お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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Forty Years in Japan, Once More
平成軽薄体という独自のルールに則った文体で本掲示板に毎日なにがしかを書き込むという、賽の河原の石積みにも似た苦役から解放される日がついに到来しました。慶賀の至りでございます。今日は超臭い最後っ屁を大量にぶっ放します。

本日で 5 年にわたる量子ビームプロジェクトが終了します。門馬綱一君は今日限りで新天地に去ります。私は少なくとも後一年は NIMS と名工大(客員教授)で研究を続けますが、その後は未定です。同プロジェクトにおける私の使命、すなわち粉末回折関係のソフトウェア開発と NIMS における量子ビーム研究のデモンストレーションが成功を収めたか否かは、幾度となく本掲示板でお知らせしてきた被引用数という数値データと依頼・招待講演・講義のリストから明らかでしょう。同プロジェクトからヘッドハンティングされるまで、私は「粉末 X 線解析の実際」第 2 版を編纂し、それをテキストとする講習会を一回開いた後、新規まき直し、狭い日本から飛び出し外国で一旗揚げようと目論んでいました。膨れ上がる一方の国の借金、少子高齢化に伴う活力の減衰、東日本を襲った災厄などを直視すると、そちらの選択肢の方がよほどましだったような気がします。あれから 6 年も経った今、もはや外国に移住する元気はありません(涙)。

J-PARC が東日本大震災で甚大な被害を受け、復旧までには相当の日時を要するため、茨城県中性子利用促進研究会を休止し、事務局の業務を終了するというメールが今日届きました。同研究会からのスパム(2010 年 10 月 3 日)が当分来なくなるのは喜ばしい限りです。4、5 年前の話になりますが、集客、ひいては上記メーリングリスト用データの取得のために、閑古鳥が鳴いていた茨城県の研究会に半強制的に協力させられたのは迷惑至極でした(2007 年 11 月 9 日11 月 17 日)。ドサ回りの旅役者じみた茨城県研究会の講師を務めるのは、苦痛以外の何物でもありませんからね。しかし、私はさほど執念深い性格でありませんから、同研究会に恨みなどは抱いていません。事務局の業務停止の報を受けて湧き起こったのは、真っ先に切り捨てられる末端事務局員に対する憐憫の情でした。

J-PARC が相当深刻なダメージを受けたのは、これらの写真から明らかです。一日も早く復旧することを心から祈っています。しかし J-PARC が復旧したところで、節電地獄が待ち構えています。KEK と同様に、大口電力需要者である J-PARC は東電との間で需給調整契約を結んでいるはずですから、電力事情が好転するまで厳しい節電(= 研究活動の縮小)を強いられ、冬の時代が続くでしょう。不要不急な加速器の運転は極力控え、日本経済の屋台骨である製造業や商業に優先的に電力を供給しないと、ただでさえ疲弊している日本経済が崩壊しかねません。大震災以降、節電の徹底、すなわち運転期間の短縮と出力の抑制こそ J-PARC が掲げている大目標の一つである「産業界への貢献」の最たるものに変わったのです。福島第一原発から茨城北部への放射能の拡散にも不安が募ります。大気中の放射線量は福島県を除けば茨城県が断トツに高いのです。たとえ実際には健康に害がなくとも、J-PARC での実験は長いこと敬遠される恐れが多分にあります(とくに外国人には)。可哀想なのは、中性子の施設で働いているポスドクや任期付き研究者、中性子散乱を研究テーマとする博士課程の学生です。将来パーマネントの地位を獲得するため研究成果を挙げようにも、商売道具が長期間使えないのですから。せいぜい外国の中性子源にプロポーザルを提出するんですね。

研究も一種のビジネスに他なりません。いくら量子ビームプロジェクトに参加するとはいえ、J-PARC という疫病神に関わり合うと消耗するだけで、赤字垂れ流しに陥る、というマイ・カンピュータの警告はぴたりと的中しました。第一に今回の大震災で出鼻を挫かれたこと、第二に長期にわたり節電に努めざるを得なくなったこと、第三に各粉末回折装置用に最適化したリートベルト解析プログラムの開発が至難の業だという事実が確認されたことです。水銀ターゲットに適したプロファイル関数を新たに考案し、格子歪みや結晶子サイズに起因する異方的な回折プロファイルの拡がりを扱えるようにし、室温以上で測定した TOF 粉末中性子回折データの解析には必要不可欠な熱散漫散乱(TDS)の寄与を加えた上、装置やバンクごとにプロファイル関数を最適化するとなると、一筋縄で行きません。それらの努力を怠り、時代遅れで物理的に意味のない既成のプロファイル関数で済ました手抜きソフトを用いたときに直面するフィットの悪さ(2 月 4 日)を凝視してみてください。凡庸な指導者から身の丈を超えた仕事を丸投げされたにわか粉末回折屋の呻き声が聞こえてくるような気がしませんか。KENS の時代より分解能が上がっている分だけ、結晶性がやや低い試料と固溶体でフィットの悪さが浮き彫りになるんです。またブラッグ反射直下で盛り上がる TDS を無視したまま高 Q 領域の強度データを解析に含めると、温度が上がるほど原子変位パラメーター、ひいては観測積分強度の系統誤差が増します。こうなると、MEM 解析どころの騒ぎではありません。

このようなサムすぎる状況を考慮すると、JAEA が組織レベルで要請してきたパルス中性子回折用プログラムの開発からまんまと逃げおおせたのは、まさに「してやったり!」です。そりゃ全力を振り絞り、真っ向からがっぷり四つで取り組めば、なんとかなるでしょう。しかし、モチベーションの上がらぬ難事業を外部資金抜きで請け負うほど、ご立派な人じゃありませんよ、オイラは。たかられ感が強すぎますし、徒労に徒労を重ねても平気の平左という年齢でもありません。JAEA の皆様には、もっと前向きの姿勢を示していただきたいです。徒に J-PARC の長期シャットダウンを嘆くのでなく、ご自分たちの回折装置用のソフトを自主開発する絶好のチャンスと見なしたらいかがでしょうか。そういう高度な技術を持ち合わせている人材は JAEA はもとより我が国の中性子業界にも皆無だという体たらくなのでしたら、色々ご不満はございましょうが、上記のトホホなソフトで我慢するんですね。ただし、単純な強磁性体の磁気構造すら解析できず(2010 年 2 月 16 日)、ろくなマニュアルもないという不都合な真実をお忘れなく。

今年度限りで本掲示板を閉鎖すると宣言し、そのバックナンバーをざっと眺め渡していたとき、"Forty Years in Japan" というタイトルが目に止まりました。RIETAN-FP の前身である RIETAN Pro を開発していたころの述懐です。RIETAN-FP のブラッシュアップとメンテナンスは今後も続行しますので、RIETAN が我が国で 40 年の長きにわたり利用され続けるという文言を撤回するには及ばないでしょう。サイエンスにおける 40 年がとてつもなく長い年月であるのは言うまでもありません。そこまでたどり着けば、RIETAN は十分その使命を全うし、成仏したと評価して差し支えないでしょう。現在 RIETAN-2000/FP を使って頂いているユーザーが将来、他のソフトに乗り換える際には、RIETAN を通じて獲得した知識や経験がそのまま生きてくるはずです。何十年後かに、昔 RIETAN でリートベルト解析に初めてチャレンジしたんだよなぁ、と思い出してくれたなら、I 先生は草葉の陰で感涙にむせぶことでしょう。

世界中で使われているリートベルト解析のプログラムはかなりの数に上ります。そうした群雄割拠の中、RIETAN-FP の存在意義はどこにあるのか ―― なんといっても、オリジナルな構造精密化技術である MPF 法です。古典的構造精密化法であるリートベルト法では、粉末回折データに含まれている構造情報を完全には抽出できません。GSAS, FullProf, TOPAS などが実行できるのは、今や陳腐化したリートベルト解析に留まっています。これらの著名ソフトで十分質の高い放射光粉末回折データをリートベルト解析した後、同じデータを RIETAN-FP + MPF_multi により MPF 解析してみてください。全自動ですから、楽なものです。RB と RF の著しい改善に度肝を抜かれ、深い感銘を受けるに違いありません。MPF 法による信頼度因子の向上は、共有結合性の高い有機化合物で頂点に達します。実質的に結晶構造を電子密度で表現する MPF 法の場合、結合電子の寄与も自ずと計算に取り込まれるためです。不規則分布した原子(団)を含む化合物の X 線・中性子回折データの解析でも絶大な威力を発揮します。さらに、レガシーな分割原子モデルに基づくリートベルト解析が苦手とする可動化学種の実空間分布の決定にも有効です。他に類を見ない自動 MPF 解析機能の具備が RIETAN-FP の独自性を際立たせ、その唯一性を強くアピールしています。

RIETAN-FP のもう一つの強みは、強力な三次元可視化システム VESTA との密接な連携です。VESTA は GUI を備えたユーザーフレンドリーなビジュアル系ソフトであり、充実した英文マニュアルが付属していることから、すでに国際的な普及を果たしています。なにしろユーザーの半分強は外国人なのですから。最近、大幅な機能増強を果たした次世代版 VESTA 3 のベータ版をリリースしましたし、門馬君が今後も手入れを続けてくれますので、将来性に不安はまったくありません。長い年月を経て、最終的には VESTA に関する論文の累積被引用数は 3,000 を越すと堅く信じています。もちろん NIMS では他を圧してナンバーワン ―― これほどの偉業が確実に達成できるのですから、「それで十二分」感が強いです。人それぞれ研究の方向性、趣味嗜好、器の大きさ、生産性、使命感の強さは異なります。これ以上を彼に期待するのは酷というものです。

死蔵したままになっている並列処理 MEM 解析プログラム Dysnomia は、日本結晶学会講習会「粉末 X 線解析の実際」(7 月 4〜6 日)における C コースの受講者にささやかな「おみやげ」として差し上げることにしました。PRIMA の賞味期限が切れかかっている今、門馬君の講義では当然 Dysnomia に言及しますから、参加者がそれを使えないようでは話になりません。また、大震災後に開催され、しかも本掲示板という巨大広告塔を欠いた同講習会に従来同様、参加者を引き寄せるためには、何らかの手を打つべきです。こういう時は太っ腹になるに限ります。Dysnomia は RIETAN-FP や VESTA のような巨大ソフトとは比べ物にならないほど小さいですが、キラキラ輝く珠玉のようなソフトです。末長く可愛がってやってください。そんな小物だけじゃ足りねぇと仰るなら、サインでも握手でもじゃんけんでも何でもやりますから、ぜひ同講習会に参加するようお願いいたします(AKB48 か、お前は!)。名工大の井田 隆先生の講義(A コース)では、回折プロファイルの解析について詳しく話していただきます。目新しいところでは、近く PDXL に実装される予定の RIETAN-FP 用 GUI に関する講義(B コース、No. 4)もありますよ。

本 Web サイトのリストラは、この掲示板に留まりません。今後、予告抜きで少しずつ進めていくことをご承知ください。

悪名高い本掲示板はこれにて一巻の終わりです。毎日読むのを日課にした結果、拙文から立ちのぼる毒気に免疫ができた方もおられると聞いています。長いこと本掲示板にお付き合いいただき、ありがとうございました。




嗚呼、最後の最後まで饒舌と冗長で押し通しちまった。平成軽薄体が骨の髄まで染み込んだ文章を矯正しないと、社会復帰を果たせないだろうなぁ。そこで 140 文字の制限があるツイッターでリハビリしようと思い立ち、善は急げ、早速登録しました。URL は


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です。少なくとも治療が終わるまでは、そこでボソボソ独り言を呟くことにします。差し支えなかったら、フォローしてやってください。フォロワーとは互いに直接メッセージをやりとりできます。本 Web ページについての自注もありますよ。

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