お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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RIETAN vs. Z-Rietveld
1. Gnuplot による年次被引用数のグラフ化

今月、大学と企業で一回ずつ講演する機会があり、RIETAN-2000/FP に関する論文2報 (Izumi & Ikeda, 2000; Izumi & Momma, 2007) の被引用数の年次推移を表す棒グラフを gnuplot で作成し、プレゼンテーションに使用した(2013年分は後日再調査して修正。ちなみに2014年には 61 + 152 = 213 という過去最高の被引用数を達成した)。


ちなみに、グラフ化に用いた gnuplot スクリプトファイル RIETAN.plt は次の通り。
set terminal pdfcairo linewidth 1.2 size 21cm, 13cm font "Arial, 19" fontscale 0.65
set output "RIETAN.pdf"
set border linewidth 1.2
set tics scale 1.4, 0.8

set encoding utf8 # 漢字を出力

set xtics nomirror offset 0.0, 0.3
set xlabel "年" offset 0, 0.1 font ", 18"

set ytics mirror offset 0.5, 0.18 0, 50, 240
set mytics 5
set ylabel "被引用数" offset 0.65, 0 font ", 18"

set style fill solid border linecolor rgb "black"
set boxwidth 0.7 relative

set key left top spacing 1.3 width 0 height 1

# Margins measured in character widths or heights (a negative value: automatic)
set margins 8.5, 2, 4, 1.1

plot [:] [0:240] "RIETAN.dat" using 0:($2+$3) with boxes linecolor rgb "light-pink" t 'Izumi \& Momma (2007)',\
"" using 0:($2):xtic(1) with boxes linecolor rgb "light-cyan" title 'Izumi \& Ikeda (2000)'
ご覧のように、terminal pdfcairo で PDF ファイルを直接出力するようにした。このスクリプトファイルは漢字を含むため、UTF-8 フォーマットで保存しなければならない。文字列中の '&' が単一引用符で囲まれているときは、バックスラッシュでエスケープすることに注意してほしい。数値データは RIETAN.dat というテキストファイルに保存されている:
2000      1      0
2001    23      0
2002    85      0
2003  108      0
2004  136      0
2005  151      0
2006  202      0
2007  206      3
2008  173    17
2009  172    33
2010  159    46
2011  113    96
2012    93  108
2013    61  144

2. RIETAN-2000/FP の波及効果

上の棒グラフから一目でわかるのは、2006年以降の被引用数が約200/年でほぼ定常状態となっており、賞味期限切れの RIETAN-2000が意外にしぶとく生き残っていることだ。約200の被引用数を8年連続で達成しているのは、瞠目すべき実績である。本ブログに投稿されたカテゴリー「ソフトウェア」に属するエントリーを眺めれば、RIETAN-2000/FP がいかに多くの論文に貢献しているかが自ずと感じられよう。

科学技術ソフトウェアが時代遅れになり、なおかつ将来性が危ぶまれると、利用者はふつう漸減していく。粉末回折のマーケットが飽和しているにもかかわらず RIETAN の人気が衰える兆しを一向に見せていないのは、
  1. 枯れたプログラム RIETAN-FP がすこぶる安定に動いている。
  2. 数多くの既存ユーザーを抱えブランド化を達成している上、一度習得したプログラムを惰性で使い続ける人が多い。
  3. プログラム中で使用している数式や入出力ファイルの内容などを網羅した英文マニュアルが提供されている。
  4. 世界的に広く普及している三次元可視化システム VESTA との緊密な連携を享受できる。
  5. ネット、書籍、レビューなどから多くの日本語情報が入手できる。
  6. RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境がありきたりの GUI プログラムより俊敏で、なおかつ使い勝手が良い。
  7. 私が依然として拡張・改良と教育・啓蒙・宣伝活動に励んでいる (「RIETAN-2000と RIETAN-FP」参照)。
という事実により容易に説明できる。Gnuplot によるグラフ作成機能の実装(「RIETAN-FP への Gnuplot の導入」参照)は No. 5 に分類される。私と社会をつなぐパイプは自作プログラムのみだ。健康を害したりしない限り、ボケ防止も兼ね今後も RIETAN-FP のバージョンアップとメンテナンスを続けていく。

近日中に公開する RIETAN-FP v2.3のマニュアル RIETAN-FP_manual.pdf は261ページにも達している。これほど豊富な情報を提供している国産無償科学技術ソフトのマニュアルは、ごく希だ。マニュアルには PC の操作だけ記すのでなく、プログラム中で使用している重要な数式やアルゴリズムをすべて記述せねばならない。その点、RIETAN-FP_manual.pdf には百点満点を与えることができる。

3. それにひきかえ Z-Rietveld は・・・

200/年という被引用数の多寡を客観評価するため、J-PARC で測定した TOF 粉末中性子回折データ用のリートベルト解析プログラム Z-Rietveld に関する論文(Oishi et al., 2009)の被引用数と比較してみた。

そういう不毛の行為に踏み切ったきっかけは、最近、私が Z-Rietveld の作成に関与していると誤解している人に出会したことである。Z-Rietveld では KENS の TOF 粉末中性子回折装置 VEGA の背面バンク用に RIETAN-2001T に実装した分割プロファイル関数や部分プロファイル緩和を猿真似しているので、そう思い込むのも無理はないが、迷惑至極だ。そもそもプライオリティーを尊重せず primary → global、secondary → local と故意に用語を変えてオリジナリティーの無さを隠蔽している。個々の反射について計算する物理量に範囲を表す形容詞 local を付けるのは改悪以外の何物でもない。

私は Z-Rietveld の製作には一切コミットしていない。Z-Rietveldに限らず、いわゆる Z-code の大半は外部ソフトウェアハウスへのアウトソーシングで製作したものだろう。言い換えれば、知識と能力と時間を(税)金で買ったに等しい。

件の分割プロファイル関数は20年弱前に KENS 中性子源の粉末回折装置 VEGA の背面バンクで測定した TOF 中性子回折データ用に最適化し、RIETAN に組み込んだ複雑な関数である。精密化するプロファイル・パラメーターの数が多く、結果としてパラメーター間の相関が非常に強く、微分係数を使う非線形最小二乗解法では収束しにくい。物理的な意味をまったく持たないため、異方的プロファイル・ブロードニングを適切に近似できない。こんなプロファイル関数は、疾うに賞味期限切れといって過言でない。そもそも新たな中性子源+粉末回折装置を用いる以上、厳密には装置・バンクごとに一次プロファイルパラメーターの d 依存性の式を最適化し直さなければならないのだが、装置グループのメンバーのスキルと指導力の欠如から、そっくりそのまま流用してお茶を濁したのだろう。彼らは筆頭著者の論文を量産する能力、アイデア、試料合成用の実験設備・技術を持ち合わせておらず、実態は研究者というよりテクニシャン同然なのだから、無理もないが・・・ 論より証拠、装置グループのメンバーが筆頭著者になっている論文がどれだけ発表されているかを調べれば、一目瞭然である。それに自ら率いる研究室で学生を直接、教育・指導していないようでは、なんちゃって(准)教授の誹りを免れない。

閑話休題、J-PARC は最新の高強度パルス中性子源であり、TOF 粉末中性子回折データを測定できる装置は数台建設済みである。その上、粉末中性子回折はパルス中性子源の稼ぎ頭なので、さぞかし成果が挙がっているに違いない。J-PARC は中性子産業利用推進協議会まで立ち上げて産業利用を推進しようと躍起になっているのだから、民間企業も積極的に利用しているはずだ。最後発ソフトは古参ソフトの秀逸な機能を模倣しやすい。さらに、Z-Rietveld は粉末X線回折データも解析できるので、使い勝手やパフォーマンスさえ優れていれば、RIETAN-2000/FP からユーザーを奪う可能性は大いにある。私情を交えず客観的に過去数年の業績を予想すると、こんな所に落ち着くだろう。

ところが Web of Science の検索結果は暗澹たるものだった。2009〜2013年の間の Z-Rietveld に関する国際誌論文の被引用数はわずか23に過ぎなかったのだ。RIETAN なら40日余りで達成する程度の悲惨極まりない値である。RIETAN-2000/FP に関する論文は同じ期間に997回引用されているので、Z-Rietveld/RIETAN 比はわずか2.3 %ということになる。被引用数比だからこの程度ですむものの、粉末回折装置の台数で割り、巨額の建設・維持費、人件費、電気料金、宣伝活動経費を消費する施設に特有の費用対効果の低さまで考慮したら、無視できるほど小さい数字になり果てるだろう。Z-code 自身、アウトソーシングに相当な予算を費やしているに違いない。言わば金に物を言わせて開発しているのである。「成果に貢献してなんぼ」の科学技術ソフトとしては、実績があまりにも貧弱であり、ひいては存在感が希薄すぎる。

2年前に「PRIMA vs. ENIGMA」というエントリーを投稿したが、MEM 解析プログラム ENIGMA は PRIMA には惨敗したものの、ENIGMA/PRIMA 比は46 %(現時点では44 %)であり、それなりに健闘していた。そもそも Z-Rietveld がその価値を認められ、大いに利用され続けていたならば、RIETAN-2000/FP に関する論文の被引用数はここ数年、単調に減少してきたに違いない。J-PARC における TOF 粉末中性子回折が一向に盛り上がっていないのは明白だ。

おまけに、民間企業に所属する研究者が筆頭著者の論文はなんとゼロ(!)だった。茨城県が建設・維持している iMATERIA は大半のビームタイムを民間企業に割り当てるのが原則のはずだ。測定したデータがいくら多くても、国際誌に掲載される成果が皆無なのでは話にならない。この事実は J-PARC における産業利用の低調さ、企業研究者の実力不足、施設サイドの支援態勢の不備を如実に反映している。茨城県産業利用課題の成果報告書をざっと眺めると、量・質ともに貧弱なことが見て取れる。課題番号2012BM0015の報告書には、
Z-Rietveld を用いて3相解析を行おうとしたが、ソフトの動作がやや遅く、解析が進みづらい状態に陥った。そこで GSAS を用いて Rietveld 解析を進めていくことにした。
という実態が記されている。わずか3相で解析がデッドロックに乗りあげるという鈍重には呆れ果てる。複数の人から Z-Rietveld の計算速度は異常に遅いと聞いている。

企業研究者が中心となって発表した論文が皆無という事実は、パルス中性子が企業活動(利益の獲得)に直接役立つという幻想を植え付けようとする企てが今のところ奏功していないことを赤裸々に明示している。一方、SPring-8の企業ユーザーは国際誌に研究成果をそれなりに発表しているはずである。恐らく、中性子散乱はマンパワーと経済力に余裕のある大企業が手を出す道楽とみなされているのだろう。絶えず生存競争に励み、時にはリストラで苦境を乗り切っている企業は、そう甘くない。

たとえ中性子散乱が金食い虫である割にニッチな研究手段であり、そのマーケットがごく小さいことを考慮しても、被引用数至上主義者(「非引用地獄」参照)としては Z-Rietveld の生産性の低さに失望の念を禁じ得ない。少なからぬ税金を費消しているにもかかわらず、これほど貧弱極まりないアウトプットにしか貢献していないのは情けない限りだ。第一、英語論文を執筆できるレベルのパワーユーザーを十分獲得できていないようでは、プログラムがなかなか枯れないだろう。ユーザー数がごく少ないX線回折データの解析部分はとりわけリスクが高い。

発展途上の Z-Rietveld が敬遠され、実績のある枯れた外国製プログラム(たとえば GSAS と FullProf)を選択するユーザーが多いという訳でもなさそうだ。横軸が飛行時間 (t/μs) なのに怖じ気づく人が意外に多いという可能性はある。実際、自分も初めて TOF 中性子回折用の RIETAN を作成したときは、大分戸惑った。マルチバンクで測定した強度データの同時解析は角度分散型回折データの解析に比べ、相当面倒なのも事実である。また以前「ムラ社会の掟」で痛烈に批判したように、磁性原子を含む材料を扱うチャンスがかなり多いのに、ごく単純な強磁性磁気構造すら解析できないという体たらくなのは致命傷に近い。磁気構造解析機能の必要性については6年も前に装置管理者に面と向かって指摘した(2006年7月4日の掲示板参照)ので、専門知識不足と職務怠慢の誹りは免れない。これまで強磁性体の磁気散乱を無視した解析結果がいくつも発表されたのではなかろうか。しかし、成果不足の現状はそれらだけでは説明し切れない。

Z-Rietveld の諸機能、パフォーマンス、安定性、使い勝手の良さ、英文マニュアル(マニュアルはないのかと訊ねると周章狼狽するらしい)を精査すれば答えが出るはずだが、不人気ひいては成果不足の原因を究明し対策を講じるべきなのは、もちろん中性子ムラの住民である(「ムラ社会の掟」参照)。本エントリーでは冷厳な事実だけを率直に記述し、更なるコメントは控えておく。装置グループの方々は上記のような「不都合な真実」を突きつけられたことに発憤して Z-Rietveld の改善と補強(とくに、タイムフォーカシングに伴う誤差の伝播の正確な評価。物理的な意味のあるプロファイル関数、あらゆる種類の磁気構造の解析、VESTA に匹敵する強力な統合可視化システムの開発、熱散漫散乱の補正、RIETAN-FP_manual.pdf 並の詳細な英文ドキュメンテーション)に粉骨砕身し、能う限り多くの研究成果を世に送り出すよう努めてもらいたい。「車輪の再発明」的な最後発ソフトなのに手抜きばかりが目に付く劣化コピー状態に安住するならば、存在意義が疑われる。

なお本エントリー中に誤解や認識不足に起因する事実誤認が見つかったならば、実名で私に直接ご指摘いただければ幸甚である。不適切な記述は修正または削除するにやぶさかでない。逆に言えば、なんらレスポンスがないならば事実として認めたということになる。
コメント
from: rtomiyasu   2014/07/13 8:26 PM
> ご自分たちに都合の悪い指摘

いや、私はつい余計なことを言ってしまいそうで、研究の話以外はあまり公にしないようにしているので、それが一番の理由です。

しかし、こういった分かりやすいアウトリーチも、役に立つ人はいるでしょうね。確かにボランティアですが、自分もその気持ちは十分分かりますので、応援しています。
from: 泉 富士夫   2014/07/13 1:02 PM
それは Pawley 法の新しいアルゴリズムを Z-Rietveld に組み込んだという内容の論文ですね。Pawley 法を使うために Z-Rietveld を使うユーザーがどれだけいるかということを考慮すると、無視しても差し支えない程度の論文です。私は被引用数(利用実績)について言及しているのですから、ほとんど使われない枝葉末節な機能に関する論文を持ち出されても、苦笑するしかないです。

ご自分たちに都合の悪い指摘に一切コメントしておられないのが、残念でなりません。本エントリーの末段にも記したように、「物理的な意味のあるプロファイル関数、あらゆる種類の磁気構造の解析、熱散漫散乱の補正」などの、本質的に重要な機能の実現に鋭意取り組むことを強く望みます。とくに熱散漫散乱の補正は、極低温以外で測定したデータの解析における格子面間隔 d の小さい反射の原子変位パラメーターの確度向上のためには、必要不可欠です。

とにかく、後出しのプログラムが既成プログラムより機能的に劣っているのでは、存在意義を疑われるということを肝に銘じてください。
from: rtomiyasu   2014/06/26 12:29 PM
Z-Rietveldの論文は2012年の4月に以下が出ていますから、こちらも加えておいた方が、より公平ではないでしょうか。

R. O-Tomiyasu, et. al., J. Appl. Cryst. (2012), 45, 299-308.

その他の点についての、コメントは避けます。(一体何があったのか知りませんが、私は個人的な経緯を把握してないため。)
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