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HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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「粉末X線解析の実際」第2版の訂正情報
このほど「粉末X線解析の実際」第2版(朝倉書店)中に数カ所のミスが見つかったので、ここに訂正を掲示し注意を喚起したい。

口絵3と口絵4のキャプションが入れ替わっている。

p. 29、式(2.7)は次のように訂正する:



表14.2 (p. 255) と 表14.3 (p. 256) における Cu Kα1 の波長に関する論文の著者は

G. Hölzer, M. Fritsch, M. Deutsch, J. Härtwig, and E. Förster

が正しい。

第2刷以降の表14.2と表14.3において、NIST の角度標準 Si 試料の名前と標準格子定数の記述が誤っていた。そこでこの際、両表中の標準試料を現在販売中の NIST SRM 640e に更新することにした。22.5 ℃ における NIST SRM 640e の標準格子定数は

5.431 196 Å ± 0.000 08 Å

である。

編著者の一人として、読者の方々にお詫びする。
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格子面と反射の表記法について
(hkl) と hkl とが区別できないのは結晶学のド素人の証拠と4月17日4月18日につぶやいたが、別に特定の研究グループをダメ出しし、揶揄したかったわけではない。粉末回折パターンを図示している論文のうち数割がそのような未熟なミスを犯しているのを目の当たりにしてきたので、論文の執筆者、レフェリー、編集者の注意を喚起し、少しでもそういう無様な論文を減らすのに貢献したいと願ったまでのことだ。

「粉末X線解析の実際」第2版(朝倉書店)では2箇所で両者の違いを次のように説明している:
1章、p. 4(中井 泉): X線の回折は格子面からのX線の反射とみなせるが、特定の反射を表すときは、対応する格子面のミラー指数から ( ) を取り去った回折指数 hkl を用いる。
11章、p. 186(泉 富士夫): ブラッグ反射の指数(回折指数)あるいは逆格子点については、111, 101, 200 というように指数 hkl をそのまま書く。格子面あるいは結晶面のミラー指数は (111), (101), (200) というように (hkl) で表す。
「X線構造解析」(大場 茂、矢野重信、1999)にも同様の記述がある:
1章、p. 1: (h k l) は結晶面を意味し、単に h k l と書くと反射指数をさす。
何よりも "International Tables for Crystallography", Vol. A 中の Table 2.2.13.2 (pp. 30–31) と Table 3.1.4.1 (pp. 46–53) が一番説得力がある。これらの表には反射の reflection conditions が収録されているが、(hkl) という表現はどこにも見当たらない。

要するに (hkl) 面による n 次反射を nh nk nl 反射と呼び、nh, nk, nl を反射指数と呼ぶのは、結晶学における基本ルール(約束事)なのだ。(hkl) 面が n = 1ばかりでなく n = 2, 3, 4, … の高次反射も与えるのだから、(nh nk nl) 反射という表現が原理的に不適切なのは自明だろう。

1章(粉末X線回折法の原理を理解しよう)の冒頭で述べた上、同様の記述を11章(リートベルト解析に取り組む人ヘのアドバイス)でも繰り返しているのだから、「粉末X線解析の実際」はかゆいところに手が届くような親切な本である。件の JACS の論文の著者全員は同書を読むか、同書をテキストとする「粉末X線解析の実際」講習会に参加し、基礎から勉強し直していただきたい。

やはり多くの論文で目に付くのが、"100℃" というように数値と "℃"(セルシウス度)をつなげるという誤りだ。角度の単位である "°"(度)の場合と混同しているのは明らかだ。"K"(ケルビン)と場合と同様に "100 ℃" としなければならない。もっとも、数値と単位の間にはスペースを入れるという基本的ルールに無頓着な(または、あえて無視している)著者や編集者は相当多いので、目くじらを立てていたら切りがないのも事実だ。某パルス中性子源の Web サイトときたら、スペースなし表現のオンパレードである。数値と単位の記述法に無頓着な施設だけあって安全管理も杜撰で、放射線漏れの事故を引き起こし、長期間にわたって運転停止に追い込まれた。

SI 単位の理念に基づく由緒正しい記述法は NIST が公開している "Guide for the Use of the International System of Units (SI)" に詳しい。これについては、名工大で科学英語論文の執筆法について講義したときにも紹介した。論文を書いている間、必要に応じて参照することをお勧めする。もっとも、この文書は極めて厳格なルールに則っているため、多くの雑誌で採用している(正当性を欠く)記述法と合致しないケースも多いだろう。
「粉末X線解析の実際」について
「粉末X線解析の実際」(朝倉書店)は結晶学関連の書籍としては異例なほど売れている。同名の講習会のテキストとしての販売が発行部数を底上げしているのも、その一因であろう。同書がほしいから講習会に参加するという人も多いだろう。明らかに、書籍と講習会が相乗効果を発揮している。

このような専門書を大手理工学出版社が喜んで出版してくれるのは、特性X線(主として Cu Kα)を用いる粉末X線回折装置のユーザーが膨大な数に達しており、日本語書籍でも十分な部数の販売が見込めるからだ。ニッチな放射光・中性子利用技術の一分野(たとえば XAFS や pair distribution function の解析)が対象だったら、国際的知名度の高い著者が執筆した英文書籍を全世界相手に販売するのでないと無理だろう。論より証拠、当初は単行本として出版すると豪語していた「RADIOISOTOPES」の連載記事「中性子回折の基礎と応用」は ISBN も付かない冊子として無料配付されるに留まった。要するに国内の需要が少なすぎるのである。

中井氏は第三版も出版する心積もりでおられ、これまで通り一緒に編集してくれないかと仰っている。しかし自分が執筆した章なら改訂するのにやぶさかでないが、あれだけのページ数を隅から隅まで綿密にチェックするのはきつすぎる。第一、いつまでも心身が健全でいられる保証がない。どなたか適任の方にバトンタッチし、後事を託したい。
RIETAN-FP に関する解説本の出現
情報機構セミナー「RIETAN-FP・VENUSシステムによるリートベルト・MPF解析」(7月2日、東京)は、近年開催された情報機構の全セミナー中で最多のお客様を引き寄せたそうです。過去に都内で開催した RIETAN セミナーの約9割増しという望外の参加者数には仰天しました。収容人員100名の広い会場で閑古鳥が鳴いたら赤っ恥という心配は杞憂に過ぎず、良い塩梅に席が埋まりました。

実のところ、今回これほど人気が沸騰した理由がよくわからず、首を傾げています。RIETAN-FP・VENUS システムの知名度の高さと文句なしの実績が人を引き寄せたというより、以前に比べて宣伝がより巧妙になり、訴求効果が上がっているのかもしれません。たとえば正体不明の福袋のプレゼントという趣向は、世事に疎い研究者にしては商売うますぎです。秋葉原駅から歩いて2・3分という交通至便の地で開催したのも功を奏したのではないでしょうか。それに、このセミナーの内容や講師はアキバによく似合ってますね。なにしろ AKB セミナーと呼ぶ人もいたくらいですから。

ところで、上記セミナーの相方の伊藤孝憲氏(AGCセイミケミカル)が坪田雅己氏とともに最近

坪田雅己, 伊藤孝憲, “RIETAN-FP で学ぶリートベルト解析”, 情報機構 (2012).

と題する書籍を上梓しました。坪田氏は RIETAN-FP 関連の技術・解析・教育サービスを提供する株式会社フィゾニットを設立したばかりです。リートベルト解析を安定に収束させるためのツール SeqRun.xls の製作者でもあります。

同書は306ページもの力作です。RIETAN-FP のマニュアル RIETAN-FP_manual.pdf が現時点で244ページですから、厚みで大差をつけられてしまいました。本書は pLaTeX で執筆されましたが、仮に MS Word を使っていたならば、重度のストレスが著者にのしかかり、少なくとも一名は死亡していたに違いありません。

7月末までは同書を割引価格で買えます。RIETAN-FP のユーザーは購入を検討されたらいかがでしょうか。大半が英文で、しかも数式に満ち溢れている RIETAN-FP_manual.pdf に比べ、初心者にははるかにとっつきやすいはずです。

国産結晶学ソフトウェアに関する解説本は寡聞にして知りません。従来は書籍の一部で取り上げる程度に留まっており、単一プログラムに丸一冊を捧げ尽くすのは、他に類を見ない思い切った企画と言ってよいでしょう。ユーザーとしての立場から、初心者にとって有用な情報を提供してくれると確信しています。

私はRIETAN-FP の産みの親として同書に序文を寄稿するよう頼まれ、至急書き上げました。恥ずかしながら、その全文が同書の Web ページで公開されています。意識的に古風で堅い文章に仕立てました。ツイッターやブログで書き散らしているような軽い調子の文言を織り交ぜたら、売れ行きが落ちかねませんからね。「へ〜、こういう折り目正しい文章も書けるのか。器用な人だなぁ。」と感心していただければ本望です。
尾上 順「量子論の基礎から学べる量子化学」近代科学社 (2012).
つい最近刊行されたばかりの「量子論の基礎から学べる量子化学」(2,940円)では坂根弦太氏(岡山理科大)が DV-Xα 法で計算し、 VESTA 3で描いた原子軌道の図49枚が口絵3ページを色鮮やかに飾っている。このほか本文中の p. 86でも、やはり VESTA 3で作画した原子軌道の図16枚が丸々1ページを占めている。ベクトル作画機能を使い、原点に置いたダミー原子(Radius = 0)に対する3本のベクトルとして x, y, z 軸をプロットするという裏技を駆使して作成したそうだ。

これらの図は次の Web ページで閲覧できる:

s 軌道, p 軌道, d 軌道, f 軌道,
http://www.chem.ous.ac.jp/~gsakane/AO/index.html

g 軌道,
http://www.chem.ous.ac.jp/~gsakane/5g/index.html

h 軌道,
http://www.chem.ous.ac.jp/~gsakane/6h/index.html

i 軌道,
http://www.chem.ous.ac.jp/~gsakane/7i/index.html

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