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HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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粉末回折データを用いる未知構造解析のための代表的プログラム
粉末X線回折データから未知構造を解析する方法は逆空間法(直接法)、実空間法(直接空間法)、逆空間と実空間を行き来するデュアルスペース法(チャージフリッピング)に大別される。ありがたいことに、それぞれ秀逸なソフトウェア


が(アカデミックユーザーには)無償で配付されており、これらの利用を通じて比較的容易に未知構造のモデル(空間群、おおよその格子定数と原子座標)を構築できる。

EXPO は最新バージョン EXPO2013が一昨日、公開されたばかりだ。EXPO2013には

  • The covariance principle based completion method (COVMAP) for structure model optimization
  • The RAndom Model based Method (RAMM)
  • The Hybrid Big Bang-Big Crunch approach for structure solution in reciprocal and direct space, respectively

などの強力な新アルゴリズムが実装された。特筆すべきなのは OS X バージョンが X11.app 抜きで動くようになったことだ。まだ動作が少々不安定なようだが、いずれ枯れてくるだろう。

OS X 用 EXPO2013で Le Bail 法により硫酸バリウムの粉末X線回折データを解析した後のウィンドウを下に示す:


EXPO は指数づけ、Le Bail 法、空間群推定、リートベルト法なども包含した統合粉末構造解析システムである。ただし EXPO を用いた Le Bail 解析やリートベルト解析において達成できるフィットは完璧からは程遠いため、最終的には RIETAN-FP などの本格的なプログラムを使うことを推奨する。EXPO 開発の中心的存在である Giacovazzo 先生が結晶解析ソフトウェアの営利化を嫌っておられるという逸話は、以前ツイッター(4月16日)でつぶやいた。

モンテカルロ法プログラム FOX については、岡山大の神崎正美先生が PukiWiki で種々のノウハウを微に入り細にわたり披瀝しておられる。FOX は指数づけ、空間群推定、Le Bail 解析の機能をもつ一方、リートベルト解析はできない。神崎先生は FOX と RIETAN-FP(リートベルト解析)の組み合わせによりいくつかの高圧相の構造を実際に解析された。

最新版 Superflip のタイムスタンプは2013年4月17日となっている。Superflip はチャージフリッピング専用プログラムであり、積分強度抽出機能を欠いているため、Le Bail/Pawley 解析の機能をもつ外部プログラムとの連携が必要不可欠だ。

RIETAN-FP がハイブリッド・パターン分解後に出力したファイル *.ffo に記録されている |Fo| を EXPO と Superflip で処理する方法については、RIETAN-FP_manual.pdf に付属する文書「多目的パターンフィッティング・システム RIETAN-FP の新機能について」の16.4で言及した。

むき出しのチャージフリッピング・エンジンに近い Superflip はさておき、GUI を備えた未知構造解析システム EXPO2013と FOX が無償で使えるのは願ってもないことだ。

神崎先生の PukiWiki の記述からも窺えるように、三つの方法論はそれぞれ得手、不得手があり、けっして万能でない。商用ソフトの方が優れているという訳でもない。商用ソフトを大枚叩いて買ってほぞを噛むよりは、単結晶X線解析における複数の直接法プログラムの併用と同様に、上記の著名プログラムをケースバイケースで使い分ける方が賢明だ。もっとも、ベンダーの技術者の人件費が価格に含まれていて、解析をみっちり指導してくれるというのなら、その限りでない。研究資金に事欠かないのであれば「時間を金で買う」のが一番手っ取り早いのは、どんな研究手段にも共通する真実なのだから。
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