お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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最新版 RIETAN-FP・VENUS システムのお披露目を兼ねた講習会

1. 「ソフトは無料、参加費も無料!」へのこだわり


私は長年、粉末回折に関する講演や講義の依頼に応じてきました。その間の経験を通じ、一方通行の講義だけの講習会を受講しても粉末構造解析技術の習得は困難だと痛感するに至りました。そのため、科学技術人材育成事業 Nanotech CUPAL の一環として構造解析(サブコース A : 粉末回折)の講師に就任後は、PC を使う実習を積極的に導入するとともに懇切丁寧なチュートリアルを執筆し、できるだけ教育効果を上げるよう努めました。さらに、英語での講義用に作成した英文スライドは156枚に上ります。

2014年以来、当該人材育成事業に従事した結果、次の二点を再認識しました。
  1. ソフトウェアや解析技術について教えるには座学だけでなくハンズオン(体験学習)も必要不可欠である。
  2. ハンズオンでは、文献、URL、注意事項などが記載されており、実習内容を復習するのに役立つチュートリアルを配付することが望ましい。
講義や講演は事前の準備が楽な反面、聞き流されがちで、技術の習得はさほど期待できないといって過言でありません。

過去三年半にわたり営々と作成しブラッシュアップしてきた教材、すなわち講義用 PDF ファイル、インストーラー、チュートリアルは龍谷大岡山大神戸大京大九大で催したワンマン無料講習会で再利用しました。その結果、ほぼ同じ内容の講習会を NIMS 外で開けば、労せずして十数倍の参加者が集まるという深刻な格差を何度も直視する羽目に陥りました。主につくば市の研究機関が育成実施機関となっている Nanotech CUPAL 全般の傾向として、地理的理由から敬遠されるのです。おまけに、募集要項は講師の名前を明記しない不可解な様式に統一されています。こんな体たらくでは、実績と知名度で人を引き寄せられる講師はいないと暗示しているのも同然です。あくまでポスドクの雇用が主目的で、教育活動には腰が引けているという姿勢が透けて見えます。

そこで、少しでも多くの方々に入門コースに参加して頂くため、せめて参加費は無料にしてほしいと担当者に要望しましたが、その願いは叶いませんでした。育成対象外の方々、とくに学生からお金を徴収するのは苦痛以外の何物でもありません。心がポキッと折れてしまった私は、2017年度限りで Nanotech CUPAL に見切りを付け、その講師を辞任する決意を固めました。つくば市は交通の便が悪いだけでなく、市内にある筑波大、KEK、産総研からの受講者がさほど期待できません。自ら全国各地に足を運べば人が集まりやすい上、受講者の交通費と宿泊費も節約できる、と三年かけて悟ったのです。

一方、私は最低限のバランス感覚も備えています。東工大と Nanotech CUPAL の共催で粉末構造解析に関する無料講習会(サブコース A の入門コースに相当)を東工大・大岡山キャンパスで9月末に開催し、遅ればせながら Nanotech CUPAL の「卒業式」に代える心積もりです。詳細が決まり次第、本 HP に掲示します。初の東京開催ともなれば、Nanotech CUPAL 入門コースの四年分を上回る受講者が集まるでしょう。

2. ワンマン講習会 = 座学 + Windows・macOS を使う体験学習


来年度はまずゴールデンウィークの直後に名古屋でワンマン講習会を開催します:


第 22 回 ナノ構造研究所 材料計算セミナー

  RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析 

日時: 2018 年 5 月 7 日(月)・8 日(火)
会場: ファインセラミックスセンター地図



実習つきセミナーの開催はファインセラミックスセンター (JFCC) で初めてだそうです。ちなみに、私は2018年度から JFCC の客員研究員に就任します。本講習会は新所属先での初仕事に他なりません。

本セミナーは粉末構造解析・三次元可視化システム RIETAN-FP・VENUS システムなどを利用した構造解析技術に関する講義{半日)と実習(Windows 機と Mac に半日ずつ)からなっています。上記 PDF ファイル中の「申込み方法」に従い、A、B、C を一つ以上指定して参加登録してください。コマンド集合体 BusyBox を活用したシェルスクリプト (Windows) とテキストエディター Jedit Ω を基盤とする RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境 (macOS) をお披露目します。両者を実装したWindows・macOS 用インストーラーに加え、詳しいチュートリアル(約130ページ)を配付するため、実習内容の復習は簡単です。講義には百数十枚のスライドを使いますが、カラー印刷の経費と手間をカットするため、参加者には二つの講義用 PDF ファイル
  • 粉末回折データの解析技術 — リートベルト法
  • 粉末回折データの解析技術 — パターン分解、未知構造解析、MEM
を当日までに差し上げます。さらに二種類の副読本も付録として添付します。

ハンズオンには秀丸エディタ, Jedit Ω, Sumatra PDF, RIETAN-FP v2.86, gnuplot, WinPLOTR (Windows 用のみ), DICVOL, ORFFE, lst2cif, cif2ins, combins, sda, ALBA, superflip, EDMA, FOX, MPF_multi.command+Dysnomia, VESTA などのプログラムを使います。上記のソフトウェア群は
  1. ピークサーチ
  2. 指数づけ
  3. バックグラウンドの決定
  4. リートベルト解析
  5. 多相リートベルト解析用入力ファイルの自動作成
  6. パターン分解
  7. 最大エントロピー・パターソン解析
  8. 未知構造モデルの構築: 双対空間法とレプリカ交換法
  9. MPF (MEM-based Pattern Fitting) 解析
  10. 結晶構造と電子密度分布の三次元可視化
といった広大な領域を網羅しています。リートベルト解析は one of them に過ぎません。ただし時間の都合上、一部のプログラムは臨機応変にスキップする可能性が大です。といっても、上述のように実習内容はチュートリアルに詳述してありますから、受講者に迷惑をかける恐れはありません。

中でも cif2ins と 未公開ユーティリティー combins の連携プレーは注目に値します。cif2ins は CIF 中の結晶データをひな形ファイル template.ins に導入することにより RIETAN-FP 用入力ファイル *.ins に変換します。一方、 combins は複数の *.ins から多相解析用入力ファイル multi_phase.ins を自動生成します。multi_phase.ins を改名し、必要に応じて中身を編集してからリートベルト解析に移行します。

ストリームエディター sed や Perl を活用したシェルスクリプト sda.command による逐次リートベルト解析の自動化は、他に類を見ない独創的な技術です。もちろん文字列の置換には正規表現を使えます。今回の実習では、BaSO4 の粉末X線回折データのリートベルト解析における選択配向ベクトルの決定に応用します。sda.command は温度、圧力、化学組成を変化させて測定した一連の強度データを一挙に自動解析できるよう設計しました。

比較的時間のかかる計算中に、訴求効果の高いデモンストレーションとして
を実演します。両者を実習から外すのは TeX LiveMiniconda がかなり大きなディスクスペースを占有するためです。ただし後述のチュートリアルを参照すれば、TeX Live と Miniconda は容易にインストールできます。

3. RIETAN-FP・VENUS統合支援環境の新装開店


参考までに、新たに支援環境に導入した BusyBox と Jedit Ω を以下に紹介しておきます。

3.1 BusyBox に魅せられて


Windows 用 RIETAN-FP・VENUS システムに含まれるバッチファイルでは、GnuWin32 の UNIX コマンドを長く利用してきました。コマンドプロンプトが提供する貧弱な環境やコマンドは複雑なデータ処理に向いていないためです。今年の初めに Windows 用 BusyBox を64ビット化した busybox64.exe の存在を知り、非力かつ時代遅れなバッチファイルを撲滅するために一も二もなく飛びつきました。組み込みシステムが主な用途の一つである BusyBox で、一部のコマンド(たとえば bc)や機能(たとえばプロセス置換)が削られているのは承知の上でした。

Windows Subsystem for Linux は Windows 10 でしか使えない上、純然たる Linux に比べると性能が落ちます。Cygwin はエミュレーターなので、プログラムの実行速度を低下させます。それに、拙作ソフトのユーザーにそれらのインストールを強制する訳にはいきません。

Windows 用 BusyBox の bash ウィンドウや bash スクリプトでは、BusyBox が内蔵している全 UNIX アプレットがパスを通さずに使えます。UNIX 用アプリケーションを Windows 機に移植するのでない限り、軽量級の BusyBox で十分です。BusyBox さえあれば、既存バッチファイルを bash スクリプトに置き換えられます。そこで、1月下旬から約一ヶ月かけて Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境に含まれる全バッチファイル *.bat を bash スクリプト *.command に書き換え、GnuWin32 のコマンドと onigsed(日本語文字列置換用)の代わりに RIETAN_VENUS¥Commands フォルダー(下図)に置きました。*.command に対応する秀丸マクロ *.mac も並行して改訂しました。今後、配付ファイルと実習用インストーラーにそれらを含めるのは言うまでもありません。



RIETAN_VENUS¥Commands フォルダーの内容。qpdf は PDF ファ
イルの合体に使用するプログラム。busybox64.exe は bash.exe に改
名した。bash.exe のサイズが 511 KB しかないことは注目に値する。

3.2 Jedit Ω の徹底活用を目指して


従来、macOS 用 RIETAN-FP・VENUS システムは Jedit Ω の前世代版 Jedit X 上に構築していましたが、64ビット・アプリケーション Jedit Ω に乗り換えました。Jedit Ω は
  1. 構文カラーリング(下図)
  2. 正規表現を使えるスマートインデックス(下図)
  3. メニューショートカットによる AppleScript の実行
  4. 階層化したマクロメニュー
  5. 優れた GUI を通じ二つのファイルを比較
といった至便の新機能を備えています。 5は別売りのユーティリティー Jdiff X に相当します。Jedit Ω は Jedit X より動作が俊敏で、価格は1,200円と手頃です。OS X 10.10 (Yosemite) 以降で使えます。スマートインデックスで後方参照(\1, \2, …)を使えるのには感激しました。秀丸エディタの相当機能、すなわちアウトライン解析の枠では、そのような離れ業は無理な相談です。



スマートインデックスメニューで段付けされたブックマークを表示し、
“Structure parameters” を選ぶ。構文カラーリングにより Select ブ
ロックと If ブロックの構文がそれぞれ赤と青の文字で表示されている。

4. おわりに


当初、JFCC における実習では Mac だけを使い、9月末に開催する東工大での講習会で Windows 機を使用する予定でしたが、強力なモチベーションに背中を押された結果、コロっと気が変わりました。Windows・macOS 上での実習を一日で終わらせなければならぬ上、実習は遅れるのが常なので、昼休みは抜きも同然と覚悟しています。タイミング的・体力的にも悲愴感が漂うデスマッチとなるでしょう。喉の酷使により声が割れたり、かすれたりするのが心配ですが、微力を尽くして乗り切ります。

JFCC では今秋に VESTA の講習会(ハンズオンを含む)も開催します。ご期待ください。

本講習会の参加登録者が想定外の勢いで増え続けたため、A (講義) と B (実習: Windows) の定員をそれぞれ90名と65名に増やしました。なんと JFCC のホームページに会告が掲示される前日(4月2日)にいずれも満席となってしまい、参加登録を締め切らざるを得ませんでした。90名という参加登録者を2017年度の Nanotech CUPAL サブコース A(計4回)の参加者18名と比べると、後者の5年分に相当する人数を一回で集めたことに相当します。JFCC における初仕事がこれほどの盛会となったことは嬉しい限りです。
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