お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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ムラ社会の掟
拙作ソフト(RIETAN-FP、周辺プログラム、VESTA を含む VENUS システム、RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境)と詳細なマニュアルをネットで配付し、単行本の執筆や講習会など普及活動にも取り組み、積極的な利用を呼びかけている。それらの無償ソフトの人気が上々で、種々の研究・開発・教育に貢献しているのは誰の目にも明らかだろう。血と汗と涙の結晶が世に出て活躍するのは喜ばしい限りだ。しかし、己の責務でもないのに過剰サービスを提供していると感じ、時には空しさがこみ上げてくる。太っ腹にも程があるのではなかろうか。

SPring-8と J-PARC の粉末回折装置グループがネットで有用なソフトを全世界に向け無償でネット公開しているか、プログラム中で使用している主要な数式などを網羅した懇切丁寧な英文マニュアルや解説文書を提供しているか、解析のノウハウやテクニックを出し惜しみせず公開しているかというと、決してそんなことはない。むしろ、粉末回折装置グループを仕切っているお山の大将が妙ちきりんな制約を設け、装置グループで使っているローカルなソフトの拡散を防ぎ、ソフトの詳細やノウハウは企業秘密として隠匿し、特定ユーザーを囲い込み、そこから利益を吸い上げているように見える。カリスマ性やオーラなど微塵もない、器の小さいボスに、腰巾着や手下はただただ付和雷同しているだけ。自分たちが維持・管理している装置だけで生計を立てている一点豪華主義者の姑息なサバイバル作戦といったところか。

「PRIMA vs. ENIGMA」 にも記したように、MEM 解析プログラム ENIGMA は人気と実績において PRIMA の後塵を拝している。その理由の一つとして、PRIMA は誰でも自由にダウンロードでき、ドキュメンテーションが充実していることが挙げられる。一方、ENIGMA はネットでは公開されていない。上記の囲い込み戦略に加え、MEM 解析前後の総電子数が変わるという MEED の致命的なバグで痛い目にあい、しかも MEED での解析結果を報告した数年間の論文で総電子数が真値から逸脱していたという事実を公表せず、ひた隠しに隠しているというスキャンダラスな事実が白日の下にさらされたこと(「ネガティブな情報の発信」参照)がトラウマとなっているらしい。なお、ENIGMA で MEM 解析を行うと、出力の最後にプログラムの受領者の名前が常に出力され、それによってソフトの拡散を防いでいると聞いている。この想像を絶するほどセコい「目玉機能」には、ただただ呆れ果てるばかりだ。

J-PARC で開発している Z-code も所詮は日本の中性子ムラでしか通用しないパッケージソフトだ。Z-Rietveld (Z-code のコンポーネント) の講習会では、実際に TOF 粉末中性子回折装置でデータを測定した人以外の参加者からは、実習に使ったソフトを回収していると聞く。噴飯物だ。醜態をさらしているといって過言でない。拡散を防ぎたくなるほど安定性や性能が低いソフトでお茶を濁しているのだとしたら、講習会の開催は参加者に失礼だろう。そんな出し渋りを押し通していたら、Z-Rietveld にあらかじめ習熟しておくのは無理だし、不具合のフィードバックもままならない。いったい何を目的とする、誰のための講習会なのか。

Z-Rietveld はパターンのフィットが今一なだけでなく、(とくに、圧倒的に利用希望者が多いはずの Windows 版が)極端に遅いという話も複数のソースから耳に入っている。定番ソフトを用いたリートベルト解析の経験者には耐えがたいほど低速なようだ。対称性が低く、非対称単位内の原子が多い物質で、格子面間隔(d) が 0.5 Å程度までの回折データを解析しようものなら、とてつもなく時間がかかるだろう。もちろん多相試料ではなおさら遅くなる。

ドキュメンテーションについては、Z-Rietveld は RIETAN-FP の足下にも及ばないようだ。国際的に開かれているべき施設なのだから、プログラム内で用いている主要な数式を網羅した詳細な英文マニュアルくらいは提供して然るべきだが、そういう話は寡聞にして聞かない。当事者でさえ、学術的価値があり、世界に通用する最先端ソフトとはみなしていないのだろう。なお、結晶解析ソフトのマニュアルはどうしても数式と文献が多くなるので、老婆心ながら、鈍重なおバカソフト(Microsoft Word)などでなく LaTeX で書くようお勧めする。ご所望なら、RIETAN-FP のマニュアルのソースコード *.tex を再利用のために寄贈してもよい。


上図に例示するように、しばしば粉末中性子回折を用いる研究の対象となる固体酸化物型燃料電池、リチウムイオン電池、水素吸蔵合金、巨大磁気抵抗を示す物質などの材料には第一遷移元素(Mn, Fe, Co, Ni など)を含む物質が多い。それにも関わらず、Z-Rietveld がごく単純なコリニア磁気構造すら解析できないという非実用的な超底辺仕様でお茶を濁しているのも情けない限り。たとえば核散乱反射と磁気反射が完全に重なり合う強磁性体だったら、お手上だ。磁気構造解析を FullProf や GSAS に丸投げするのは手抜き以外の何物でもない。複数のリートベルト解析プログラムを習得する時間、能力、語学力、気力を持ち合わせているユーザーがどれだけいると思っているのだろうか。TOF 粉末中性子回折データの解析は、Z-Rietveld より圧倒的に機能が充実しており、計算速度がはるかに速く、十分枯れている上、ドキュメンテーションも充実しており、しかもネットで最新版を入手できる FullProf か GSAS 一本に絞る方が、どう見ても合理的だ。錬金術(Alchemy)を使えば、マルチバンクで測定した TOF 粉末中性子回折データの MEM 解析も可能となる。後出しにもかかわらず独創的技術が皆無に等しい手抜きソフト Z-Rietveld の存在意義はどこにも見出せない。

要するに、血税で運営されている放射光や中性子の施設でさえ、解析ソフトやその使用法に関するサポートや情報提供は劣悪なままに留まっているのだ。時々その場限りの講演会や講習会を開いて体裁を取り繕っているだけ。短時間の講演や講義をいくら聞いたところで、実戦に役立つ知識やノウハウが身につくはずはなかろう。

要するに、大型施設はデータさえ測定できればいいじゃねぇかという、サービス精神の欠如した姿勢に徹しているのだ。そういう施設とは無縁の存在である自分が、どうしてそれらの施設のユーザーに無償でサービスしなければならないのか ―― 首を傾げざるを得ない。一度、SPring-8のエラい人にそういう疑問をぶつけてみたことがあるが、言葉を濁すばかりで、答えらしい答えは返って来なかった。

閉塞感に満ちた放射光ムラや中性子ムラの原住民根性丸出しのローカル指向を打破するにはどうしたらいいのか。ムラ社会(タコツボ)という閉鎖的利益共同体の改革は不可能に近い。福島第一原発のメルトダウンと水素爆発で醜態を晒し、木っ端微塵に砕け散るかに見えた原子力ムラでさえ、未だにしぶとく生き残っているのだから。私はここ十年ほど丘の上からムラを見下ろし観察しているだけで、ムラ社会の排他的な風習や文化には染まっておらず、ムラ八分に怯える立場にも立っていない。ムラのステークフォルダー(利害関係者)でない以上、ムラに融け込んで晩節を汚す気もさらさらない。「あっしには関わりねえことでござんす」と傍観しているに限る。ムラ人はムラ人、自分は自分、我が道を行くだけだ。もちろん、拙作ソフトの改善とメンテナンスは、限りある身の力が尽きるまで続行する。
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