お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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Mac ユーザーのための粉末構造解析講習会
2017年3月21日(火)・22日(水)に神戸大学で無料講習会「RIETAN-FP•VENUSシステムと外部プログラムによる粉末構造解析」を開催することになりました。二日間にわたる出前講習会は龍谷大学岡山大学に続き3回目です。奮ってご参加ください。

拙作ソフトの実習に Mac を使うのはこれが初めてです。後述のように Windows ユーザーが講義だけでも聴講する意義があるよう配慮しました。

実習には Jedit X (+RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境), RIETAN-FP v2.84(未公開), FOX, VESTA, gnuplot, ORFFE, lst2cif, refln, cif2ins, ALBA, superflip, EDMA, Dysnomia + MPF_multi などの無料プログラムたちを総動員します。ピークサーチ、指数づけ、バックグラウンドの評価に使うソフトは WinPLOTR から FOX に切り換えます。FOX にはベイズ推定によりバックグラウンドを見積もれるというメリットがあります。得られた離散バックグラウンド強度を含む XML ファイル hoge.xml を RIETAN-FP で直接読み込み、hoge.bkg を自動的に作成できるようにしました。

さらに、最近開発した未公開ユーティリティー
  • 多相リートベルト解析用入力ファイル自動作成マクロ combins
  • 正規表現置換エンジン(sed, perl, ruby など)を駆使する逐次リートベルト解析マクロ sda
をお披露目し、両者の秀逸なパフォーマンスを実感していただきます。いずれも RIETAN-FP を日常的に利用している現場で絶大な威力を発揮し、解析に要する労力と時間を大幅に減らすと確信しています。

参加者には講義に使う全スライド(PDF ファイル)、インストーラー、チュートーリアルを事前に配付します。チュートーリアルは macOS 用に一部を書き直します。本講習会では参加者数を度外視していますが、圧倒的多数派である Windows ユーザーのために Windows 用のインストーラーとチュートーリアルのアーカイブファイルも講習会終了後に配付し、波及効果の最大化を図ります。さらに、Mac を持ち合わせていないため初日の講義だけ聴講するという方にも Windows 用アーカイブファイルを差し上げます。

macOS・Windows用チュートーリアルは計98ページの力作です。懇切丁寧に書かれた LaTeX 文書であり、これらを参照するだけで実習内容を自習できます。実習以外の有用な情報についても多数言及しています。

参考までに RIETAN に関する論文二報の被引用数の年次変化を下図に示します。「RIETAN vs. Z-Rietveld」中のグラフと多少異なっているのは、Web of ScienceScopus を文献収集能力で凌駕している Google Scholar で調べたためです。日本発の研究成果が徐々にシュリンクしていく中で、全体として増加傾向にあるのは驚きです。RIETAN-FP や周辺ソフトが未だに進化の歩みを止めていないのが功を奏しているのでしょう。

第10回 結晶性萌芽材料 粉末回折研究会開催のお知らせ
名古屋工業大学の福田功一郎先生のご尽力により、毎年恒例の粉末回折研究会(一般公開)を開催します。

第10回 結晶性萌芽材料 粉末回折研究会
日時: 2016年12月2日(金)15:00〜18:00
開催場所: 名古屋工業大学(御器所キャンパス)2号館

プログラム
15:00〜15:30 泉 富士夫「粉末構造解析結果のドキュメンテーション」
15:30〜17:00 冨中悟史「PDF を用いたナノ材料の未知構造解析手法」
17:00〜18:00 質疑応答および懇談会                

私の話は岡山大学での講演「英文執筆とテキストデータ処理 ― 私の流儀」の後半部分を焼き直したものに過ぎず、メインイベントは冨中氏の講演です。詳しくはアブストラクトをお読みください。十分広い教室で開催するため、事前の参加登録は必要ありません。聴講は無料です。

二体分布関数 (Pair Distribution Function: PDF) の解析は、古くから無定形物質や液体などの構造解析に利用されてきました。PDF 解析は周期的構造からの「ずれ」を把握するためにブラッグ反射と散漫散乱成分の両方を解析することから、全散乱 (total scattering) 法とも呼ばれています。近年、放射光源やパルス中性子源で高強度ビームが使えるようになった結果、PDF 解析は結晶質材料にも広く適用されつつあります。PDF 解析は古典的構造精密化法であるリートベルト法を補完する役割を担えます。コンベンショナルな解析技術で得られた平均構造だけでは物性や化学的性質を理解し難い物質・材料への応用が期待できます。

冨中氏は既成ソフトに対する不満点を解消するため独自の PDF 解析プログラムを鋭意製作中であり、完成の暁には無償でネット配付するそうです。名前はまだありません。X線リートベルト解析エンジンとして RIETAN-FP を組み込みます。

長年にわたり膨大な数の研究成果に貢献してきた RIETAN、論文の被引用数/年が1000の大台に迫る勢いの VESTA に続く NIMS 発の著名ソフトウェア第3弾にまで成長することを願い、私はこの PDF 解析プログラムのプロモーションに全面協力しています。それが希少価値と波及効果を兼ね備えていると直感したためです。陳腐化・コモディティ化したリートベルト法にだけしがみついている時代は過ぎ去りました。本研究会を皮切りに、今後、講演会や講習会などを通じて宣伝・教育することにより知名度を高め、普及に努めていきます。ご期待ください。

上記研究会に来訪していただいたお客様を手ぶらで帰すわけには行きません。出し惜しみをしないところが私の美点なので、正体不明「謎のプレゼント」を差し上げます。RIETAN-FP・VENUS システムの徹底活用に直接役立つものとだけ申し上げておきます。
岡山大学での講習会と講演会(まとめ)
「泉 富士夫の粉末回折情報館」の新着情報に掲示した岡山大学での講習会・講演会(2016年7月11〜13日)に関する会告と開催報告に加え、同大学の関連 Web ページへのリンクを合体したのが本エントリーである。

1. 2016年6月3日(金)講習・講演会(岡山大学)のお知らせ

2016年7月11日(月)・12日(火)に岡山大学工学部

「RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」講習会
ポスター | 要旨

を開催することが決まりました。日本中の学生、研究者、技術者の(再)教育を目指しているため、学外の方でも参加登録さえしていただければ受講できます。

11日はリートベルト法、パターン分解、構造モデルの構築、最大エントロピー法 (MEM) などの粉末回折データ解析技術について初心者向きに講義し、12日を実習に当てます。Windows 上での実習には秀丸エディタ (+統合支援環境), RIETAN-FP v2.82, VESTA v3.3.8, gnuplot v5.0.3, WinPLOTR, DICVOL, ORFFE, lst2cif, cif2ins, ALBA, superflip, EDMA, FOX, Dysnomia + MPF_multi などの無料プログラムを使います。昨年10月に龍谷大学で開催した「RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」で使用した無料プログラム群の一部を更新し FOX を追加したものに相当し、特製インストーラーにより C:¥Program Files フォルダーに一挙にインストールできます。このインストーラーは後日、自分の Windows PC でもお使い頂けます。

講義には百数十枚のスライドを使いますが、カラー印刷の経費と手間をカットするため、参加者にはその PDF ファイルを配付します。実習では上に列挙したプログラムをインストールした後、次から次へと実行していくため、メモをとり続けるのは大変です。そこで実習時の操作を箇条書き形式で逐一記述した LaTeX 文書を参加者に配付し、後で各自が実習内容を再現できるよう配慮します。これほど出し惜しみしない講習会は希でしょう。

7月13日(水)には理工系の方々を対象に

「英文執筆とテキストデータ処理 ― 私の流儀」

と題して講演します。前半は長く英語論文の添削に従事してきた経験に基づいてまとめた理工学一般で通用するチュートリアル「科学英語論文執筆の手引き」を眺めながら、キーポイントを解説していきます。後半はテキストファイルを sed や awk などの UNIX ツールや gnuplot や LaTeX などのフリーソフトウェアにより CUI (Character User Interface) を通じて処理することの重要性と効率の高さを説きます。余興として裏技 mcz を披露した後、RIETAN-FP の解析結果から CIF (Crystallographic Information File) 、グラフ、結晶模型、電子密度分布図などを作成し、それらを LaTeX で PDF ファイルとして統合し、さらには和訳するという一連の手続きを実演します。すべて自前のソフトで作成したデータだということを誇りに思います。

参加者には「科学英語論文執筆の手引き」、プレゼンテーション用 PDF ファイル、謎の超弩級プレゼント(希望者限定)を差し上げます。講習・講演会のいずれも参加登録費は無料です。個人的社会貢献として催すため、講義・講演料もゼロ円とするよう大学にお願いしました。

三日連続で人前に立つのはかなりきついですが、体調を崩さぬよう気をつけます。盛会となれば馬力が一段と上がりますので、奮ってご参加ください。

2. 2016年7月16日(土)全力講習会・講演会の開催報告

岡山大学工学部で7月11・12日に開催した「RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析」講習会と翌日の講演会は延べ90名以上の参加者を集め、盛会裏に終わりました。学外の受講者がかなり多かったのが特徴です。中国四国・近畿・中部・関東・東北の各地方はもとより、なんと外国在住の方までおられ、明らかにローカルな催しからの脱却を果たしていました。当初会場に予定していた教室では受講者を収容し切れなくなったため、より広い教室に変更したにもかかわらず、そこもほぼ満杯という望外の人気を博しました。

12日の実習は昼食抜きの過酷なデスマッチとなりました。多少のトラブルこそ勃発したものの、渾身の力を振り絞った実地指導と LaTeX で箇条書きにした手順書は好評だったようです。翌13日の「英文執筆とテキストデータ処理 ― 私の流儀」講習会は、力余って予定時間(1時間半)を60分近く超過してしまいました。やや冗長な上、脱線気味だったことを反省しています。

再配布禁止条件の下で参加者だけに差し上げる「謎の超弩級プレゼント」とは、RIETAN-FP_manual.pdf をタイプセットするのに必要な全ファイル(*.tex, *.bib, my.bst, *.pdf)のアーカイブファイル(56.7 MB)に他なりません。私はもう先が短いです。これらを死蔵したままこの世を去るよりは、多数の図、表、数式、文献を含む巨大文書の高品質・高速組版技術の公開を通じて社会に貢献すべきだという心境を抱くに至りました。

事前の予想を大幅に超す参加登録者数に励まされつつ体力の限界に挑み、三日間のワンマンショー(+懇親会)を無事乗り切りました。献身的に支援して頂いた教職員の方々と受講者の皆様に厚く御礼申し上げます。今回の成功に意を強くしましたので、来年度も実習主体、参加費無料、無報酬の講習会を中部地方以西で開催するつもりです。ご期待ください。

3. 2016年8月19日(金)岡山大学の関連 Web ページ(新着ニュース)

共同利用機器利用講習会「RIETAN-FP・VENUSシステムと外部プログラムによる粉末構造解析」を開催
RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムの講習会
8月に名工大付属図書館で催したシンクロトロン光利用者研究会(第3回 XRD グループ)での実習が好評だったことに意を強くし、ほぼ同様の実習を含む講習会を関西圏の大学でも出前開催したくなりました。そこで、拙作ソフトのユーザーに相談し、協力をお願いしておりましたが、このほどプログラム、日時、場所が確定しました:

RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析
日時: 2015年10月27・28日
場所: 龍谷大学 瀬田キャンパス 3号館
参加費: 無料

初日は座学だけですが、二日目は Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境秀丸エディタ用マクロの集合体)上で WinPLOTR, DICVOL, RIETAN-FP, cif2ins, ALBA, Superflip, EDMA, Dysnomia, gnuplot, Ghostscript, VESTA などによる実測強度データの処理(ピークサーチ、指数づけと格子定数の精密化、バックグラウンドの見積もり)、リートベルト解析、hoge.cif → hoge.ins 変換、ハイブリッド・パターン分解、最大エントロピー・パターソン解析、チャージフリッピング、電子密度ピークへの原子の割り付け、MEM 解析、解析結果のグラフ化、結晶構造と電子密度の三次元可視化というコンテンツ過多気味の実習を行います。RIETAN-FP は近日中に公開予定の v2.7 を使用します。

これほど多くのプログラムを次から次へと実行していくとなると、何も後に残らないのではないかと危惧する向きが多いでしょう。心配無用です。詳細を好評するのは避けますが、後で各自復習できるよう意表を突いた工夫を凝らしてあります。さらに、無味乾燥な内容とならぬよう適度なエンターテインメント性も導入します。時間が余ったら科学英語論文執筆について一席ぶちます

A〜Z ドライブに対応可能なインストーラーによる上記ソフトウェアのインストールから始める予定です。名工大では秀丸エディタを Z ドライブにしかインストールできなかったので、インストーラーの製作に四苦八苦しましたが、龍谷大の教育用端末の場合、秀丸エディタが C ドライブにインストール済みのため、楽なものです。秀丸エディタは大学の PC にインストールして教育目的で使う場合、無償となります。この太っ腹な制度を活用しない手はありません。

実習用インストーラーばかりでなく、プレゼンテーションに使う PDF ファイルと科学英語論文執筆に関する文書まで配付するという型破りな講習会です。後者には、かつて中性子回折に関する数多くの論文を添削しまくった経験が活かされています。製本していない紙の束を手渡してゴミ箱に直行させるのは気が進みませんので、あえて全ファイルの提供(再配布禁止)にまで踏み込みます。印刷経費がかからないのも好ましいです。

本講習会は名工大をスポンサーとする社会教育活動の一環として開催します。拙作ソフトウェアの教育と普及にご賛同いただいた名工大と会場を提供していただく龍谷大に感謝します。
PANalytical 粉末X線回折セミナーでの特別講演
昨年から特別顧問を務めているスペクトリス株式会社 PANalytical 事業部主催のセミナーで RIETAN-FP に関する特別講演を2回行うよう依頼されました:

PANalytical 粉末X線回折セミナー

2015年5月22日(金): WTC コンファレンスセンター(東京、浜松町)
2015年5月26日(火): 千里ライフサイエンスセンター(大阪、千里中央)

泉 富士夫「外部プログラムとの連携を補強した RIETAN-FP v2.6」


これは第7回結晶性萌芽材料 粉末回折研究会(昨年12月15日)とシンクロトロン光利用者研究会(3月5日)での講演を合体し洗練させたものに他なりません。すなわち、昨年暮れにリリースした RIETAN-FP v2.5 と近日中に公開する v2.6(注: 4月21日にリリース)に盛り込んだ機能について語ります。昨年秋以降に猛スピードで開発した新バージョンに焦点を絞るという意表を突いた内容には、参加者も度肝を抜かれることでしょう。短時日の内によくぞここまで前進したものだと自画自賛しています。主として名工大の学生を相手に最新成果を披露する機会に恵まれたことが、日々の苦役に疲弊した自分の背中を押してくれました。

講演タイトル中の「外部プログラム」は ALBA, EXPO, superflip, EDMA, Dysnomia, gnuplot を指しています。ALBA を用いて最大エントロピー・パターソン (MEP) 法で重畳反射の積分強度を改良すれば、EXPO や superflip による構造モデルの構築が容易になることが期待できます。EXPO については昨年の PANalytical セミナーで言及したので、今年は主に superflip によるチャージ・フリッピング解析の例と勘所を示します。RIETAN-FP は superflip の入力ファイル hoge.inflip を出力してくれるので、ハイブリッド・パターン分解 (+MEP 解析) を実行し、必要に応じて hoge.inflip を修正した後、すみやかにチャージ・フリッピングへと移行できます。

v2.6の目玉である gnuplot を活用した結晶子サイズとミクロ歪みの評価は Bragg–Brentano 型粉末X線回折装置の利用価値を高めるテクニックなので、PANalytical 主催のセミナーにうってつけのトピックスです。PDF ファイルに出力した Williamson–Hall・Halder–Wagner プロットの表示を通じ視覚に強く訴える上、異方的ブロードニングも一目で認識できます。リートベルト・Le Bail 解析で精密化したプロファイル・パラメーターは互いに相関が強いので、それらから結晶子サイズとミクロ歪みを求めるのは原理的に不健全だとみなしています。

粉末X線回折による微細構造のキャラクタリゼーションは種々の多結晶材料にもっと広く応用されて然るべきではないでしょうか。種々の材料の物性や化学的性質を理解しようとする際、結晶構造ばかりに注目するのは片手落ちです。特筆大書したいのが Williamson–Hall と Halder–Wagner プロットに関する充実したドキュメンテーション(RIETAN-FP_manual.pdf, Chap. 13)の提供です。名工大 先進セラミックス研究センター年報の原稿に加筆したものですが、今後これらの解析に取り組もうと意気込んでいる人達から、明快で平易な解説として大歓迎されるに違いありません。さらに、上記機能と関連して「Williamson–Hall と Halder–Wagner プロットを好みに応じて変更する方法」と題するエントリー(4月25日)をブログに投稿しましたので、興味のある方はお読みください。

この他、福田功一郎先生の特別講演「X線粉末回折法によるセラミックス材料の解析 ― 未知構造解析から結晶相の定量分析まで ―」や弊社スタッフによる粉末X線関連製品の紹介も含む盛り沢山な内容となっております。粉末X線回折に関する見聞を広めるのには格好の催しです。

福田先生はチャージ・フリッピングによる構造モデル構築についてお話になります。その際に RIETAN-FP v2.5 による hoge.inflip の自動作成が直接役立つはずです。今やチャージ・フリッピングは全盛時代を迎えつつありますが、X線回折専用という点が MEM/MPF による電子密度解析と共通しています。定評と実績のある無料ソフトウェア群 (superflip, RIETAN-FP, Dysnomia, MPF_multi, VESTA) が完備した今、Empyrean のような市販の粉末X線回折装置さえあれば存分に駆使できる秀逸な技法が金食い虫の中性子回折を蚊帳の外に追いやっているのは、なんと痛快かつ皮肉な現実ではありませんか。

今回は、昼食時に講師に質問するという異例の企画を立てました。また、参加者には Windows 版 RIETAN-FP・VENUS システム用のユーティリティー make_commands.bat を差し上げます。RIETAN-FP の入力ファイル(たとえば hoge.ins)を make_commands.bat にドラッグ&ドロップすれば、8つのバッチファイル(RIETAN.bat, Plot.bat, ORFFE.bat, lst2cif.bat, Superflip.bat, EDMA.bat, MSCS.bat, B2beta.bat)をサブフォルダーに生成してくれます。大所帯の組織で珍重されること、請け合いです。
「粉末X線解析の実際」講習会 2015
一年おきに催してきた伝統と実績のある講習会を今年の夏も開講します:

日本結晶学会講習会「粉末X線解析の実際」

日時:2015年7月13(月)、14(火)、15日(水)
場所: 東京理科大学(神楽坂キャンパス)1号館

企画・プロモーション担当の私が主にプログラムを編成しましたが、諸般の事情から苦心惨憺しました。昨年末から鋭意交渉を重ねた結果、最終的に6名の新講師を迎えることになりました。A・B・C コースに新風が吹き込むのは、リピーターの方々に歓迎されるでしょう。ほぼ同じ内容の講義を再度受講するのでは、ありがたみが薄れますから。

私自身は心ならずも2コマの講義(B コース)を担当せざるを得ませんでした。世代交代の流れに逆らう形となったのは残念ですが、RIETAN-FP の実績と知名度が本講習会の集客を牽引している以上、老骨に鞭打つしかありません。RIETAN-FP については、後継人材の欠如を悟った2010年頃から新機能を次々に投入してきました(「RIETAN-2000 と RIETAN-FP」参照)。それらの内、
  1. Gnuplot による解析パターンの作図(「RIETAN-FP への gnuplot の導入」参照)
  2. 外部プログラムとの連携の強化(「RIETAN-FP v2.5 のお披露目セレモニー」参照)
  3. Williamson–Hall & Halder–Wagner プロットによる結晶子サイズ D とミクロ歪み ε(格子面間隔の変動 Δd/d)の評価(2015年2月2日の新着情報参照)
を講義内容に反映させます。最近習い覚えた LaTeXiTInkscape の連係プレーを駆使し、多くのスライドを更新・追加するつもりです。

Dε の決定機能は通常の粉末X線回折装置でフルに活用でき、装置に由来するブロードニングを自動的に差し引くという利便性を備えている上、gnuplot によるグラフ化を通じ視覚に訴求することから、RIETAN-FP の利用価値を一層高め、多大な波及効果をもたらすと確信しています。二次電池の正極材料、固体酸化物燃料電池、水素吸蔵合金などの微細構造(microstructure)のキャラクタリゼーションに有効であり、大きな表面の発生や固溶体における組成変動の研究にも役立ちます。機能3を実装した RIETAN-FP V2.6 は是が非でも4月中に公開します。

「粉末X線回折講習会の歴史」に詳述した通り、本講習会は19年前にスタートし、今回が12回目にあたります。当初は RIETAN によるリートベルト法を初心者向きに教授し、広く普及させることを目指していたため、開発者の私は3コマもの講義を受け持ちました。「粉末X線解析の実際」初版の上梓(2002年)を境に肥大成長を重ねた末、未知構造解析や MEM・MPF 解析を含む現在の形に落ち着きました。この間、主催はX線分析研究懇談会から日本結晶学会に変わりました。1996年以来、本講習会で粉末回折を学んだ方々は夥しい数に上り、リートベルト解析のユーザーの裾野を広げるのに多大な貢献を果たしました。初版と同様にロングセラーとなっている「粉末X線解析の実際」第2版ともども、我が国における粉末回折の教育と利用促進の重責を担っているといって過言でありません。

RIETAN-FP で得た成果を報告する論文が約200報/年という定常状態を10年近く維持しているという快挙(「RIETAN vs. Z-Rietveld」参照)は、自作ソフトの無償配付、ネットを通じた宣伝、講習会や講演会の開催といった地道な活動の賜です。

粉末構造解析には多種多様な知識や細々としたノウハウが必要不可欠です。周囲に粉末構造解析のエキスパートが見当たらず途方に暮れている学生や上司に解析を丸投げされている技術者には、とくに受講を推奨します。再度聴講した場合でも、その都度、複数の講師から有用な情報が新たに得られるでしょう。また夕刻から始まる Q&A では、かねてから知りたいと思っていることを講師から教えてもらえます。私は三日を通じて Q&A を担当します。

2011年以降、本講習会の人気は一層高まっており、定員にこだわらず、座席に余地がある限り参加者を受け入れてきました。結果として A・B コースの受講者は約200名に達し、2013年には上級の C コースまで定員(160名)を軽く越えてしまいました。今回は有名無実化していた定員を180名に増やし、実態に近づけました。さらに、参加者に配付する講演スライド集の体裁を改善するとともに参加費の大半を値下げし、サービスの向上と経済的負担の軽減を図ります。

参加登録は3月13日(金)から受付けます。奮ってご参加ください。

【事後報告】2015年7月13〜15日の講習会は最終的に201名(Aコース)、214名(Bコース)、172名(Cコース)の参加者を集めました。延べ参加者数587名は本講習会始まって以来の最高記録です。厳密には当日、若干のキャンセルが出たでしょうが、本講習会始まって以来の大盛会だったことに変わりはありません。
Nanotech CUPAL の発足
文部科学省・科学技術人材育成費補助事業「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業」の次世代研究者育成プログラムの一つとして「ナノテク キャリアアップ アライアンス」(Nanotech Career-up Alliance: Nanotech CUPAL)が選定されました。この事業は「つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点(TIA-nano)」「ナノテクノロジーハブ拠点」を活用し、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構、高エネルギー加速器研究機構、京都大学のスタッフやゲスト研究者がイノベーションの創出に資するものづくりを担う人材 Nanotech Innovation Professional (NIP) の育成を目指します。物質・材料研究機構は Nanotech CUPAL に共同実施機関として参加しています。

Nanotech CUPAL の活動の一環として、物質・材料研究機構は2015年3月以降「先端計測技術入門コース」を年4回程度催すことになりました。私はゲスト講師とともに構造解析コース(粉末X線・中性子回折)の講義と実習を二日間担当します。実習には RIETAN-FP・VENUS システムを用います。今後、「先端計測技術入門コース」が開催されるたびに粉末回折情報館に会告を掲示いたします。

Nanotech CUPAL コンソーシアムの構成機関、すなわち
  • 産業技術総合研究所(代表機関)
  • 物質・材料研究機構
  • 高エネルギー加速器研究機構
  • 筑波大学
  • 京都大学
  • 北海道大学
  • 東京大学
  • 東京工業大学
  • 東京理科大学
  • 早稲田大学
  • 京都工芸繊維大学
  • 大阪大学
  • 神戸大学
  • 立命館大学
  • 同志社大学
に所属する
  • 博士号取得後10年以内または同等程度の研究経歴をもつ若手研究者
  • 博士課程(後期)学生
  • 大学・研究機関の研究支援人材
無料で受講できる上、旅費も支給されます。該当者はぜひご参加ください。学部・修士課程学生、Nanotech CUPAL に加わっていない組織の研究者と学生、民間企業の社員の受講(有料)も歓迎します。受講者には入門コースの修了証が渡されます。
RIETAN-FP v2.5 のお披露目セレモニー
12月15日(月)に名古屋工業大学(御器所地区)で開催される第7回結晶性萌芽材料 粉末回折研究会において

「外部プログラムとの連携を強化した RIETAN-FP」

というタイトルで、今年8回目の講演を行います。ふるってご参加ください。

昨年12月6日の同研究会では、RIETAN-FP v2.3に実装した gnuplot によるグラフ作成機能の全貌を紹介しました。リリース寸前の改訂版について二年連続で語り、年齢不相応な活力がみなぎっている様子を示せることを誇りに思います。

新バージョン v2.5 として結実させたアイデア、すなわち外部プログラム用入力ファイルの生成による能率向上は v2.3 の延長線上にあります。Gnuplot 用スクリプトファイル hoge.plt 相当のものをゼロから書き上げ、試行錯誤でテストし、正常に動作させるのには相当な経験と時間を要します。他方、RIETAN-FP が出力した hoge.plt の一部をユーザーがエディターで修正し、所望のグラフをプロットするのはいとも簡単です。GUI の必要性などまったく感じません。外部プログラムを使う際のユーザーの負担を劇的に軽減してくれるのは堪えられないでしょう。

v2.5では四つのアプリケーション、
  1. チャージフリッピング・プログラム superflip
  2. 最大エントロピー・パターソン(MEP)法プログラム ALBA
  3. 未知構造解析統合システム EXPO2014
  4. 最大エントロピー法(MEM)プログラム Dysnomia
の入力ファイルの雛形を RIETAN-FP が出力してくれるようになり、RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境の利便性が向上しました。RIETAN-FP の入力ファイル hoge.ins 中でのフラッグ設定、出力ファイル名、アプリケーションの対応は次の通りです。
  1. NCF = 1: superflip 用ファイル hoge.inflip(RIETAN-FP 終了後にエディターで自動オープン。中性子回折では superflip は使えない)
  2. MEP = 1: ALBA 用ファイル hoge.alb(一種の作業ファイルであり、表に出ない)
  3. NEXP = 1: EXPO2014用ファイル hoge.exp
  4. NMEM = 1: Dysnomia 用ファイル hoge.prf(RIETAN-FP 終了後にエディターで自動オープン)
hoge.inflip の末尾には回折指数 hkl、半値全幅、積分強度 |F|2 のリストが含まれています。今のところ hoge.alb は ALBA 用ですが、将来 Dysnomia に MEP 解析機能を追加した暁には、それに対応させる予定です。hoge.prf は Limited-memory BFGS (L-BFGS) アルゴリズムで MEM の厳密解を導出できるよう改良した Dysnomia の最新版 v0.8 互換となっています。hoge.prf がカレントフォルダーに存在する場合、RIETAN-FP はそれを上書きしないということに注意してください。

誰でも無料で使える Dysnomia v0.8 の出現により、情報エントロピー最大の解を導き出せない 0th-order single-pixel approximation (ZSPA) は時代遅れのガラパゴス方法論に成り果てました。ZSPA しか使えないようなプログラムの存在意義は、今や無きに等しいです。

上記4つの外部プログラムはいずれも無料で入手できるということを特筆大書したいです(EXPO2014はアカデミックユーザーのみ無償)。教育者のはしくれでもある私は、対価を求めずにネット上で公開されていることを科学技術ソフトウェアにおける基本的に重要な「機能」と見なしています。「富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる」という不条理を座視するには忍びません。私は常に弱者や貧乏人の味方です。

hoge.inflip と hoge.exp は未知構造解析のエキスパートにアドバイスを要請して、最終的な仕様を決定しました。長く superflip と EXPO を使い込むことにより獲得したスキルを惜しげもなく注入していただいたため、それぞれ dual-space 法と逆・直接空間法による構造モデル構築に威力を発揮します。RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境上でコメント・プリフィクス(superflip: #, EXPO: >)を削除し、特定の行をコメント化してから、それぞれのプログラムを実行します。

RIETAN-FP 実行用スクリプト(Windows: RIETAN-FP.bat; OS X: rietan.command)の改造にあたっては、MPF (MEM-based Pattern Fitting) 解析や gnuplot によるグラフ作成用のスクリプト(Windows: Plot_Hidemaru.bat; OS X: graph.command)を製作した時に習得したシェル芸を披瀝しました。実際には MEP 解析は RIETAN-FP が出力した hoge.alb を通じて ALBA が実行するのですが、grep, sed, tail, cut, bc などの駆使により、あたかも RIETAN-FP が単独で実行するかの如く巧みに偽装しています。アクロバティックな離れ業といって過言でありません。これら4つのスクリプトは私の個人的趣味の発露であり、複数のコマンドを組み合わせて複雑なデータ処理を行う UNIX の流儀を具現化する喜びがほとばしっています。

NMEM = 1の場合、さらに MPF 用シェルスクリプト MPF_multi.command までカレントフォルダーに自動生成し、ユーザーの手間を減らします。RIETAN-FP が出力した hoge.prf を必要に応じて変更した後 MPF_multi.command のアイコンをダブルクリックするだけで、hoge.prf 中の指示に従った MPF 解析がスタートします。

私の知る限り、MEP 法で重畳反射の積分強度 |F|2 を改善できるパターンフィッティング・プログラムの出現は世界で初めてです。三つの異なる解析、すなわち Le Bail 解析、個別プロファイルフィッティング、MEP 解析を順次かつシームレスに実行するスクリプトで求めた |F|2 は、RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境上で hoge.inflip と hoge.exp を 修正後にショートカットを押すかボタンをクリックすれば、それぞれ superflip と EXPO2014 で解析できます。

|F|2を記録したファイルは2種類あります。MEP 抜きのパターン分解後に出力されるファイルは hoge.ffo、MEP 解析の結果を収めたファイルは hoge.mep です。hoge.exp 中では ref2 命令の後ろにどちらかのファイル名が記録されます。前述のように、hoge.inflip は hoge.ffo と hoge.mep の中身と同等の反射データを内包しています。

なお、v2.5では a, b, c 軸方向に沿った単位胞の分割数に入力を一箇所に絞りました。たとえば Fapatite.ins 中では
If NMODE = 1 then
    Go to *Graph
else if NMODE <> 6 then
    # Unless MEP analysis, Fourier synthesis, or MEM analysis is carried out,
    # set NVOXA, NVOXB, and NVOXC at 0; then, these three are regarded as dummy data.
    NVOXA = 128: Number of voxels along the a axis.
    NVOXB = 128: Number of voxels along the b axis.
    NVOXC =   94: Number of voxels along the c axis.
end if
となっています。最適な分割数は VESTA の Utilities メニューで Model Electron Densities を選び、適当な Resolution を入力すれば、テキストエリアの上方に表示されます。

上記の機能を実現する上で、RIETAN-FP v2.4開発以来好んで使用している内部サブルーチンが大いに役立ちました。新たなサブルーチンを書く際、引数や COMMON 領域を宣言せずにメインプログラムから変数や配列を引き渡せるためです。BASIC 感覚の手軽なプログラミングを楽しみました。また時代遅れな COMMON 領域の追加は控え、モジュールを利用するよう心がけました。

RIETAN-FP v2.4X では、格子定数を精密化している内に、各反射の積分強度を収めた配列 YPEAK と指数 hkl などの配列の対応関係が一部狂うことがまれにありました。重み付き残差二乗和がこれまでに到達した最小値よりも大きくなった場合に、反射の順序を 2θ の小さい順に記録した配列 IPOINT を回復させていなかったのが原因でした。v2.5では、そういう症状が消え失せたはずです。この盲点が白日の下にさらされたのは、孤独なプログラミングを甘受している自分にとって誠に幸運でした。

Windows 用配付ファイルに同梱しているグラフ作成用プログラムについては gnuplot を v4.6.6 に、Ghostscript を v9.15 に更新します。OS X のユーザーは、各自 gnuplot と MacTeX(オプション)の最新版をインストールしてください。Homebrew による gnuplot のインストール法については、「RIETAN-FP への gnuplot の導入」に記しました。

最後に特筆大書しておきたいのは、RIETAN-FP v2.5は RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境から実行することを前提に開発したということです。秀丸エディタJedit X はいずれも安価ですし、種々のテキストファイルの編集に使えますので、ぜひ支援環境をお使いください。

国立大学の社会的使命を鑑み、学外者にも解放した無料講演会としますので、RIETAN-FP のユーザーはぜひご聴講ください。学外の参加者はポスター下の問合せ先にメールをお送りください。なお、参加者には RIETAN-FP v2.5 を含む Windows・OS X 用 RIETAN-FP・VENUS システム配布ファイルを一般公開に先がけて差し上げます。前回の研究会後に組み込んだ裏技 mcz についても、ほんの少しだけ言及します。遊び心の産物なので、ここではその正体を謎のままに留めておきます。

なお、研究会終了後に立食形式の懇談会(有料、学生割引あり)を開くことになりました。もちろん所属が名工大以外の方々も参加できます。

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