お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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OS X・Windows 用 TeX Live のインストール
最近、結晶構造解析の結果を文書化するための CIF・TeX 関連ユーティリティー cif2pdf, E2J, refln を実行するための Jedit X秀丸用のマクロを作成した。 いずれ公開する予定だが、cif2pdf と E2J を実行するには、TeX Live が必要不可欠である。ここで OS X と Windows 上で TeX 文書をタイプセットする環境を整えるための情報を提供しておく。

OS X 用 TeX Live は MacTeX の Web ページから MacTeX.pkg をダウンロードし、それをダブルクリックしてインストールする。OS X El Capitan の場合 /Library/TeX/texbin にパスを通せば、TeX 関連プログラムが使えるようになる。パッケージの更新法や TeXShop の設定については、「Mac 用 TeX による英文・和文のタイプセット」を参照されたい。

Windows 用 TeX Live は CTAN から install-tl-windows.exe をダウンロードし、右クリックしてから「管理者権限として実行」を選べば、perl.exe が裏で動いてインストールされる。TeX Live YYYY("YYYY" は "2016" のような年号を表す)の場合、システム変数 Path に C:¥texlive¥YYYY¥bin¥win32 が追加される。TeX 関連実行形式プログラムはそのフォルダーに入っている。同フォルダー中の tlmgr-gui.exe をダブルクリックし、[導入済みのものをすべて更新] をクリックすればすべてのパッケージを更新できる。
ORFFE による結合角と二面角の計算
RIETAN-FP の入力ファイル hoge.ins のひな形では、幾何学的パラメーターを計算するためのプログラム ORFFE 用の結合距離計算命令 201 と結合角計算命令 002 についてごく簡単に説明している。通常は非対称単位内の原子を対象に結合距離を計算するための 201 命令だけを (2I5, 15X, I5) という書式で入力すればよい。三つの整数、すなわち

Col. 1–5: 201
Col. 6–7: 非対称単位内の原子の数(独立サイトの数)
Col. 26–30: 10×最大結合距離/Å

はいずれも右詰で入力する。

RIETAN-FP・VENUS システムに同梱した ORFFE (Busing, Martin & Levy, 1964) では、ORFFE を二回続けて実行すると結合距離と結合角が次の2段階で計算される:

1回目: 201 命令を実行した後、特定サイトの結合をすべて組み合わせた 002 命令が hoge.xyz の末尾に追加される。
2回目: 201 命令を再実行した後、002 命令により結合角が計算される(RIETAN-FP_manual.pdf, Appendix D.3を見よ)。

hoge.ins 中に 002 命令を入力せず ORFFE に任せてしまえば、時間の節約になる上、入力ミスを犯さずに済む。ただし、かなり多くの結合角が出力され、hoge.dst が膨れ上がるのを覚悟してほしい。

ORFFE の出力ファイル hoge.dst に記されているように、ORFFE では三つの整数 A, S, C により原子の種類と位置を特定する
An atom is designated by a pair of integer numbers in parentheses (A,1000*C+S).
A is the number of the atom in the list of atomic parameters.
S is the number of the symmetry information to be applied, and C defines the unit-cell translations
hoge.dst に A, S, C の一覧表が出力される。

ORFFE のマニュアルでは、二面角 (dihedral angle) を
Angle between normals to planes defined by atoms 1, 2 and 3, and atoms 4, 5 and 6, respectively. If right-hand fingers are curved so that they can pass successively through atoms 1, 2 and 3 then the thumb is in direction of normal. Sign of angle will be positive if this normal makes an acute angle with vector from atoms 4, 5, and 6.
と定義している。hoge.dst には "Dihedral angle between planes each defined by three atoms" と出力される。

二面角は 003 命令で計算する。hoge.ins には、それら6原子の A と 1000*C+S を原子1, 2, 3, 4, 5, 6の順に5桁ずつ右詰で入力する:

Col.   1–  5: 003
Col.   6–10: A1
Col. 11–15: 1000*C1+S1
Col. 16–20: A2
Col. 21–25: 1000*C2+S2
Col. 26–30: A3
Col. 31–35: 1000*C3+S3
Col. 36–40: A4
Col. 41–45: 1000*C4+S4
Col. 46–50: A5
Col. 51–55: 1000*C5+S5
Col. 56–60: A6
Col. 61–65: 1000*C6+S6

VESTA の Utilities メニューで Geometrical Parameters を選んで、*.ffe 中の結合距離と結合角を結晶模型と対応させれば、6原子の A と 1000*C+S を容易に知ることができる。

ORFFE は分散共分散行列の非対角項まで含めて幾何学的パラメーターの標準不確かさ (standard uncertainty) を計算するため、論文や報告書には ORFFE で計算した値を報告することが望ましい。上述の三命令で計算した値を報告すれば十分だろう。
Jedit X 用 LaTeX 組版支援環境
近年、主に Mac 用プログラム TeXShop で LaTeX 文書をタイプセットしてきた(「Mac 用 TeX による英文・和文のタイプセット 」参照)。しかし、タブで *.tex を切換えられない旧式なエディターは、複数のファイルを並行処理するのに向いていない。分割コンパイルではソースウィンドウがやたらに増えてしまう。さらに内蔵 PDF ブラウザーがやや重く、使い勝手も今一つだった。

こうした不満が昂じた挙げ句、ついに OS X 用エディター Jedit X 上で LaTeX 文書のタイプセット用マクロ Typeset, BibTeX, MakeIndex の自作に踏み切った。いずれも AppleScript (*.scpt) と bash スクリプト (*.command) の連携により作動する。システム環境設定の「キーボード」でそれぞれ ⌘-T, ⌘-B, ⌘-I のショートカットを割り当てた。*.tex が最前面のファイルになっていると、「表示 > 構文のカラーリング」で
   ✓ LaTeX
とチェックされる。Jedit X の操作に習熟している自分にとっては、非常に使いやすい。Typese.scpt はまず編集中のファイルのファイル名を絶対パス付きで取得し、必要なら自動保存してから、当該ファイル名を引数として Typeset.command に起動する。

Typeset.command の中核部分を以下に示す。

if egrep -q '^\\documentclass.*{j.+}' ${hoge}.tex ; then
   platex -kanji=sjis -file-line-error ${hoge}.tex
   dvipdfmx ${hoge}.dvi
elif egrep -q '^\\documentclass.*{ltjsarticle}' ${hoge}.tex ; then
   luajittex --fmt=luajitlatex.fmt ${hoge}.tex
else
   pdflatex --file-line-error ${hoge}.tex
fi
open -a Skim ${hoge}.pdf

${hoge}.tex は LaTeX テキストファイルの名前である。変数 ${hoge} は Jedit X の最前面ファイルの名前から取得する。egrep により拡張正規表現で documentclass を検索し、3種類の組版エンジン (pLaTeX, LuaJITTeX, pdfTeX) から一つを選ぶ。もともと軽量なツールである egrep を quite mode (-q) で実行するので、documentclass の判定は瞬時に終わる。私は jsarticle と ltjsarticle 以外の日本語用 documentclass は使わないので、場合分けは三つで済む。

LuaJITTeX を使えるようにするための手続きは http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texwiki/?LuaJITTeX を参照していただきたい。「インストール > TeX Live の場合」に記されている。

*.tex ⇄ PDF 相互参照機能 SyncTeX を切り捨てたことから、pLaTeX と pdfTeX による組版は高速である。とくに英文専用の pdfTeX は滅法速い。一方 LuaJITTeX は just-in-time compiler で実行するにもかかわらず鈍足な上、イタリックフォントに関する目障りな警告をコンソールに吐き出す。枯れ切った pLaTeX と比較すると、とりたててメリットを感じない。

PDF は軽快なフリーソフトウェア Skim で閲覧することにした(最後の行)。Adobe Reader と違って現在表示中の PDF がロックされず、再組版後に同じページが表示されるという点でプレビューに優っており、LaTeX との相性がすこぶる良い。

かねてから Jedit X 用マクロのプログラミングに習熟しているため、短時日のうちに環境を構築できた。自分にとって余計な機能をそぎ落とした簡易 LaTeX 組版機能に過ぎないものの、自作マクロに対する愛着も手伝い、とても気に入っている。その結果、長く愛用してきた TeXShop の存在意義は薄れてしまった。併用はしていくが、その出番は激減するだろう。

これらの自作マクロは汎用性がないため公開を控えるが、物好きにも利用を希望される方には喜んで差し上げる。
反射リストからデータを抽出して CIF を作成するシェルスクリプト
RIETAN-FP で NPRINT > 0 に設定してリートベルト解析を実行すると、"Summary of possible reflections (based on the refined parameters)" というタイトルの反射リストが標準出力ファイル hoge.lst の末尾近くに記録される。このリストから
  1. h
  2. k
  3. l
  4. 格子面間隔 d
  5. 観測積分強度 Io
  6. 結晶構造因子 |F|
  7. 半値全幅 H
を取り出し、各データをスペースで区切って Crystallographic Information File (CIF) を作成するためのシェルスクリプト refln.command を作成してみた。lst2cif で出力した CIF と hoge.lst から PDF を作成するユーティリティー cif2pdf に反射リフトを供給する役割を受け持つ。

Cu Kα 特性X線で測定した粉末回折データの場合、Kα2反射のデータがリストに含まれる。また、部分的にプロファイルが欠落した高角反射(Iobs: H)の行も記録される。多相試料のリートベルト解析では、不純物相の反射も出力される。これらの不要な行は削除し、残った行から必要なデータをピックアップして標準出力に流せばよい。refln.command のソースコードは次の通り:

#!/bin/bash
# Output parts of a reflection list after refinement in hoge.lst

# Labels for associated multiple data values
cat << EOS

_loop
   _pd_peak_id
   _refln_index_h
   _refln_index_k
   _refln_index_l
   _pd_peak_2theta_centroid
   _pd_peak_d_spacing
   _pd_peak_intensity
   _rietan_i100_meas
   _refln_F_cal
   _pd_peak_width_2theta
EOS

sed -n '/Iobs *Ical/,/^$/p' $1 | sed '1d;$d' | \ (1)
awk -v c9=$(grep "_pd_peak_intensity =" $1 | sed 's/^.* \* //') \ (2)
   '$2 == 1 && match($6, /[+-]2/) == 0 && $9 != "H" \ (3)
   { i++; if ($9 == "-") print i, $3, $4, $5, $7, $8, $9, $9, $11, $14; \ (4)
   else printf "%s %s %s %s %s %s %10.5f %6.2f %s %s\n", \ (5)
   i, $3, $4, $5, $7, $8, c9*$9, 0.001*$9, $11, $14 }' | \ (6)
sed -r 's/\s\s+/ /g' (7)

exit

_rietan_i100_meas は最強反射の観測積分強度を 100 としたときの相対強度の自家製定義である。本来はピーク強度を対象とすべきなのだろうが、hoge.lst を処理対象としているため、積分強度を対象として計算せざるを得なかった。

この bash スクリプトはややこしいリスト処理をわずか一行の呪文でやってのける。その行は非常に長いので、(1)(7) に7分割した。

(1) では、sed の2連発により hoge.lst から反射リストの部分を抜き取る 。

(2) では、grep と sed をパイプでつなぎ hoge.lst から抽出した数値を -v オプションで変数 c9 として awk に渡す。

(3) は awk のパターン部分であり、Kα2反射や 2θmax 付近の反射(9番目のフィールドが "H")をフィルターにかける。必要に応じて (3) を変更すれば、PDF に出力する行を変えられる。

(4)(6) が awk のアクション部分であり、フィールド(3〜5, 7〜9, 11, 14)を指示して出力する。 Iobs が '-'(一部の観測データが欠落)の反射はそのまま出力する (4)(5)(6) がすべてのデータがそろっている反射の処理に相当する。最強反射で 100 000 となるように正規化した観測積分強度 Iobs にそれぞれ c9 と 0.001を乗じた値をフィールド No. 9 と 10 として出力する。

最後に sed によりフィールド間を単一スペースに統一する。そこまで徹底する必要はないが、いざとなれば特定のフィールドを cut で抽出できるというメリットがある。

refln.command の引数 ($1) は hoge.lst である。refln.command をパスの通ったフォルダーに置き、
   refln.command hoge.lst > hoge-refln.cif
というように入力して標準出力をテキストファイルにリダイレクトすれば、CIF が生成する。Windowsの場合は、RIETAN_VENUS¥Command フォルダーに置かれた bash.exe のウィンドウで実行すればよい。

たとえば Fapatite.lst を処理すると、次の出力が得られる:
_loop
   _pd_peak_id
   _refln_index_h
   _refln_index_k
   _refln_index_l
   _pd_peak_2theta_centroid
   _pd_peak_d_spacing
   _pd_peak_intensity
   _refln_F_cal
   _pd_peak_width_2theta
1 1 0 1 16.877 5.24918 1.21318 5.35 11.0711 0.07402
2 2 0 0 21.891 4.05690 2.34131 10.33 29.9436 0.07424
3 1 1 1 22.945 3.87283 2.10185 9.27 21.1948 0.07430
4 2 0 1 25.464 3.49510 0.62246 2.75 12.8217 0.07449
5 0 0 2 25.864 3.44192 13.12474 57.88 147.1135 0.07452
6 1 0 2 28.139 3.16861 4.29895 18.96 37.4418 0.07472
7 2 1 0 29.095 3.06673 5.02640 22.17 58.8922 0.07482
8 1 2 0 29.095 3.06673 0.46282 2.04 17.8710 0.07482
9 1 2 1 31.921 2.80131 9.46481 41.74 66.0020 0.07514
・・・

エディターや表計算ソフトなどで GUI を通じて同様の表処理を繰り返すのは、あまりにも泥臭く面倒だ。場合分けを含む表形式テキストデータの複雑な処理は awk の独壇場といって過言でない。このスクリプトをひな形として書き換えれば、RIETAN-FP などが出力する種々のテキストファイルから、必要に応じて任意のデータを抽出してテキストファイルに出力できる。ぜひ活用していただきたい。
Bond valence sum を用いてペロブスカイトの構造安定性を予測するプログラム SPuDS
SPuDS (Structure Prediction Diagnostic Software) [1–3] はMichael W. Lufaso 博士(北フロリダ大学)によって開発された Fortran 77 プログラムである。彼の Web サイト で Windows 版が無償公開されている。
  1. M. W. Lufaso and P. M. Woodward "Prediction of the crystal structures of perovskites using the software program SPuDS," Acta Crystallogr., Sect. B: Struct. Sci., 57, 725 (2001).
  2. M. W. Lufaso and P. M. Woodward, "Structure and Bonding," Vol. 158 (2013), pp. 59–90.
  3. 遠山武範, 齊藤高志, 島川祐一, "機能性酸化物材料の設計・合成・構造物性評価・電子構造解析:新規 A サイト秩序型ペロブスカイト酸化物", 粉体および粉末冶金, 57, 779 (2010).
  4. 島川祐一, "機能性遷移金属酸化物の新しい設計手法", 化学, 71, 39 (2016).
RIETAN-FP v2.7 と cif2ins の公開
RIETAN-FP v2.7 を含む Windows・OS X 用 RIETAN-FP・VENUS システムのファイル三つをアップロードしました。新配付ファイルにおける改善点は以下の通りです:
  1. hoge.ffo 中の "I"(積分強度)として CALCI(I) を出力し、吸収因子などの寄与を含めた。
  2. hoge.inflip 中で FWHM と |F|2 のデータ間に余程のことがない限りスペースが入るように、|F|2 に割り当てる桁数を一つ増やした。
  3. Crystallographic Information File (CIF) のテキストファイル hoge.cif を RIETAN-FP 用ユーザー入力ファイル hoge.ins に変換するためのユーティリティー cif2ins を新たに作成した。*.ins の雛形ファイルとして template.ins(固定名)というファイルを同一フォルダーに置くという仕様にした。
  4. cif2ins で hoge.ins にデータを書き込む都合上、文字型変数 PHNAME の長さを 68 に増やした。
  5. Bond Valence Sum (BVS) マップ可視化用 Python スクリプト PyAbstantia の入力ファイル BVS3D.inp を出力する機能を RIETAN-FP に追加した。単位胞中の原子リストの作成には既存ルーチンを再利用した。BVS3D.inp 中には単位胞中の全原子について元素名、分率座標 (x, y, z)、占有率が出力されており、電子状態計算などで流用することも可能である。
  6. RIETAN-FP による粉末回折パターンのシミュレーション (NMODE = 1) に引き続き PyAbstantia を実行し、計算結果を VESTA で視覚化するようシェルスクリプト RIETAN.command を拡張した(OS X 限定)。
  7. OS X 用シェルスクリプト *.command でファイル関連のエラーが発生したとき、ターミナル・ウィンドウの閉じ方を指示するようにした。
  8. Windows 用 MPF 解析シェルスクリプト MPF_multi.command における RIETAN-FP の実行形式ファイル名を修正した。
  9. Windows・OS X 用インストーラーを徹底改良した。
  10. documents フォルダー内の5つの PDF ファイルを v2.7 に対応した内容に改訂した。
  11. Windows 用 Ghostscript を v9.18 にバージョンアップした。
cif2ins は CIF をかなり綿密にチェックしてくれるので、CIF の記述ミスを検出するのにも使えます。たとえば CIF 中の各行は80桁を越えてはならないというルールがありますが、cif2ins で hoge.cif を処理すると、80桁オーバーの行をただちにターミナル (OS X) あるいはコマンドプロンプト (Windows) のウィンドウ中で指摘します。hoge.cif 中に "#std" (standardize の略) という注釈行を挿入すると、cif2ins は RIETAN-FP に内蔵されている Structure Tidy による結晶データ標準化用の hoge.ins を出力します。"#std" を追記すべきか否かは、自分で判断してください。引き続き、hoge.ins を対象として RIETAN-FP を実行すると、hoge.lst の末尾に標準化された格子定数と原子座標が出力されます。後は hoge.ins にそれらをフィードバックするだけです

CIF の文法に則っているにもかかわらず cif2ins が正常に hoge.ins を出力しないときは、お手数でも当該 CIF を私にお送りいただければ幸甚です。将来のバージョンで改善するよう努めます。

BVS マッピングは化学結合の本質の一部を把握した秀逸な手法であり、リチウム・ナトリウムイオン二次電池や固体酸化物燃料電池 (SOFC) におけるイオン伝導経路を推定するための強力、簡便、ローコストなツールとして役立ちます。参考までに、超イオン伝導体 α-AgIナトリウムイオン電池材料 Na2/3(Mg0.28Mn0.72)O2 の伝導経路をご覧ください。

PyAbstantia は Adams (2000) が提案した方法により BVS の三次元分布を計算するためのプログラムであり、西村真一氏(東大)により開発されました。著作権の関係上、今回の配付ファイルには同梱していません。PyAbstantia をお使いになりたい方は、西村氏に直接問い合わせるようお願いいたします。PyAbstantia が出力するバイナリーファイル BVS3D.pgrid 中のボクセルデータは VESTA で 3D 可視化できます。BVS-3D マップと PyAbstantia については11月20日(金)に名工大で研究会を開き、作者自身に詳しく解説していただく予定です。また「BVS の 3D 分布計算プログラム PyAbstantia」という長文ノートを Evernote で作成しましたので、今後 PyAbstantia を利用していくことにした方々は私にご連絡ください。公開ノートの URL をお教えします。

今回からマニュアルは pdfTeX や pLaTeX でなく LuaTeX で組版するよう変更するとともに、フォントサイズと行間隔を統一しました。ドキュメンテーションは苦役以外の何物でもないので、将来性のあるタイプセット・エンジンの導入は、新しもの好きの自分にとって格好の気晴らしになりました。処理はやや遅いものの、英文・和文共通のためタイプセットメニューでのコマンド切り替えが不要で、PDF ファイルが直接得られる点が気に入っています。今、自作ソフトに LuaTeX を応用しようと目論んでいる最中です。
RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムの講習会
8月に名工大付属図書館で催したシンクロトロン光利用者研究会(第3回 XRD グループ)での実習が好評だったことに意を強くし、ほぼ同様の実習を含む講習会を関西圏の大学でも出前開催したくなりました。そこで、拙作ソフトのユーザーに相談し、協力をお願いしておりましたが、このほどプログラム、日時、場所が確定しました:

RIETAN-FP・VENUS システムと外部プログラムによる粉末構造解析
日時: 2015年10月27・28日
場所: 龍谷大学 瀬田キャンパス 3号館
参加費: 無料

初日は座学だけですが、二日目は Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境秀丸エディタ用マクロの集合体)上で WinPLOTR, DICVOL, RIETAN-FP, cif2ins, ALBA, Superflip, EDMA, Dysnomia, gnuplot, Ghostscript, VESTA などによる実測強度データの処理(ピークサーチ、指数づけと格子定数の精密化、バックグラウンドの見積もり)、リートベルト解析、hoge.cif → hoge.ins 変換、ハイブリッド・パターン分解、最大エントロピー・パターソン解析、チャージフリッピング、電子密度ピークへの原子の割り付け、MEM 解析、解析結果のグラフ化、結晶構造と電子密度の三次元可視化というコンテンツ過多気味の実習を行います。RIETAN-FP は近日中に公開予定の v2.7 を使用します。

これほど多くのプログラムを次から次へと実行していくとなると、何も後に残らないのではないかと危惧する向きが多いでしょう。心配無用です。詳細を好評するのは避けますが、後で各自復習できるよう意表を突いた工夫を凝らしてあります。さらに、無味乾燥な内容とならぬよう適度なエンターテインメント性も導入します。時間が余ったら科学英語論文執筆について一席ぶちます

A〜Z ドライブに対応可能なインストーラーによる上記ソフトウェアのインストールから始める予定です。名工大では秀丸エディタを Z ドライブにしかインストールできなかったので、インストーラーの製作に四苦八苦しましたが、龍谷大の教育用端末の場合、秀丸エディタが C ドライブにインストール済みのため、楽なものです。秀丸エディタは大学の PC にインストールして教育目的で使う場合、無償となります。この太っ腹な制度を活用しない手はありません。

実習用インストーラーばかりでなく、プレゼンテーションに使う PDF ファイルと科学英語論文執筆に関する文書まで配付するという型破りな講習会です。後者には、かつて中性子回折に関する数多くの論文を添削しまくった経験が活かされています。製本していない紙の束を手渡してゴミ箱に直行させるのは気が進みませんので、あえて全ファイルの提供(再配布禁止)にまで踏み込みます。印刷経費がかからないのも好ましいです。

本講習会は名工大をスポンサーとする社会教育活動の一環として開催します。拙作ソフトウェアの教育と普及にご賛同いただいた名工大と会場を提供していただく龍谷大に感謝します。
RIETAN-FP v2.64 のリリース
7月中旬以降、シンクロトロン光利用者研究会(第3回 XRD グループ)での実習と教材作りに間に合わせるべく、酷暑の中、倦まず弛まず RIETAN-FP・VENUS システムのアップグレードとドキュメンテーションに取り組んできました。本日、ついに Windows・OS X 用 RIETAN-FP・VENUS システムの最新版を公開しました。Windows 用配付ファイルに同梱している Ghostscript v9.16 から不要なフォルダーやファイルの大半を削除した結果、転送量が無制限の Web サーバーに置けるようになりました。

今回のアップグレードでは RIETAN-FP を v2.64 にバージョンアップし、documents フォルダー中の三つの PDF ファイルを改訂しました。主な変更点は次の通りです:
  1. 粉末回折用グラフィックツール WinPLOTR で見積もったバックグラウンド(離散点)ファイル hoge.bgr 中のデータを補間することにより全回折点のバックグラウンド強度ファイル hoge.bkg を出力できるようにした。
  2. NMODE = 1(シミュレーション・モード)で反射リストが出力されないというバグを取り除いた。
  3. NPRINT = 2 のとき出力される観測・計算強度 vs. 2θ のラインプリンター・プロットの機能はもはや時代遅れなので、削除した。
  4. 抑制条件の計算結果のリストにおける "TA" (Torsion Angle) を "DA" (Dihedral Angle) に訂正した。
  5. Windows 用 RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境を構成している秀丸マクロの順序を一部入れ換えるとともに、三つの新マクロ (WinPLOTR/INT, WinPLOTR/ITX, DICVOL14) を追加した。これに伴い、誤って F1 に割り当てていた [数値選択] などをステータスバーから削除した。
WinPLOTR/INT は WinPLOTR で強度データファイル hoge.int を入力し、ピークサーチ、平滑化、バックグラウンドの見積もり、指数づけなどを行うのに使います。空間群に関する情報も得られます。WinPLOTR/ITX はパターンフィッティングの結果を収めた Igor テキストファイル hoge.itx のデータをグラフとしてプロットします。DICVOL14 は秀作の呼び声が高い最新指数づけプログラムですが、WinPLOTR パッケージにはまだ含まれていません。各自、入手するようお願いします。DICVOL14 は WinPLOTR が出力した DICVOL06 用入力ファイル hoge.dic を DICVOL14 で直接処理するためのマクロです。今回のバージョンアップにより、Windows 用 RIETAN-FP・VENUS システムは WinPLOTR の全機能を実質的に取り込んだも同然です。

v2.64 の目玉機能である hoge.bgr 経由の hoge.bkg の作成や WinPLOTR によるピークサーチと指数づけなどについては、Evernote の公開ノート

「RIETAN-FP と WinPLOTR との連携」

をお読みください。過不足のない情報が得られるでしょう。私の Evernote ノートブックは700を超すノートからなっていますが、特定のノートをオープンにするのは初めての試みです。三つの新秀丸マクロや OS X 用 WinPLOTR を敬遠する理由についても、上記ノートに記しました。公開ノートには、プライベート・ノートの添削結果がリアルタイムで反映されるという利点があります。

RIETAN-FP 用入力ファイル hoge.ins は注釈行の一つが変更されただけで、v2.63 の入力ファイルがそのまま使えます。なお、秀丸エディタ v8.54 が昨日リリースされたので、Windows ユーザーはそちらの方もバージョンアップしておいてください。

名工大の実習用 PC では、外部から持ち込むプログラムとデータは Z ドライブにしかインストールできません。そこで拡張版 Install_RIETAN_VENUS.bat と前処理プログラムを新たに書いています。少々バテ気味ですが、今後、同研究会と前日の第8回 結晶性萌芽材料 粉末回折研究会での講演・実習の準備を少しずつ進めていくつもりです。

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