに比べ Windows 機による実習の時間が2倍に増えました。一般に公開している RIETAN-FP v2.83 を最新版 v2.88 に更新でき、非公開のマクロが手に入るというメリットもあります。

1) 講師

泉 富士夫(JFCC 客員研究員)

2) プログラム

8月7日(火)、13:30〜17:00
講義「粉末回折データの解析技術 — リートベルト法」
講義「粉末回折データの解析技術 — パターン分解、未知構造解析、MEM」

8月8日(水)、9:30〜12:00(昼食)13:00〜17:00
・64ビット Windows 機を用いる実習

一日だけの参加も可能です。登録時に参加日を申し出てください。64ビット Windows 機を持ち合わせていない方は初日だけ聴講するという手があります。

3) 定員

60名(先着順)

4) 参加費

無料

5) 参加登録

JFCC の HP に掲示された会告をご覧ください。

本講習会は粉末構造解析・三次元可視化システム RIETAN-FP・VENUS システムなどを利用した構造解析技術に関する講義と実習からなっています。講義には百数十枚のスライドを使いますが、カラー印刷の経費と手間を省くため、参加者には講義に使う二つの PDF ファイルを当日までに差し上げます。

実習用に64ビット Windows 機(OS: Windows 7以降)と印刷済みのチュートリアル(下記)を各自ご持参ください。事前に
をインストールしておくようお願いします。秀丸エディタはシェアウェアです。試用期間は2週間で、経済的に困窮している学生にはフリー制度があります。一方、Sumatra PDF はフリーソフトウェアです。

インストーラーにはチュートリアル「RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」(76ページ)が同梱されているため、実習内容の予習と復習は容易です。充実したチュートリアルを提供する実習の重要性についてはブログエントリー「最新版 RIETAN-FP・VENUS システムのお披露目を兼ねた講習会」の冒頭で力説したので、ご一読ください。実習内容が逐一記述されているチュートリア抜きでは、サポート・スタッフ抜きの実習と後日の復習は困難です。

さらに4種類の副読本(6つの PDF ファイル)も付録として添付します。JFCC で10月23・24日に開催する VESTA の講習会用に執筆した「RIETAN-FP–VESTA 間の連携による三次元可視化とファイル変換と題する文書(23ページ)は、両ソフトのユーザーに歓迎されると確信しています。その目次は以下の通りです。


上述のように、今回の実習に使う OS は需要が旺盛な Windows のみに絞りました。Windows ユーザーにとって、5月の講習会の時に比べ実習時間が2倍になるという利点があります。macOS 用のインストーラーも全員に配付するので、Mac ユーザーには初日だけ参加するという選択肢があります。懇切丁寧な macOS 用チュートリアル(69ページ)を手に取りながら自習するのは、さほど難しくありません。

実習では、UNIX コマンドの集合体 BusyBox「BusyBox に魅せられて」参照)と互換性のあるシェルスクリプトを含む新世代の RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境上で種々の秀丸マクロを実行します。BusyBox はスマホ、テレビ、オーディオ、ルーター、小型サーバーなどにおける組み込み UNIX の活用に役立っています。 JFCC での講習会に先立ち、前世代の Windows 用支援環境に含まれていたバッチファイルをすべて bash スクリプトに置き換えるとともに、GnuWin32の UNIX 系コマンドと onigsed を追放しました。とりわけ苦労したのがリートベルト解析の英文報告書を「和訳」する E2J.command です。 Shift_JIS のダメ文字をストリームエディター sed で処理するノウハウの会得に腐心しました。その結果、宿年の悲願だったコマンドプロンプトからの脱却と macOS 版と同レベルへの進化を果たしたのは、嬉しい限りです。

体験学習には RIETAN-FP の最新版 v2.88, gnuplot, Sumatra PDF, WinPLOTR, DICVOL, ORFFE, lst2cif, xdc, cif2ins, combins, sda.command, ALBA, superflip, EDMA, FOX, MPF_multi.command+Dysnomia, VESTA などを使います。上記のソフトウェア群は
  1. ピークサーチ
  2. 指数づけ
  3. バックグラウンドの決定
  4. リートベルト解析
  5. 多相リートベルト解析用入力ファイルの自動作成
  6. sed を活用した逐次リートベルト解析
  7. パターン分解
  8. 最大エントロピー・パターソン解析
  9. 未知構造モデルの構築: 双対空間法とレプリカ交換法
  10. MPF (MEM-based Pattern Fitting) 解析
  11. 結晶構造と電子密度分布の三次元可視化
といった広大な領域を網羅しています。リートベルト解析は one of them に過ぎません。ただし時間の都合上、一部のプログラムは臨機応変にスキップする可能性が大です。といっても、上述のように実習内容はチュートリアルに詳述しましたから、受講者は後日ゆっくり自習できます。

中でも cif2ins と未公開ユーティリティー combins の連携プレーは注目に値します。cif2ins は CIF 中の結晶データをひな形ファイル template.ins に導入することにより RIETAN-FP 用入力ファイル *.ins に変換します。一方、combins は複数の *.ins から多相解析用入力ファイル multi_phase.ins を自動生成します。multi_phase.ins を改名し、必要に応じて中身を編集してからリートベルト解析に移行します。

sed を活用したシェルスクリプト sda.command による逐次リートベルト解析の自動化は、他に類を見ない独創的な技術です。代表的な UNIX ツールである sed が BusyBox に含まれているのは言うまでもありません。複数箇所の文字列置換が可能で、正規表現も使えます。sda.command は温度、圧力、化学組成、雰囲気などを変化させて測定した一連の強度データの自動解析で真骨頂を発揮します。今回の実習では、sda.command を
  • BaSO4 の粉末X線回折データのリートベルト解析における選択配向ベクトルの決定
  • 室温から640 Kの間で測定した Sr3Zr2O7 の放射光粉末回折データ(9点)の逐次リートベルト解析
に応用します。

比較的時間のかかる計算中に、訴求効果の高いデモンストレーションとして
を実演します。両者を実習から外すのは TeX LiveMiniconda3 がかなり大きなディスクスペースを占めるためです。ただしチュートリアルを参照すれば、TeX Live と Miniconda3 は容易にインストールできます。


Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O2 における BVEL の三次元分布。等値曲面レベル: −2.5 eV。
9個の単位胞を作画した。緑、三色、赤の球はそれぞれLi, (Ni1/3Mn1/3Co1/3), O を示す。

前回の講習会と比べると、ソフトウェアと教材はゆっくりではあるものの着実に進歩しています。RIETAN-FP v2.88 はリートベルト解析途上の結晶データを含む VESTA 形式ファイル *.vesta を逐次生成できます。非対称単位内の原子数が多い配位ネットワーク錯体やゼオライトなどのリートべルト解析において構造精密化の進捗状況と妥当性を VESTA で検証するのに役立ちます。新作マクロ intramol と変換リストによる連続置換マクロ ListReplace.mac(二つの変換リストファイル cif_PDF-4+.txt と cif4MedeA.txt を含む)も追加しました。さらに、チュートリアル中の「可動イオンの拡散経路の可視化」の部分を加筆修正し、BVS・BVEL 法に関する重要な情報を提供できるようにしました。過去の講習会の参加者が再受講されても、それなりの意義があるはずです。奮ってご参加ください。

第24回材料計算セミナー(8月)は第22回材料計算セミナー(5月)から3ヶ月しか経っておらず、なおかつほぼ同内容の講習会が9月下旬に東工大で開催されるにもかかわらず、定員を越える63名(JFCC の職員を除く)の方々が参加し、盛会のうちに終わりました。両セミナーの驚異的な集客実績は長く語り草になることでしょう。
東工大で粉末構造解析の無料講習会を開催!
昨年、日本金属学会会報「まてりあ」に掲載した入門講座「RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」は次のように締めくくられています。
紙面の限られた本講座に加え書籍、レビュー、マニュアルなども読み、いくら講演や講義を聴講したところで、高度な解析技術がおのずと身に付くわけではない。粉末回折に限った話でないが、活字や一方通行の講義を通じて学んだ知識はなかなか血肉と化さないのである。

筆者は人材育成事業の短期講習や自主開催している無料講習会では、講義よりはむしろ PC を使う実習を重視している。実習の目的が座学の補完なのは言うまでもない。 RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムを自らインストールした後、それらを順次実行していき、実戦経験を積むことにより粉末構造解析についての土地勘を養う。ハンズオンで使用するプログラムはかなり多く、しかも目まぐるしく変わるため、必要に応じてメモをとるのも煩わしい。そこで実習の円滑な進行を図るとともに、その内容に遺漏がないように Windows・macOS 上での操作手順を100ペ ージ超にわたり懇切丁寧に記述したチュートリアルをインストーラーに同梱している。後日、印刷したチュートリアルを眺めながら、復習するのにもすこぶる役立つ。

チュートリアル中には近年筆者が書きためてきたブログ・エントリーや Evernote の公開ノートへのリンクが多数張られているため、貴重な付加的情報も得られる。この文書の入手だけでも収穫が大きいので、実習付き講習会への参加を強く勧めたい。要請さえあれば、喜んで大学などに無料講習会を出前する用意がある。

多種多様なプログラムからなるインストーラー、計700ページになんなんとする RIETAN-FP・VENUS システムのマニュアル、チュートリアルが渾然一体となった巨大コンテン ツを通じて多くの方々が粉末構造解析に関する知識と経験を深め、種々の材料に応用し、有用な成果を得たならば、これに過ぎる喜びはない。本入門講座はその当該コンテンツの一部として、単なる連載記事を超越した存在となることを願いつつ執筆したことを最後に申し添えておく。
「自主開催している無料講習会」とは、2015年10月以来、龍谷大学岡山大学神戸大学京都大学九州大学JFCCJFCC(アンコール開催)で催してきたワンマン講習会「RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」を指しています。この他、とある民間企業に昨秋お邪魔しましたし、本年9月12・13日には非公開の講習会を大阪府立大学で開きます。

このたび、東京工業大学で9月24・25日に第10回講習会を催すことが決まりました。二日間にわたる講義+ハンズオンの独演会を東京で開催するのは初めてです。首都圏在住の方々に歓迎されるに違いありません。


 「RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」講習会  

日時: 2018 年 9 月 24 日(月)・25 日(火)

会場: 東京工業大学 大岡山キャンパス レクチャーシアター地図

共催: 科学技術人材育成費補助事業 Nanotech CUPAL



レクチャーシアター(西5号館3階)は階段座席なのでスクリーンがすこぶる見やすく、座席数が245席に達するため適度に空席を挟んだ状態で快適にご聴講頂けます。過去の実績を高く評価して頂き、このような素晴らしい会場を提供して下さった東工大に厚く御礼申し上げます。東工大は私が昨年度まで講師を務めていた Nanotech CUPAL アライアンス の B 機関(研究者等派遣機関)なので、 Nanotech CUPAL との共催といたしました。
1) プログラム

9月24日、13:30〜17:00
講義「粉末回折データの解析技術 — リートベルト法」
講義「粉末回折データの解析技術 — パターン分解、未知構造解析、MEM」

9月25日、9:30〜12:00(昼食)13:00〜17:00
・Windows 機を用いる実習

32ビット Windows 機や Mac のユーザーは9月24日(振替休日)だけの参加でも構いません。配付ファイルはすべて差し上げます。

2) 定員

120名。先着順ですので、早めの参加登録をお願いします。

3) 参加費

無料

4) 配付アーカイブファイル

・講義用 PDF ファイル: Slides.zip
・Windows 用インストーラー: Win_exercise.zip
・macOS 用インストーラー: Mac_exercise.dmg
・参考資料: Reference_materials.zip

二つのインストーラーは RIETAN-FP の最新版 v2.90を含んでいます。

5) 世話人

東京工業大学 理学院 化学系
河野正規教授

6) 参加登録

下記の情報を明記の上、okiyama.s.aa@m.titech.ac.jp(沖山)宛にメールをお送りください。9月19日(水)に参加申込みを締め切ります。

1. 氏名
2. 所属
3. E メールアドレス
4. 下記4つのどれかに該当する方は身分を明記
    博士課程学生
    修士課程学生
    学部学生
    任期付き研究者(ポスドク)

本講習会は粉末構造解析・三次元可視化システム RIETAN-FP・VENUS システムなどを利用した構造解析技術に関する講義と実習からなっています。講義には百数十枚のスライドを使いますが、カラー印刷の経費と手間を省くため、参加者には上述の講義に使う二つの PDF ファイルを含む Slides.zip を配付します。

実習用に64ビット Windows 機(OS: Windows 7以降)と印刷済みのチュートリアル(下記)を各自ご持参ください。事前に
をインストールしておくようお願いします。秀丸エディタはシェアウェアです。試用期間は2週間で、経済的に困窮している学生にはフリー制度があります。一方、Sumatra PDF はフリーソフトウェアです。

事前配付するインストーラー Win_exercise.zip はホームフォルダー(C:¥Users¥ユーザー名)にコピーしておいてください。インストーラーにはチュートリアル「RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」(80ページ)が同梱されているため、実習内容の予習と復習は容易です。充実したチュートリアルを提供する実習の重要性についてはブログエントリー「最新版 RIETAN-FP・VENUS システムのお披露目を兼ねた講習会」の冒頭で力説したので、ご一読ください。実習内容が逐一記述されているチュートリア抜きでは、サポート・スタッフ抜きの実習と後日の復習は困難です。

さらに4種類の副読本(6つの PDF ファイル)を含むアーカイブファイル Reference_materials.zip も差し上げます。JFCC で10月23・24日に開催する VESTA の講習会用に執筆した「RIETAN-FP–VESTA 間の連携による三次元可視化とファイル変換」と題する文書(24ページ)は両ソフトのユーザーに歓迎されると確信しています。同文書の14ページを下に示します。


今回の実習に使う OS は需要が旺盛な Windows のみに絞りました。Windows ユーザーにとって、5月の講習会の時に比べ実習時間が2倍になるというメリットがあります。macOS 用のインストーラー Mac_exercise.dmg も配付するので、Mac ユーザーには初日だけ参加するという選択肢があります。懇切丁寧な macOS 用チュートリアル(74ページ)を手に取りながら自習するのは、さほど難しくありません。

実習では、UNIX コマンドの集合体 BusyBox「BusyBox に魅せられて」参照)と互換性のあるシェルスクリプトを含む新世代の RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境上で種々の秀丸マクロを実行します。BusyBox はスマホ、テレビ、オーディオ、ルーター、小型サーバーなどにおける組み込み UNIX の活用に役立っています。 JFCC での講習会に先立ち、前世代の Windows 用支援環境に含まれていたバッチファイルをすべて bash スクリプト *.command に置き換えるとともに、GnuWin32の UNIX 系 コマンドと Onigsed を削除しました。今や RIETAN_VENUS¥Commands フォルダーでは UNIX シェル bash.exe とともに26個もの bash スクリプトが起動を待ち構えています(下図)。bash.exe は busybox64.exe を改名したものに他なりません。わずか 544 KB の軽量ツールです。


とりわけ苦労したのがリートベルト解析の英文報告書を「和訳」する E2J.command です。長時間を費やした末、 Shift_JIS のダメ文字をストリームエディター sed で正常に処理するのに見事成功しました。宿年の悲願だったコマンドプロンプトからの脱却と macOS 版と同レベルへの進化を遂げたのは喜ばしい限りです。

体験学習には RIETAN-FP v2.90, gnuplot, WinPLOTR, DICVOL, ORFFE, lst2cif, xdc, cif2ins, combins, sda.command, ALBA, superflip, EDMA, FOX, MPF_multi.command+Dysnomia, VESTA などを使います。上記のソフトウェア群は
  1. ピークサーチ
  2. 指数づけ
  3. バックグラウンドの決定
  4. リートベルト解析
  5. 多相リートベルト解析用入力ファイルの自動作成
  6. sed を活用した逐次リートベルト解析
  7. パターン分解
  8. 最大エントロピー・パターソン解析
  9. 未知構造モデルの構築: 双対空間法とレプリカ交換法
  10. MPF (MEM-based Pattern Fitting) 解析(下図)
  11. 結晶構造と電子密度分布の三次元可視化
といった広大な領域を網羅しています。リートベルト解析は one of them に過ぎません。ただし時間の都合上、一部のプログラムは臨機応変にスキップする可能性が大です。といっても、上述のように実習内容はチュートリアルに詳述しましたから、受講者は後日ゆっくり自習できます。
放射光粉末回折データの MPF 解析で決定した cimetidine の電子密度分布。等値曲面レベル: 1.11 Å-3

中でも cif2ins と未公開ユーティリティー combins の連携プレーは注目に値します。cif2ins は CIF 中の結晶データをひな形ファイル template.ins に導入することにより RIETAN-FP 用入力ファイル *.ins に変換します。一方、combins は複数の *.ins から多相解析用入力ファイル multi_phase.ins を自動生成します。multi_phase.ins を改名し、必要に応じて中身を編集してからリートベルト解析に移行します。

sed を活用したシェルスクリプト sda.command による逐次リートベルト解析の自動化は、他に類を見ない独創的な技術です。代表的な UNIX ツールである sed が BusyBox に含まれているのは言うまでもありません。複数箇所の文字列置換が可能で、もちろん正規表現も使えます。sda.command は温度、圧力、化学組成、雰囲気などを変化させて測定した一連の強度データの自動解析で真骨頂を発揮します。

今回の実習では、sda.command を
  • BaSO4 の粉末X線回折データのリートベルト解析における選択配向ベクトルの決定
  • 室温から640 Kの間で測定した Sr3Zr2O7 の放射光粉末回折データ(9点)の逐次リートベルト解析
に応用します。Sr3Zr2O7 の構造精密化では、あらかじめ WinPLOTR か FOX による指数づけによって各温度における格子定数を求めておきます。次に、室温における格子定数 (a = 20.9489 Å, b = 5.81713 Å, c = 5.79939 Å) を各温度における格子定数と置換する命令を SZO.sda というファイルに
# 350 K
1) sed 's/20.9489 5.81713 5.79939/20.9577 5.8200 5.8013/'
# 400 K
2) sed 's/20.9489 5.81713 5.79939/20.9671 5.8227 5.8035/'
# 450 K
3) sed 's/20.9489 5.81713 5.79939/20.9762 5.8252 5.8060/'
# 500 K
4) sed 's/20.9489 5.81713 5.79939/20.9808 5.8272 5.8082/'
# 550 K
5) sed 's/20.9489 5.81713 5.79939/20.9943 5.8304 5.8114/'
# 600 K
6) sed 's/20.9489 5.81713 5.79939/20.9997 5.8304 5.8144/'
# 620 K
7) sed 's/20.9489 5.81713 5.79939/21.0040 5.8317 5.8159/'
# 640 K
8) sed 's/20.9489 5.81713 5.79939/21.0130 5.8172 5.8349/'
と記述してカレントフォルダーに保存した後、室温試料のリートベルト解析を実行して bash スクリプト sda.command を生成させます。後は sda.command を少々編集してからダブルクリックするだけです。

RIETAN-FP v2.88 はリートベルト解析途上の結晶データを含む VESTA 形式ファイルを逐次生成できます。非対称単位内の原子数が多い配位ネットワーク錯体やゼオライトなどのリートべルト解析において構造精密化の進捗状況と妥当性を VESTA で検証するのに役立ちます。

比較的時間のかかる計算中に、訴求効果の高いデモンストレーションとして
を実演します。両者を実習から外すのは TeX LivePython がかなり大きなディスクスペースを占めるためです。ただしチュートリアルを参照すれば、TeX Live と Python は容易にインストールできます。

一連の無料講習会の間にも、ソフトウェアと教材はゆっくりではあるものの着実に成長しています。RIETAN-FP v2.90はリートベルト解析途上の結晶データを含む VESTA 形式ファイル *.vesta を逐次生成できます。非対称単位内の原子数が多い配位ネットワーク錯体やゼオライトなどのリートべルト解析において構造精密化の進捗状況と妥当性を VESTA で検証するのに役立ちます。さらに、v2.90は Log_folder というフォルダーがカレントフォルダーに存在すると、hoge.ins(解析前)と hoge.lst(解析後)をタイムスタンプ付きで Log_folder に保存してくれます。新作マクロ intramol と R_indices、変換リストによる連続置換マクロ ListReplace.mac(二つの変換リストファイル cif_PDF-4+.txt と cif4MedeA.txt を含む)も追加しました。R_indices は 上記の Log_folder に含まれる全 *.lst から信頼度指標を抽出し、hoge.rel に出力します。R_indices の出現により RIETAN-FP の利便性が一段と高まったといって過言でありません

リートベルト解析例に La2CuO4 を、PyAbstantia によるイオン伝導経路可視化の例に α-AgI, LiFePO4, LiMn2O4 を追加しました。また、チュートリアル中の「可動イオンの拡散経路の可視化」の部分を加筆修正し、BVS・BVEL 法に関する重要な情報を提供できるようにしました。

過去の講習会の参加者が本講習会を再受講されても、それなりの意義があるはずです。奮ってご参加ください。

本講習会は93名の参加登録者を集め、盛況の内に終了しました。世話人を引き受けて頂いた河野正規先生に厚く御礼申し上げます
最新版 RIETAN-FP・VENUS システムのお披露目を兼ねた講習会

1. 「ソフトは無料、参加費も無料!」へのこだわり


私は長年、粉末回折に関する講演や講義の依頼に応じてきました。その間の経験を通じ、一方通行の講義だけの講習会を受講しても粉末構造解析技術の習得は困難だと痛感するに至りました。そのため、科学技術人材育成事業 Nanotech CUPAL の一環として構造解析(サブコース A : 粉末回折)の講師に就任後は、PC を使う実習を積極的に導入するとともに懇切丁寧なチュートリアルを執筆し、できるだけ教育効果を上げるよう努めました。さらに、英語での講義用に作成した英文スライドは156枚に上ります。

2014年以来、当該人材育成事業に従事した結果、次の二点を再認識しました。
  1. ソフトウェアや解析技術について教えるには座学だけでなくハンズオン(体験学習)も必要不可欠である。
  2. ハンズオンでは、文献、URL、注意事項などが記載されており、実習内容を復習するのに役立つチュートリアルを配付することが望ましい。
講義や講演は事前の準備が楽な反面、聞き流されがちで、技術の習得はさほど期待できないといって過言でありません。

過去三年半にわたり営々と作成しブラッシュアップしてきた教材、すなわち講義用 PDF ファイル、インストーラー、チュートリアルは龍谷大岡山大神戸大京大九大で催したワンマン無料講習会で再利用しました。その結果、ほぼ同じ内容の講習会を NIMS 外で開けば、労せずして十数倍の参加者が集まるという深刻な格差を繰り返し直視する羽目に陥りました。主につくば市の研究機関が育成実施機関となっている Nanotech CUPAL 全般の傾向として、地理的理由から敬遠されるのです。おまけに、募集要項は講師の名前を明記しない不可解な様式に統一されています。こんな体たらくでは、実績と知名度で人を引き寄せられる講師はいないと暗示しているのも同然です。あくまでポスドクの雇用が主目的で、教育活動には腰が引けているという姿勢が透けて見えます。

そこで、少しでも多くの方々に入門コースに参加して頂くため、せめて参加費は無料にしてほしいと担当者に要望しましたが、その願いは叶いませんでした。育成対象外の方々、とくに学生からお金を徴収するのは苦痛以外の何物でもありません。心がポキッと折れてしまった私は、2017年度限りで Nanotech CUPAL に見切りを付け、その講師を辞任する決意を固めました。つくば市は交通の便が悪いだけでなく、市内にある筑波大、KEK、産総研からの受講者がさほど期待できません。自ら全国各地に足を運んで無料講習会を開けば、集客に好都合な上、受講者の交通費と宿泊費も節約できる、と三年かけて悟ったのです。

一方、私は最低限のバランス感覚も備えています。東工大と Nanotech CUPAL の共催で粉末構造解析に関する無料ワンマン講習会(サブコース A の入門コースに相当)を東工大・大岡山キャンパスで9月末に開催し、遅ればせながら Nanotech CUPAL の「卒業式」に代える心積もりです。詳細が決まり次第、本 HP に掲示します。初の東京開催ともなれば、Nanotech CUPAL 入門コースの四年分を上回る受講者が集まるでしょう。

2. 独演講習会 = 座学 + Windows・macOS を使う体験学習


来年度はまずゴールデンウィークの直後に名古屋で無料講習会を開催します:


第 22 回 ナノ構造研究所 材料計算セミナー

  RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析 

日時: 2018 年 5 月 7 日(月)・8 日(火)
会場: ファインセラミックスセンター地図


   共催: 文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究「複合アニオン化合物の創製と新機能」  


二日間にわたる実習付きセミナーの開催はファインセラミックスセンター (JFCC) で初めてだそうです。ちなみに、私は2018年度から JFCC の客員研究員に就任します。本講習会は新所属先での初仕事に他なりません。

本セミナーは粉末構造解析・三次元可視化システム RIETAN-FP・VENUS システムなどを利用した構造解析技術に関する講義と実習からなっています。実習では Windows 機と Mac に半日ずつ割り当てるという前代未聞の試みにチャレンジします。上記 PDF ファイル中の「申込み方法」に従い、A、B、C を一つ以上指定して参加登録してください。UNIX コマンドの集合体 BusyBox を活用したシェルスクリプト (Windows) と誕生間もないテキストエディター Jedit Ω を基盤とする RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境 (macOS) をお披露目します。両者を実装したWindows・macOS 用インストーラーに加え、詳しいチュートリアル(約130ページ)を配付するため、実習内容の復習は簡単です。講義には百数十枚のスライドを使いますが、カラー印刷の経費と手間をカットするため、参加者には二つの講義用 PDF ファイル
  • 粉末回折データの解析技術 — リートベルト法
  • 粉末回折データの解析技術 — パターン分解、未知構造解析、MEM
を当日までに差し上げます。さらに二種類の副読本も付録として添付します。

ハンズオンには秀丸エディタ, Jedit Ω, Sumatra PDF, RIETAN-FP v2.86, gnuplot, WinPLOTR (Windows 用のみ), DICVOL, ORFFE, lst2cif, cif2ins, combins, sda, ALBA, superflip, EDMA, FOX, MPF_multi.command+Dysnomia, VESTA などのプログラムを使います。上記のソフトウェア群は
  1. ピークサーチ
  2. 指数づけ
  3. バックグラウンドの決定
  4. リートベルト解析
  5. 多相リートベルト解析用入力ファイルの自動作成
  6. パターン分解
  7. 最大エントロピー・パターソン解析
  8. 未知構造モデルの構築: 双対空間法とレプリカ交換法
  9. MPF (MEM-based Pattern Fitting) 解析
  10. 結晶構造と電子密度分布の三次元可視化
といった広大な領域を網羅しています。リートベルト解析は one of them に過ぎません。ただし時間の都合上、一部のプログラムは臨機応変にスキップする可能性が大です。といっても、上述のように実習内容はチュートリアルに詳述してありますから、受講者に迷惑をかける恐れはありません。

中でも cif2ins と 未公開ユーティリティー combins の連携プレーは注目に値します。cif2ins は CIF 中の結晶データをひな形ファイル template.ins に導入することにより RIETAN-FP 用入力ファイル *.ins に変換します。一方、 combins は複数の *.ins から多相解析用入力ファイル multi_phase.ins を自動生成します。multi_phase.ins を改名し、必要に応じて中身を編集してからリートベルト解析に移行します。

ストリームエディター sed や Perl を活用したシェルスクリプト sda.command による逐次リートベルト解析の自動化は、他に類を見ない独創的な技術です。もちろん文字列の置換には正規表現を使えます。今回の実習では、BaSO4 の粉末X線回折データのリートベルト解析における選択配向ベクトルの決定に応用します。sda.command は温度、圧力、化学組成を変化させて測定した一連の強度データを一挙に自動解析できるよう設計しました。

比較的時間のかかる計算中に、訴求効果の高いデモンストレーションとして
を実演します。両者を実習から外すのは TeX LiveMiniconda3 がかなり大きなディスクスペースを占有するためです。ただし後述のチュートリアルを参照すれば、TeX Live と Miniconda3 は容易にインストールできます。

3. RIETAN-FP・VENUS統合支援環境の新装開店


参考までに、新たに支援環境に導入した BusyBox と Jedit Ω を以下に紹介しておきます。

3.1 BusyBox に魅せられて


Windows 用 RIETAN-FP・VENUS システムに含まれるバッチファイルでは、GnuWin32 の UNIX コマンドを長く利用してきました。コマンドプロンプトが提供する貧弱な環境やコマンドは複雑なデータ処理に向いていないためです。今年の初めに Windows 用 BusyBox を64ビット化した busybox64.exe の存在を知り、非力かつ時代遅れなバッチファイルを撲滅するために一も二もなく飛びつきました。組み込みシステムが主な用途の一つである BusyBox で、一部のコマンド(たとえば bc)や機能(たとえばプロセス置換)が削られているのは承知の上でした。

Windows Subsystem for Linux は Windows 10 でしか使えない上、純然たる Linux に比べると性能が落ちます。Cygwin はエミュレーターなので、プログラムの実行速度を低下させます。それに、拙作ソフトのユーザーにそれらのインストールを強制する訳にはいきません。

Windows 用 BusyBox の bash ウィンドウや bash スクリプトでは、BusyBox が内蔵している全 UNIX アプレットがパスを通さずに使えます。UNIX 用アプリケーションを Windows 機に移植するのでない限り、軽量級の BusyBox で十分です。BusyBox さえあれば、既存バッチファイルを bash スクリプトに置き換えられます。そこで、1月下旬から約一ヶ月かけて Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境に含まれる全バッチファイル *.bat を bash スクリプト *.command に書き換え、GnuWin32 のコマンドと onigsed(日本語文字列置換用)の代わりに RIETAN_VENUS¥Commands フォルダー(下図)に置きました。*.command に対応する秀丸マクロ *.mac も並行して改訂しました。今後、配付ファイルと実習用インストーラーにそれらを含めるのは言うまでもありません。



RIETAN_VENUS¥Commands フォルダーの内容。qpdf は PDF ファ
イルの合体に使用するプログラム。busybox64.exe は bash.exe に改
名した。bash.exe のサイズが 511 KB しかないことは注目に値する。

3.2 Jedit Ω の徹底活用を目指して


従来、macOS 用 RIETAN-FP・VENUS システムは Jedit Ω の前世代版 Jedit X 上に構築していましたが、64ビット・アプリケーション Jedit Ω に乗り換えました。Jedit Ω は
  1. 構文カラーリング(下図)
  2. 正規表現を使えるスマートインデックス(下図)
  3. Jedit Ω におけるメニューショートカットの定義
  4. 階層化したマクロメニュー
  5. 優れた GUI を通じ二つのファイルを比較
といった至便の新機能を備えています。 5は別売りのユーティリティー Jdiff X に相当します。Jedit Ω は Jedit X より動作が俊敏で、価格は1,200円と手頃です。OS X 10.10 (Yosemite) 以降で使えます。スマートインデックスで後方参照(\1, \2, …)を使えるのには感激しました。秀丸エディタの相当機能、すなわちアウトライン解析の枠では、そのような離れ業は無理な相談です。



スマートインデックスメニューで段付けされたブックマークを表示し、
“Structure parameters” を選ぶ。構文カラーリングにより Select ブ
ロックと If ブロックの構文がそれぞれ赤と青の文字で表示されている。

4. おわりに


当初、JFCC における実習では Mac だけを使い、9月末に開催する東工大での講習会で Windows 機を使用する予定でしたが、強力なモチベーションに背中を押された結果、コロっと気が変わりました。Windows・macOS 上での実習を一日で終わらせなければならぬ上、実習は遅れるのが常なので、昼休みは抜きも同然と覚悟しています。タイミング的・体力的にも悲愴感が漂うデスマッチとなるでしょう。喉の酷使により声が割れたり、かすれたりするのが心配ですが、微力を尽くして乗り切ります。

JFCC では今秋に VESTA の講習会(ハンズオンを含む)も開催します。ご期待ください。
粉末構造解析講習会が九州に上陸
2015年秋以来、龍谷大学岡山大学神戸大学京都大学で開催し、好評を博してきた粉末構造解析に関する実習中心の講習会を2018年1月15日 (月)・16日 (火) に九州大学 伊都キャンパスで催します。


京大ではハンズオン(体験学習)だけの一日コースを初めて試みましたが、今回は講義(半日)+実習(一日)に戻します。いずれか一日だけの参加も認めます。九州での講習会は初めてなので、定員(120名、先着順)は多めに設定しました。といっても180名収容の大教室が会場ですから、詰め込み感のない環境で受講していただけるでしょう。もちろん学外者にも解放します。万障お繰合せの上ご参加頂ければ幸甚に存じます。

講義には百数十枚のスライドを使いますが、カラー印刷の経費と手間をカットするため、参加者には二つの講義用 PDF ファイル
  1. 粉末回折データの解析技術 — リートベルト法
  2. 粉末回折データの解析技術 — パターン分解、未知構造解析、MEM
を当日までに差し上げます。さらに二種類の副読本も付録として添付します。

ハンズオンには秀丸エディタ (+統合支援環境), RIETAN-FP v2.86, gnuplot, WinPLOTR, DICVOL, ORFFE, lst2cif, cif2ins, combins, sda, ALBA, superflip, EDMA, FOX, MPF_multi.command+Dysnomia, VESTA などのプログラムを使います。上記のソフトウェア群はピークサーチ、指数づけ、バックグラウンドの決定、リートベルト解析、多相リートベルト解析用入力ファイルの自動作成、Le Bail 解析、最大エントロピー・パターソン解析、未知構造モデルの構築(双対空間法とレプリカ交換法)、MPF解析、結晶構造と電子密度分布の三次元可視化といった広大な領域を網羅しています。リートベルト解析は one of them に過ぎません。ただし時間の都合上、FOX はスキップする可能性が大きいです。

中でも cif2ins と 未公開ユーティリティー combins の連携プレーは注目に値します。cif2ins は CIF (Crystallographic Information File) 中の結晶データをひな形ファイル template.ins に導入することにより RIETAN-FP 用入力ファイル *.ins に変換します。一方、 combins は複数の *.ins から多相解析用入力ファイル multi_phase.ins を自動生成します。multi_phase.ins を改名し、必要に応じて中身を編集してからリートベルト解析に移行します。ストリームエディター sed を活用した sda による逐次リートベルト解析の自動化も便利です。今回の実習では、BaSO4の粉末X線回折データのリートベルト解析における選択配向ベクトルの決定に応用します。

最後に訴求効果の高いデモンストレーションとして
  1. EXPO2014 を用いた直接法による cimetidine の構造モデル構築
  2. cif2pdf と E2J による CIF の LaTeX 文書化
  3. RIETAN-fP, PyAbstantia, VESTA の連係プレーによるリチウムイオン二次電池用正極材料(三元系: NMC)における Li+ イオンの拡散経路の可視化
を実演します。1の EXPO2014 の入手は登録が必要なので、実演に留めました。2と3を実習から外すのは TeX LiveMiniconda(python 3.6を使うのに最小限必要な環境)がかなり大きなディスクスペースを占有するためです。ただし後述のチュートリアルを参照すれば、TeX Live と Miniconda は容易にインストールできます。

参加者には Windows・macOS 用インストーラーも事前配付します。実習・実演の円滑な進行を図るとともに、その内容に遺漏がないように Windows・macOS 上での操作手順を逐一記述したチュートリアル(計132ページ)をインストーラーに同梱します。チュートリアル中には近年書きためてきたブログ・エントリーEvernote の公開ノートへのリンクを多数張ってあるため、豊富な付加的情報が手に入ります。後日、実習・実演内容を再現する際、強力な援軍となるでしょう。

なお、来春にファインセラミックスセンターで、来夏に東京工業大学で同様な無料講習会を催すという計画に変わりはありません。大学、研究機関、民間企業の別を問わず講義の依頼は随時受け付けておりますので、遠慮なく声を掛けてください。

おかげさまで本講習会は102名の参加登録者を集め、盛会のうちに終了しました。世話人としてご尽力頂いた佐藤幸生先生に厚く御礼申し上げます。
粉末構造解析ハンズオンの開催(京都大学)
3月21・22日に神戸大学で Mac ユーザーのための粉末構造解析講習会を開催しました。参加登録者は3月21日(講義)が90人、3月22日(実習)が37人でした。初日が望外の人気だった一方、Mac の使用は二日目の参加者を激減させてしまいました。一方通行の座学を通じて蓄えた知識はなかなか血肉化しないため、実習をスキップされた方々が大半だったのは残念でなりません。そこで9月28日に Windows 機を使用するハンズオンを京都大学・桂キャンパスで開催していただくことにしました。9:30〜18:00の長丁場ですが、年齢的、体力的には余裕綽々です。喉を痛めないよう適時、休憩を入れます。

詳しくは会告をご覧ください。会場の電気系大講義室は階段教室で見通しが良い上、適度に空席が入るよう定員を60名に抑えるため、快適に受講していただけるでしょう。世話人を快く引き受けていただいた宮崎晃平先生に深謝します。

実習だけの講習会は初の試みです。神戸大学での講習会の二日目に相当しますが、プレゼンテーションを若干増強することにより、講義を受けていなくても一連の粉末構造解析を体験できるよう工夫を凝らします。

参加者には Windows・macOS 用インストーラーを事前配付します。実習の円滑な進行を図るとともに,その内容に遺漏がないように Windows・macOS 上での操作手順を逐一記述した懇切丁寧なチュートリアルをインストーラーに同梱します。チュートリアルでは近年書きためてきたブログ・エントリーEvernote の公開ノートへのリンクが多数張られているため,貴重な付加的情報も入手可能です。チュートリアルは現時点で計106ページに達していますが、9月までに一層熟成させます。後日、実習内容を再現する際、強力な援軍になるでしょう。

2015年秋以来、独演の無料講習会(通常は講義を含む二日間コース)を各地で催しています。これまで龍谷大学岡山大学、前述の神戸大学で開催し、好評を博してきました。来春にはファインセラミックスセンター(名古屋)で、来秋には東京工業大学(大岡山キャンパス)で開く予定なので、東海3県や首都圏の方々にはそちらに参加するという選択肢もあります。

本講習会は参加申込者が定員を10数名超過したため、7月20日に参加登録を締切りました。
13 回目の恒例行事 at 神楽坂 (2017)
1996年以来ほぼ一年おきに催し、好評を博してきた粉末X線回折の講習会を今年も開講します。


 日本結晶学会講習会「粉末X線解析の実際」

日時: 2017 年 7 月 12 日(水)・ 13 日(木)・14 日(金)
会場: 東京理科大学 神楽坂キャンパス 1号館


同講習会の来歴については、ブログエントリー 「粉末X線回折講習会の歴史」をご参照ください。前回同様、私が独断でプログラムを編成しました。第一線で活動中の研究者に高度な内容を教授していただくとともに粉末X線回折の新潮流に対応するため、実績のあるベテラン研究者(虎谷秀穂、河野正規)と新進気鋭の若手(冨中悟史)に新規講師を依頼しました。

虎谷先生にはAコースで二つの講義を担当して頂きます。Aコース最後の講義では、リートベルト法を使わずに済む新定量分析技術を紹介されます。多相結晶質試料の定量は反応生成物や工業材料のキャラクタリゼーション、工程管理などに広く使われています。昨年末にお会いしたとき、リートベルト法に勝るとも劣らない分析結果が得られると胸を張っておられました。

河野先生(Cコース)は多孔性配位高分子 (金属有機構造体) の専門家です。近年、非対称単位内の原子数が多い配位高分子の結晶構造をシンクロトロン粉末X線回折により次々に決定されました。幾何学的パラメーターに抑制条件を課す構造精密化に長く RIETAN-FP を使って頂いているのは光栄です。原子数の多い有機化合物の未知構造を解くための手続きとノウハウを詳しく教えてくださるでしょう。

冨中先生がCコースで講義される二体分布関数 (Pair Distribution Function: PDF) の解析は将来有望な手法です。PDF 解析は短波長のシンクロトロンX線や Ag Kα 特性X線で測定した広い Q 範囲の強度データを解析することにより古典的構造精密化法であるリートベルト法を補完してくれます。詳しくは2016年10月21日のブログエントリー「第10回 結晶性萌芽材料 粉末回折研究会開催のお知らせ」と当該研究会のアブストラクトをお読みください。冨中先生が鋭意開発中の PDF 解析ソフトはいずれ無償配付される予定であり、RIETAN~FP の行列サイズ拡張版が組み込まれるため、個人的にもその登場を心待ちにしています。胸を張って自作プログラムについて語る講師が増え、しかも NIMS に所属しておられるというのは喜ばしい限りです。

私はBコースにおける午後の講義「RIETAN-FP と周辺プログラムとの連携」で RIETAN-FP が出力するファイルを通じた ALBA, superflip, EXPO2014, Dysnomia などとの連携について話します。リートベルト解析やパターン分解の枠を超えた高度な解析を通じて、粉末回折データからさらに構造情報を引き出せます。

よんどころない事情から井田 隆先生にはAコースからCコースに移って頂きました。粉末回折における新たなトレンドとしてベイズ推定による構造解析について解説されます。ベイズ推定については「構造解析におけるベイズ推定の応用」を参照してください。

「粉末X線回折講習会の歴史」に記したように、過去3回の本講習会では、A・Bコースで定員を上回る参加申込みがありました1)。A・Bコースの受講を希望する方は早めの参加登録をお奨めします。

本講習会は他に類を見ないほど多くの参加者を引き寄せてきましたが、来年以降も(主催者、名称、内容などを変えて)続くのか否かについては、見通しが立ちません。いずれにせよ、神楽坂キャンパスで開催するのは今回が最後となるでしょう。

1) 予想通り、A・Bコースの受講者は定員(180名)を超過した。
Mac ユーザーのための粉末構造解析講習会
2017年3月21日(火)・22日(水)に神戸大学で無料講習会「RIETAN-FP•VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」を開催することになりました。二日間にわたる出前講習会は龍谷大学岡山大学に続き3回目です。奮ってご参加ください。

拙作ソフトの実習に Mac を使うのはこれが初めてです。後述のように Windows ユーザーが講義だけでも聴講する意義があるよう配慮しました。

実習には Jedit X (+RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境), RIETAN-FP v2.84 (未公開), FOX, VESTA, gnuplot, ORFFE, lst2cif, refln, cif2ins, ALBA, superflip, EDMA, Dysnomia + MPF_multi などの無料プログラムたちを総動員します。ピークサーチ、指数づけ、バックグラウンドの評価に使うソフトは WinPLOTR から FOX に切り換えます。FOX にはベイズ推定によりバックグラウンドを見積もれるというメリットがあります。得られた離散バックグラウンド強度を含む XML ファイル hoge.xml を RIETAN-FP で直接読み込み、hoge.bkg を自動的に作成できるようにしました。

さらに、最近開発した未公開ユーティリティー
  • 多相リートベルト解析用入力ファイル自動作成マクロ combins
  • 正規表現置換エンジン(sed, perl, ruby など)を駆使する逐次リートベルト解析マクロ sda
をお披露目し、両者の秀逸なパフォーマンスを実感していただきます。いずれも RIETAN-FP を日常的に利用している現場で絶大な威力を発揮し、解析に要する労力と時間を大幅に減らすと確信しています。

参加者には講義に使う全スライド (PDF ファイル)、インストーラー、チュートーリアルを事前に配付します。チュートーリアルは macOS 用に一部を書き直します。本講習会では参加者数を度外視していますが、圧倒的多数派である Windows ユーザーのために Windows 用のインストーラーとチュートーリアルのアーカイブファイルも講習会終了後に配付し、波及効果の最大化を図ります。さらに、Mac を持ち合わせていないため初日の講義だけ聴講するという方にも Windows 用アーカイブファイルを差し上げます。

macOS・Windows 用チュートーリアルは計98ページの力作です。懇切丁寧に書かれた LaTeX 文書であり、これらを参照するだけで実習内容を自習できます。実習以外の有用な情報についても多数言及しています。

参考までに RIETAN に関する論文二報の被引用数の年次変化を下図に示します。「RIETAN vs. Z-Rietveld」中のグラフと多少異なっているのは、Web of ScienceScopus を文献収集能力で凌駕している Google Scholar で調べたためです。日本発の研究成果が徐々にシュリンクしていく中で、全体として増加傾向にあるのは驚きです。RIETAN-FP や周辺ソフトが未だに進化の歩みを止めていないのが功を奏しているのでしょう。


(事後報告)参加登録者は3月21日が90人、3月22日が37人でした。Mac ユーザーが少数派であることを思い知らされましたが、講義聴講者が望外に多かったことに救われました。

(C) 2018 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.