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HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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NIMS 発の論文で被引用数トップの地位を確立!
本エントリーは2017年06月26日に投稿した「NIMS 発の論文で被引用数トップの地位を獲得!」を2020年8月3日時点の最新データに基づいて更新したものです。

2000〜2010年の間に世界トップクラスの被引用数を獲得した100人の材料科学者のうち、唯一の日本人が不肖私めだったという椿事については「世界の材料科学者トップ100にランクイン」と題するエントリーに記しました。この衝撃的事実は、当時、特別顧問を務めていた PANalytical のオランダ本社からの通知により、遅ればせながら2016年夏に知りました。もちろん私は材料科学者と名乗れるほどの実績は持ち合わせていません。Materials Science Forum 誌に掲載された RIETAN-2000の先駆け版 (Izumi & Ikeda, 2000) に関する高被引用論文が「泉=材料科学者」という誤解に直結したのでしょう。当時、同社から広報活動に使わしてもらえないかと打診されたのですが、何分にも5年前の調査結果ですし、材料研究には興味がなかったため、丁重にお断りしました。その代わり、東日本大震災の直前にタイムスリップした私が書き散らしたという体裁に脚色し、上記エントリーに仕立て上げた次第です。

昔話はこれくらいにして、最新のトピックスに移りましょう。本日、Elsevier の文献データベース Scopus により物質・材料研究機構(National Instutute for Materials Science: NIMS。旧金属材料技術研究所と旧無機材質研究所を含む)の研究者が著者に含まれる全論文とそれらの被引用数を検索してみたところ、39,524報の論文がヒットしました。累積被引用数2,000以上の論文は11報に過ぎず、そのうち2報がなんと VESTA に関する論文 (Momma & Izumi, 2008; Momma & Izumi, 2011) でした。両論文では私の所属が NIMS となっているため、スクリーニングをくぐり抜けて検索結果にもぐり込んだのです。

特筆大書したいのは、VESTA 3に関する論文 (Momma & Izumi, 2011) の被引用数が6,866に達しており、2位の論文に大差をつけてトップをひた走っていることです。4万報近い論文の頂点に立ったのは快挙といって過言でありません。下図(macOS 用 python スクリプト VESTA.py により gnuplot でグラフ化)に示すように、その論文は発表以来、被引用数/年が単調に増加し続けている超弩級の成果であることから、今後、2位以下の NIMS 発論文が絶対に追いつけない、ぶっちぎりの首位に長く君臨し続けるに違いありません。NIMS で断トツの実績を誇る当該論文が材料とは縁もゆかりもないというのは、皮肉なことです。


そのような破格の水準を今後も維持していきたいので、VESTA で作成したイメージを含む原著論文やレビュー(学会誌などの解説記事を含む)を投稿し、書籍を刊行する際には、ライセンス契約を遵守し、上記論文を必ず引用してください。多種多様な分野の論文などで引用されることは VESTA のブラッシュアップのドライビング・フォースとなるだけでなく世界的な知名度の向上に役立ちます。故意か過失かは知る由もありませんが、かなりの割合(50 %程度と推測)で引用されていないように見受けられます。引用を怠った上、プレス発表の資料中で使う不届き者までいるのは苦々しい限りです。

VESTA は CrystalMakerDiamond に代表される高価な結晶構造作画ソフトが貧しい人々を意気消沈させるのを防ぐためのキラー・アプリケーションとして世界中で活用され、高い評価を得ています。商用ソフトは最重要の機能、すなわち「無料」を欠いているので、大手を振ってのさばらせるわけに行きません。結晶構造だけでなく VASP, ABINIT, WIEN2k を始めとするメジャーな電子状態計算プログラムで得られた 3D データも手軽に視覚化でき、詳細な英文マニュアルを提供していることが VESTA の普及と知名度向上に拍車を掛けています。

なお、旧バージョンに関する論文 (Momma & Izumi, 2008) の方は6位に留まりました。とはいえ今でも年間200回超引用され、合計2,704の被引用数を誇っているのですから、大したものです。「お役目ご苦労さん」と声を掛けたくなります。

VESTA の前身である VICS・VEND のペアについては、別なエントリー「VESTA の両親 VICS・VEND 秘話 ― 道楽の果て」(2011年12月20日)と解説記事「結晶構造と電子状態の三次元可視化システム VENUS」をお読みください。なお VICS・VEND のソースコードは CD-ROM 版「セラミストのためのパソコン講座」に収録されておりますので、独自の可視化ソフトを製作したいという勇猛果敢な方は参考にしてください。ただし、結晶構造描画と 3D データの可視化を受け持つプログラムを統合し、なおかつ VESTA を凌駕する逸品を製作しない限り、存在異議なしの誹りを免れません。

VICS・VEND をゼロから開発しなかったら VESTA は影も形もなかったことでしょう。私が要求した仕様を具現化するため、プログラマーとして奮闘した R. A. Dilanian 博士(現所属:メルボルン大学)に深く感謝します。

VESTA は未だに発展途上のソフトです。現在、シェルスクリプト、python スクリプト、Fortran プログラムなどで VESTA をコントロールするアプリケーション間通信機能を実装中です。完成の暁には VESTA の主要機能を外部プログラムでコントロールできるよう拡張され、結晶構造や等値曲面の変化をリアルタイム表示するだけでなく、ファイルフォーマットの変換エンジンや 3D イメージ出力ソフトとしても活用できるようになります。ご期待ください。

さらに四つの論文を加えた計六報
が30位以内にランクインしていたことを申し添えておきます。"No." の後ろが順位 (累積被引用数) を示しています。

No. 13では KF–K2HPO4 水溶液を使ってアナターゼの単結晶を水熱合成し、ラマンスペクトルの測定に供しました。後年、この論文がこれほど引用されるとは思いも寄りませんでした。

No. 14と No. 23はそれぞれ RIETAN-2000 と RIETAN-FP を利用して得た研究成果を発表する際には必ず引用するようお願いしています。RIETAN-2000 は RIETAN-98 = RIETAN-1998 中の年号を一の位で四捨五入した呼称です。いずれもヨーロッパで開催された国際会議の Proceedings に掲載された論文を被引用数のカウンター代わりに利用しているに過ぎないため、読む必要はまったくありません。

No. 16では MEM により CoO2 層間の電子密度分布を決定し、RIETAN-2000によるリートベルト解析に使う構造モデルの構築に貢献しました。独自開発した MEM 解析プログラム PRIMA(Dysnomia の前身)を初めて研究に応用して得た結果が Nature に掲載されたのは、幸運以外の何物でもありませんでした。また、この研究は単位胞内の総電子数が指定値から逸脱するという MEED の致命的(かつ隠蔽されていた)バグに気づかせてくれました(2005年2月26日の掲示板参照)。

6報もの論文が上位入りしたのは実に名誉なことで、誇らしい気分になります。ありがたいことに RIETAN によるリートベルト・MPF 解析を中核的コンテンツとする書籍「粉末X線解析の実際」(朝倉書店)が版を重ねている上、同書をテキストとする日本結晶学会講習会「粉末X線解析の実際」は近年、他に類を見ないほど多くの参加者を集め続け、同学会の財政収支改善に貢献してきました。このように波及効果が高く、注目を浴びる研究成果を挙げるための場を提供し、無闇に雑用を押しつけたりせず、野放しにしてくれた旧無機材質研究所に深謝します。
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