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HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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格子面と反射の表記法について
(hkl) と hkl とが区別できないのは結晶学のド素人の証拠と4月17日4月18日につぶやいたが、別に特定の研究グループをダメ出しし、揶揄したかったわけではない。粉末回折パターンを図示している論文のうち数割がそのような未熟なミスを犯しているのを目の当たりにしてきたので、論文の執筆者、レフェリー、編集者の注意を喚起し、少しでもそういう無様な論文を減らすのに貢献したいと願ったまでのことだ。

「粉末X線解析の実際」第2版(朝倉書店)では2箇所で両者の違いを次のように説明している:
1章、p. 4(中井 泉): X線の回折は格子面からのX線の反射とみなせるが、特定の反射を表すときは、対応する格子面のミラー指数から ( ) を取り去った回折指数 hkl を用いる。
11章、p. 186(泉 富士夫): ブラッグ反射の指数(回折指数)あるいは逆格子点については、111, 101, 200 というように指数 hkl をそのまま書く。格子面あるいは結晶面のミラー指数は (111), (101), (200) というように (hkl) で表す。
「X線構造解析」(大場 茂、矢野重信、1999)にも同様の記述がある:
1章、p. 1: (h k l) は結晶面を意味し、単に h k l と書くと反射指数をさす。
また "Applications of Neutron Powder Diffraction" (Kisi & Howard, 2008) の glossary には hkl は reflection indices、(hkl) は lattice plane を表すと明記されている。橋本功二と浅見勝彦 (2001) による「回折による構造解析結果の正しい記述のために」にも同様の記述がある。

何よりも "International Tables for Crystallography", Vol. A 中の Table 2.2.13.2 (pp. 30–31) と Table 3.1.4.1 (pp. 46–53) が一番説得力がある。これらの表には反射の reflection conditions が収録されているが、(hkl) という表現はどこにも見当たらない。

要するに (hkl) 面による n 次反射を nh nk nl 反射と呼び、nh, nk, nl を反射指数と呼ぶのは、結晶学における基本ルール(約束事)なのだ。(hkl) 面が n = 1ばかりでなく n = 2, 3, 4, … の高次反射も与えるのだから、(nh nk nl) 反射という表現が原理的に不適切なのは自明だろう。

1章(粉末X線回折法の原理を理解しよう)の冒頭で述べた上、同様の記述を11章(リートベルト解析に取り組む人ヘのアドバイス)でも繰り返しているのだから、「粉末X線解析の実際」はかゆいところに手が届くような親切な本である。件の JACS の論文の著者全員は同書を読むか、同書をテキストとする「粉末X線解析の実際」講習会に参加し、基礎から勉強し直していただきたい。

やはり多くの論文で目に付くのが、"100℃" というように数値と "℃"(セルシウス度)をつなげるという誤りだ。角度の単位である "°"(度)の場合と混同しているのは明らかだ。"K"(ケルビン)と場合と同様に "100 ℃" としなければならない。もっとも、数値と単位の間にはスペースを入れるという基本的ルールに無頓着な(または、あえて無視している)著者や編集者は相当多いので、目くじらを立てていたら切りがないのも事実だ。某パルス中性子源の Web サイトときたら、スペースなし表現のオンパレードである。数値と単位の記述法に無頓着な施設だけあって安全管理も杜撰で、放射線漏れの事故を引き起こし、長期間にわたって運転停止に追い込まれた。

SI 単位の理念に基づく由緒正しい記述法は NIST が公開している "Guide for the Use of the International System of Units (SI)" に詳しい。これについては、名工大で科学英語論文の執筆法について講義したときにも紹介した。論文を書いている間、必要に応じて参照することをお勧めする。もっとも、この文書は極めて厳格なルールに則っているため、多くの雑誌で採用している(正当性を欠く)記述法と合致しないケースも多いだろう。
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