お知らせ+活動記録+たわごと

HP と Twitter を補完するとともに、互いの密接な連携を図るため、本ブログを開設した。三位一体を目指す。情報提供、広報活動、教育・啓蒙活動の一環として、肩の力を抜き、冗長性を廃し、簡にして要を得た文章を書くよう心がける。
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Homebrew による OS X 用フリーソフトウェアのインストールと更新
OS X 用 RIETAN-FP で gnuplot によるグラフ作成機能を利用するには、ソフトウェアの導入を容易にするパッケージ管理システム Homebrew により gnuplot を自分でインストールしなければならない。参考までに Homebrew の基本操作を以下に説明しておく。

まず、Homebrew の HP に記されている通り、ターミナルに
ruby -e "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/master/install)"
をコピー&ペーストして Homebrew をインストールする。Homebrew ではパッケージのことを formula と呼ぶ。以下、formula_name を gnuplot に置き換えて入力すればよい。gsed の formula name は gnu-sed である。

各 formula をインストールするには、ターミナルで
brew install formula_name
と入力する。複数の formula_name をスペースで区切って並べてもよい。/usr/local/bin フォルダに実行形式プログラムのエイリアスが置かれるため、/usr/local/bin フォルダに実行形式プログラムのエイリアスがにバスが通っていれば、コマンド名だけで起動できる。

たとえば Gnuplot 5.0.1の場合、/usr/local/Cellar/gnuplot/5.0.1/bin ディレクトリーの下に gnuplot が生成する。なんらかの理由で /usr/local/bin フォルダにエイリアスが生成しない場合は、ターミナルで
ln -s /usr/local/Cellar/gnuplot/5.0.1/bin/gnuplot /usr/local/bin/gnuplot
と入力すればよい。

ターミナルで入力すべき他の主要コマンドは次の通り。
バージョン番号を表示: formula_name --version
インストール済みの formula を表示: brew list
Formula の削除: brew remove formula_name
古い formula を表示: brew outdated
brew 自身のアップデート: brew update
'brew update' に引き続き formula のアップグレード: brew upgrade
Homebrew のアンインストールについては、このブログエントリーを参照されたい。
RIETAN vs. Z-Rietveld
1. Gnuplot による年次被引用数のグラフ化

今月、大学と企業で一回ずつ講演する機会があり、RIETAN-2000/FP に関する論文2報 (Izumi & Ikeda, 2000; Izumi & Momma, 2007) の被引用数の年次推移を表す棒グラフを gnuplot で作成し、プレゼンテーションに使用した(2013年分は後日再調査して修正。ちなみに2014年には 61 + 152 = 213 という過去最高の被引用数を達成した)。


ちなみに、グラフ化に用いた gnuplot スクリプトファイル RIETAN.plt は次の通り。
set t pdfcairo lw 1.2 size 21cm, 13cm font ", 16" fontscale 0.65
set o "RIETAN.pdf"
set border lw 1.2
set tics scale 1.4, 0.8

set encoding utf8 # 漢字を出力

set xtics nomirror offset 0.0, 0.3
set xlabel "年" offset 0, 0.1 font ", 18"

set ytics mirror offset 0.5, 0.18 0, 50, 240
set mytics 5
set ylabel "被引用数" offset 0.65, 0 font ", 18"

set style fill solid bo lc rgb "black"
set boxwidth 0.7 relative

set key left top spacing 1.3 width 0 height 1

# Margins measured in character widths or heights (a negative value: automatic)
set margins 8.5, 2, 4, 1.1 # , , ,

plot [:] [0:240] "RIETAN.dat" u 0:($2+$3) w boxes lw 1 lc rgb "light-pink" t 'Izumi \& Momma (201-07)',\
"" u 0:($2):xtic(1) w boxes lc rgb "light-cyan t 'Izumi \& Ikeda (2000)'
ご覧のように、terminal pdfcairo で PDF ファイルを直接出力するようにした。このスクリプトファイルは漢字を含むため、UTF-8 フォーマットで保存しなければならない。文字列中の '&' が単一引用符で囲まれているときは、バックスラッシュでエスケープすることに注意してほしい。数値データは RIETAN.dat というテキストファイルに保存されている:
2000      1      0
2001    23      0
2002    85      0
2003  108      0
2004  136      0
2005  151      0
2006  202      0
2007  206      3
2008  173    17
2009  172    33
2010  159    46
2011  113    96
2012    93  108
2013    61  144

2. RIETAN-2000/FP の波及効果

上の棒グラフから一目でわかるのは、2006年以降の被引用数が約200/年でほぼ定常状態となっており、賞味期限切れの RIETAN-2000が意外にしぶとく生き残っていることだ。約200の被引用数を8年連続で達成しているのは、瞠目すべき実績である。本ブログに投稿されたカテゴリー「ソフトウェア」に属するエントリーを眺めれば、RIETAN-2000/FP がいかに多くの論文に貢献しているかが自ずと感じられよう。

科学技術ソフトウェアが時代遅れになり、なおかつ将来性が危ぶまれると、利用者はふつう漸減していく。粉末回折のマーケットが飽和しているにもかかわらず RIETAN の人気が衰える兆しを一向に見せていないのは、
  1. 枯れたプログラム RIETAN-FP がすこぶる安定に動いている。
  2. 数多くの既存ユーザーを抱えブランド化を達成している上、一度習得したプログラムを惰性で使い続ける人が多い。
  3. プログラム中で使用している数式や入出力ファイルの内容などを網羅した英文マニュアルが提供されている。
  4. 世界的に広く普及している三次元可視化システム VESTA との緊密な連携を享受できる。
  5. ネット、書籍、レビューなどから多くの日本語情報が入手できる。
  6. RIETAN-FP・VENUS 統合支援環境がありきたりの GUI プログラムより俊敏で、なおかつ使い勝手が良い。
  7. 私が依然として拡張・改良と教育・啓蒙・宣伝活動に励んでいる (「RIETAN-2000と RIETAN-FP」参照)。
という事実により容易に説明できる。Gnuplot によるグラフ作成機能の実装(「RIETAN-FP への Gnuplot の導入」参照)は No. 5 に分類される。私と社会をつなぐパイプは自作プログラムのみだ。健康を害したりしない限り、ボケ防止も兼ね今後も RIETAN-FP のバージョンアップとメンテナンスを続けていく。

近日中に公開する RIETAN-FP v2.3のマニュアル RIETAN-FP_manual.pdf は261ページにも達している。これほど豊富な情報を提供している国産無償科学技術ソフトのマニュアルは、ごく希だ。マニュアルには PC の操作だけ記すのでなく、プログラム中で使用している重要な数式やアルゴリズムをすべて記述せねばならない。その点、RIETAN-FP_manual.pdf には百点満点を与えることができる。

3. それにひきかえ Z-Rietveld は・・・

200/年という被引用数の多寡を客観評価するため、J-PARC で測定した TOF 粉末中性子回折データ用のリートベルト解析プログラム Z-Rietveld に関する論文(Oishi et al., 2009)の被引用数と比較してみた。

そういう不毛の行為に踏み切ったきっかけは、最近、私が Z-Rietveld の作成に関与していると誤解している人に出会したことである。Z-Rietveld では KENS の TOF 粉末中性子回折装置 VEGA の背面バンク用に RIETAN-2001T に実装した分割プロファイル関数や部分プロファイル緩和を猿真似しているので、そう思い込むのも無理はないが、迷惑至極だ。そもそもプライオリティーを尊重せず primary → global、secondary → local と故意に用語を変えてオリジナリティーの無さを隠蔽している。個々の反射について計算する物理量に範囲を表す形容詞 local を付けるのは改悪以外の何物でもない。

私は Z-Rietveld の製作には一切コミットしていない。Z-Rietveldに限らず、いわゆる Z-code の大半は外部ソフトウェアハウスへのアウトソーシングで製作したものだろう。言い換えれば、知識と能力と時間を(税)金で買ったに等しい。

件の分割プロファイル関数は20年弱前に KENS 中性子源の粉末回折装置 VEGA の背面バンクで測定した TOF 中性子回折データ用に最適化し、RIETAN に組み込んだ複雑な関数である。精密化するプロファイル・パラメーターの数が多く、結果としてパラメーター間の相関が非常に強く、微分係数を使う非線形最小二乗解法では収束しにくい。物理的な意味をまったく持たないため、異方的プロファイル・ブロードニングを適切に近似できない。こんなプロファイル関数は、疾うに賞味期限切れといって過言でない。そもそも新たな中性子源+粉末回折装置を用いる以上、厳密には装置・バンクごとに一次プロファイルパラメーターの d 依存性の式を最適化し直さなければならないのだが、装置グループのメンバーのスキルと指導力の欠如から、そっくりそのまま流用してお茶を濁したのだろう。彼らは筆頭著者の論文を量産する能力、アイデア、試料合成用の実験設備・技術を持ち合わせておらず、実態は研究者というよりテクニシャン同然なのだから、無理もないが・・・ 論より証拠、装置グループの連中が筆頭著者になっている論文がどれだけ発表されているかを調べれば、一目瞭然である。

閑話休題、J-PARC は最新の高強度パルス中性子源であり、TOF 粉末中性子回折データを測定できる装置は数台建設済みである。その上、粉末中性子回折はパルス中性子源の稼ぎ頭なので、さぞかし成果が挙がっているに違いない。J-PARC は中性子産業利用推進協議会まで立ち上げて産業利用を推進しようと躍起になっているのだから、民間企業も積極的に利用しているはずだ。最後発ソフトは古参ソフトの秀逸な機能を模倣しやすい。さらに、Z-Rietveld は粉末X線回折データも解析できるので、使い勝手やパフォーマンスさえ優れていれば、RIETAN-2000/FP からユーザーを奪う可能性は大いにある。私情を交えず客観的に過去数年の業績を予想すると、こんな所に落ち着くだろう。

ところが Web of Science の検索結果は暗澹たるものだった。2009〜2013年の間の Z-Rietveld に関する国際誌論文の被引用数はわずか23に過ぎなかったのだ。RIETAN なら40日余りで達成する程度の悲惨極まりない値である。RIETAN-2000/FP に関する論文は同じ期間に997回引用されているので、Z-Rietveld/RIETAN 比はわずか2.3 %ということになる。被引用数比だからこの程度ですむものの、粉末回折装置の台数で割り、巨額の建設・維持費、人件費、電気料金、宣伝活動経費を消費する施設に特有の費用対効果の低さまで考慮したら、無視できるほど小さい数字になり果てるだろう。Z-code 自身、アウトソーシングに相当な予算を費やしているに違いない。言わば金に物を言わせて開発しているのである。「成果に貢献してなんぼ」の科学技術ソフトとしては、実績があまりにも貧弱であり、ひいては存在感が希薄すぎる。

2年前に「PRIMA vs. ENIGMA」というエントリーを投稿したが、MEM 解析プログラム ENIGMA は PRIMA には惨敗したものの、ENIGMA/PRIMA 比は46 %(現時点では44 %)であり、それなりに健闘していた。そもそも Z-Rietveld がその価値を認められ、大いに利用され続けていたならば、RIETAN-2000/FP に関する論文の被引用数はここ数年、単調に減少してきたに違いない。J-PARC における TOF 粉末中性子回折が一向に盛り上がっていないのは明白だ。

おまけに、民間企業に所属する研究者が筆頭著者の論文はなんとゼロ(!)だった。茨城県が建設・維持している iMATERIA は大半のビームタイムを民間企業に割り当てるのが原則のはずだ。測定したデータがいくら多くても、国際誌に掲載される成果が皆無なのでは話にならない。この事実は J-PARC における産業利用の低調さ、企業研究者の実力不足、施設サイドの支援態勢の不備を如実に反映している。茨城県産業利用課題の成果報告書をざっと眺めると、量・質ともに貧弱なことが見て取れる。課題番号2012BM0015の報告書には、
Z-Rietveld を用いて3相解析を行おうとしたが、ソフトの動作がやや遅く、解析が進みづらい状態に陥った。そこで GSAS を用いて Rietveld 解析を進めていくことにした。
という実態が記されている。わずか3相で解析がデッドロックに乗りあげるという鈍重には呆れ果てる。複数の人から Z-Rietveld の計算速度は異常に遅いと聞いている。

企業研究者が中心となって発表した論文が皆無という事実は、パルス中性子が企業活動(利益の獲得)に直接役立つという幻想を植え付けようとする企てが今のところ奏功していないことを赤裸々に明示している。一方、SPring-8の企業ユーザーは国際誌に研究成果をそれなりに発表しているはずである。恐らく、中性子散乱はマンパワーと経済力に余裕のある大企業が手を出す道楽とみなされているのだろう。絶えず生存競争に励み、時にはリストラで苦境を乗り切っている企業は、そう甘くない。

たとえ中性子散乱が金食い虫である割にニッチな研究手段であり、そのマーケットがごく小さいことを考慮しても、被引用数至上主義者(「非引用地獄」参照)としては Z-Rietveld の生産性の低さに失望の念を禁じ得ない。少なからぬ税金を費消しているにもかかわらず、これほど貧弱極まりないアウトプットにしか貢献していないのは情けない限りだ。第一、英語論文を執筆できるレベルのパワーユーザーを十分獲得できていないようでは、プログラムがなかなか枯れないだろう。ユーザー数がごく少ないX線回折データの解析部分はとりわけリスクが高い。

発展途上の Z-Rietveld が敬遠され、実績のある枯れた外国製プログラム(たとえば GSAS と FullProf)を選択するユーザーが多いという訳でもなさそうだ。横軸が飛行時間 (t/μs) なのに怖じ気づく人が意外に多いという可能性はある。実際、自分も初めて TOF 中性子回折用の RIETAN を作成したときは、大分戸惑った。マルチバンクで測定した強度データの同時解析は角度分散型回折データの解析に比べ、相当面倒なのも事実である。また以前「ムラ社会の掟」で痛烈に批判したように、磁性原子を含む材料を扱うチャンスがかなり多いのに、ごく単純な強磁性磁気構造すら解析できないという体たらくなのは致命傷に近い。磁気構造解析機能の必要性については6年も前に装置管理者に面と向かって指摘した(2006年7月4日の掲示板参照)ので、専門知識不足と職務怠慢の誹りは免れない。これまで強磁性体の磁気散乱を無視した解析結果がいくつも発表されたのではなかろうか。しかし、成果不足の現状はそれらだけでは説明し切れない。

Z-Rietveld の諸機能、パフォーマンス、安定性、使い勝手の良さ、マニュアル(そもそも「マニュアル」と称するに値するドキュメントは存在するのか?)を精査すれば答えが出るはずだが、不人気ひいては成果不足の原因を究明し対策を講じるべきなのは、もちろん中性子ムラの住民である(「ムラ社会の掟」参照)。本エントリーでは冷厳な事実だけを率直に記述し、更なるコメントは控えておく。装置グループの方々は上記のような「不都合な真実」を突きつけられたことに発憤して Z-Rietveld の改善と補強(とくに、タイムフォーカシングに伴う誤差の伝播の正確な評価。物理的な意味のあるプロファイル関数、あらゆる種類の磁気構造の解析、VESTA に匹敵する強力な統合可視化システムの開発、熱散漫散乱の補正、RIETAN-FP_manual.pdf 並の詳細な英文ドキュメンテーション)に粉骨砕身し、能う限り多くの研究成果を世に送り出すよう努めてもらいたい。「車輪の再発明」的な最後発ソフトなのに手抜きばかりが目に付く劣化コピー状態に安住するならば、存在意義が疑われる。

なお本エントリー中に誤解や認識不足に起因する事実誤認が見つかったならば、実名で私に直接ご指摘いただければ幸甚である。不適切な記述は修正するにやぶさかでない。逆に言えば、なんらレスポンスがないならば事実として認めたということになる。
Sumatra PDF のインストールと設定
Windows 版 RIETAN-FP v2.3に追加した gnuplot (+Ghostscript) によるグラフ作成機能を利用するには、PDF ファイルを表示するためのブラウザが必要不可欠だ。PDF の本家である Adobe 製の閲覧ソフト Adobe Reader には使い勝手を悪化する制限がある。 PDF ファイルをロックするため、表示中のファイルを閉じないと新たなファイルを表示してくれないのだ。これでは面倒だし、やや重いのも気にかかる。

Mac では OS X に備わっているプレビュー (Preview.app) を使えば、この問題は生じない。Windows 用には、たとえば Sumatra PDF を推奨する。軽快に動く無料ソフトであり、すでに愛用されている方も多いだろう。

Sumatra PDFで PDF ファイルを閲覧中に同名の PDF ファイルを開く場合、別な Sumatra PDF が立ち上がるのでなく、単一の Sumatra PDF が表示を切り換えるよう設定する方がメモリー効率が良くなる。バッチファイル中で SumatraPDF コマンドのオプションに
-reuse-instance
を加えれば、そうなる。しかし、当該オプションは秀丸マクロとの相性が悪く Plot.mac を中断するのかと毎回問われるのが煩わしい。そこで、Sumatra PDF の設定メニューで [詳細設定] を選び、エディターあるいはメモ帳で開かれた設定ファイル SumatraPDF-setting.txt 中の5行目、
ReuseInstance = false

ReuseInstance = true
と書き換え、設定ファイルを保存する。

さらに、拡張子 pdf をアプリケーション Sumatra PDF に関連付ける。任意の PDF ファイルをマウスで右クリックし、最下部の[プロパティ]を選ぶ。そして、プロパティ・ダイアログの [全般] で[変更]ボタンをクリックして、SumatraPDF.exe を指定する。64ビット Windows の場合、SumatraPDF.exe は C:¥Program Files (x86)¥SumatraPDF フォルダに入っている。

これだけで、Sumatra PDF が PDF ファイルを閲覧するための標準アプリケーションに指定され、RIETAN-FP・VENUS 支援環境でパターンフィッティング終了後に [Plot] ボタンをクリックすれば、Sumatra PDF がグラフを自動表示するようになる。以後、拡大・縮小と表示領域の移動は自由自在である。

Sumatra PDFがすべての PDF ファイルの閲覧やプレゼンテーションに使えるのは言うまでもない。本家の Adobe Reader より動作が俊敏なので、古い PC ではとりわけ重宝するだろう。
MacTeX-2013 に対応した「Mac 用 TeX による英文・和文のタイプセット」
粉末回折情報館で公開している PDF ファイル「Mac 用 TeX による英文・和文のタイプセット」MacTeX-2013 (TeX Live 2003)に対応させる作業がようやく一段落した。これを一読すれば、MacTeX-2013を Mac にインストールし、バージョンアップに応じてアップデートし、OS X 用 TeX 文書作成支援環境 TeXShop の環境設定を行い、英文・和文の *.tex を編集・組版するのに必要な最小限の基礎知識が一挙に得られるはずだ。

もともと、上記文書は自分のための備忘録として作成し、必要に応じて手直ししてきた。人様にとってどれだけ有用かはよくわからないが、一部だけでも参考になればよいと考え、公開している。お役に立てば幸いである。

多くの方々の献身的活動を通じて TeX Live が頻繁に更新され続けているのには、ただただ頭が下がるばかりだ。これほど大規模なプログラム群が無償で入手できるのだから、不安定、鈍重、高価な Microsoft Word を使う機会は極力減らすよう心がけていきたい。

拙作ソフトのドキュメンテーションでは、もっぱら UTF-8エンコーディングで記録した *.tex を TeX Live 2013 + TeXShop で組版している。7年半前に購入した iMac でも多数の数式と文献を含む長大な RIETAN-FP のマニュアルがスイスイ組版できるほど軽い上、すこぶる安定である。
粉末回折データを用いる未知構造解析のための代表的プログラム
粉末X線回折データから未知構造を解析する方法は逆空間法(直接法)、実空間法(直接空間法)、逆空間と実空間を行き来するデュアルスペース法(チャージフリッピング)に大別される。ありがたいことに、それぞれ秀逸なソフトウェア


が(アカデミックユーザーには)無償で配付されており、これらの利用を通じて比較的容易に未知構造のモデル(空間群、おおよその格子定数と原子座標)を構築できる。

EXPO は最新バージョン EXPO2013が一昨日、公開されたばかりだ。EXPO2013には

  • The covariance principle based completion method (COVMAP) for structure model optimization
  • The RAndom Model based Method (RAMM)
  • The Hybrid Big Bang-Big Crunch approach for structure solution in reciprocal and direct space, respectively

などの強力な新アルゴリズムが実装された。特筆すべきなのは OS X バージョンが X11.app 抜きで動くようになったことだ。まだ動作が少々不安定なようだが、いずれ枯れてくるだろう。

OS X 用 EXPO2013で Le Bail 法により硫酸バリウムの粉末X線回折データを解析した後のウィンドウを下に示す:


EXPO は指数づけ、Le Bail 法、空間群推定、リートベルト法なども包含した統合粉末構造解析システムである。ただし EXPO を用いた Le Bail 解析やリートベルト解析において達成できるフィットは完璧からは程遠いため、最終的には RIETAN-FP などの本格的なプログラムを使うことを推奨する。EXPO 開発の中心的存在である Giacovazzo 先生が結晶解析ソフトウェアの営利化を嫌っておられるという逸話は、以前ツイッター(4月16日)でつぶやいた。

モンテカルロ法プログラム FOX については、岡山大の神崎正美先生が PukiWiki で種々のノウハウを微に入り細にわたり披瀝しておられる。FOX は指数づけ、空間群推定、Le Bail 解析の機能をもつ一方、リートベルト解析はできない。神崎先生は FOX と RIETAN-FP(リートベルト解析)の組み合わせによりいくつかの高圧相の構造を実際に解析された。

最新版 Superflip のタイムスタンプは2013年4月17日となっている。Superflip はチャージフリッピング専用プログラムであり、積分強度抽出機能を欠いているため、Le Bail/Pawley 解析の機能をもつ外部プログラムとの連携が必要不可欠だ。

RIETAN-FP がハイブリッド・パターン分解後に出力したファイル *.ffo に記録されている |Fo| を EXPO と Superflip で処理する方法については、RIETAN-FP_manual.pdf に付属する文書「多目的パターンフィッティング・システム RIETAN-FP の新機能について」の16.4で言及した。

むき出しのチャージフリッピング・エンジンに近い Superflip はさておき、GUI を備えた未知構造解析システム EXPO2013と FOX が無償で使えるのは願ってもないことだ。

神崎先生の PukiWiki の記述からも窺えるように、三つの方法論はそれぞれ得手、不得手があり、けっして万能でない。商用ソフトの方が優れているという訳でもない。商用ソフトを大枚叩いて買ってほぞを噛むよりは、単結晶X線解析における複数の直接法プログラムの併用と同様に、上記の著名プログラムをケースバイケースで使い分ける方が賢明だ。もっとも、ベンダーの技術者の人件費が価格に含まれていて、解析をみっちり指導してくれるというのなら、その限りでない。研究資金に事欠かないのであれば「時間を金で買う」のが一番手っ取り早いのは、どんな研究手段にも共通する真実なのだから。
TeXstudio による LaTeX 文書の最終検査
Microsoft Word の使用を強制されでもしない限り、数ページ以上の文書は日本語、英語を問わず LaTeX で書くことが多い。図表、数式、文献を含む長い文書を Word で作成するのはトラブルとストレスの元ということを知悉している。鈍重かつ不安定な Word は業務用アプリケーションを名乗れるレベルに達していない。所詮は一般大衆向きのできそこないソフトだ。

昨日 LaTeX 統合環境 TeXstudio v2.5の OS X バージョンを試用してみたが、早くもその恩恵を被った。従来愛用してきた TeXShop は無愛想なアプリケーションで、英語文書中に全角文字が紛れ込んでいても、単に無視するだけで、なんのメッセージも出さない。一方、TeXstudio は
Missing character: There is no ï in font cmr10!
Missing character: There is no ½ in font cmr10!
Missing character: There is no in font cmr10!
というような警告を発してくれる。このサービス精神には感心する。全角文字のありかは秀丸エディタで正規表現 [^¥x01-¥x7E] を検索すれば、容易に突き止められる。

日本語文書も正常にタイプセットできるし、OTF パッケージも使える。しかし、仮名漢字変換が終わるまでは文字が現れず、なおかつ修正した文書を正常に保存できないことがあるのは致命傷だ。これらの深刻なトラブルが解消するまでは、TeXstudioでゼロから日本語文書を作成しない方がよい。

Fortran や C++ のプログラムの場合も、同じソースコードを複数のコンパイラーでビルドすると、見逃しやすい間違いをしばしば検出できる。今後も TeXShop を使い続けるのに変わりはないが、TeXstudio を *.tex の最終チェック限定で活用していくことにしたい。
Windows 用 bash を使用するためのノウハウ
8月26日に記したように、Gow の bash v2.03の活用を前提として、自動 MPF 解析スクリプト MPF_multi.command を OS X から Windows に移植した。そのとき会得した主要ノウハウをメモ代わりにまとめてみた。
  1. Gow を C:¥Program Files¥Gow¥bin にインストールすると、そのフォルダが自動的にパス指定され、130の UNIX 互換コマンドが使えるようになる。インストール時には C:¥Program Files (x86)¥Gow¥bin がデフォールトの行き先として表示されることが多いので、十分注意すること。
  2. bash.exe をダブルクリックして bash.exe のウィンドウを開いた後、左上のアイコンを右クリックしてプロパティを選ぶと、ウィンドウのプロパティを変更できる。
  3. Gow の cp.exe はフォルダ名(行き先)の最後の文字が "/" だと正常に動かないので、"/" を削除しなければならない。
  4. C:¥tmp というフォルダが存在しないと、MPF_multi.command の実行直後に /tmp がないと文句を言われる。
  5. フォルダやファイルの名前は '¥' でなく '/' で区切る(UNIX 流)。
  6. 絶対パスの先頭は 'C:/' とし、フォルダ名がスペースを含む場合は二重引用符 " ... " で囲む。
  7. 特殊文字は '¥' でエスケープする(日本語 Windows 流)。
  8. 絶対パスを変数に代入するときは、ドライブ名 'C' の後ろの ':' をエスケープする必要がある。
  9. for i in {1..10} と for i in `seq 1 10` というループはいずれも使えないので、垢抜けないが for i in 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 とする。
  10. GNU UNIX 互換コマンドでは more の代わりに less を使う。
  11. たとえ日本語の注釈を含む可能性がある *.ins であっても、半角英数字の部分は Gow の sed で処理できる。
  12. 自作ユーティリティー seconds.exe の標準出力における最後の文字が CR/LF となってしまうため、tr コマンドで取り除かなければならない。
MacTeX-2012 対応の「Mac 用 TeX による英文・和文のタイプセット」
MacTeX-2012のリリースを受け、粉末回折情報館で公開している PDF 文書「Mac 用 TeX による英文・和文のタイプセット」を MacTeX-2012に対応させた。日本語・英語用の設定を頻繁に切り換える人にとって有用な情報として役立つことを確信している。

MacTeX-2012をインストールした後、TeXShop の初期設定を済ますと、ただちに日本語文書を扱える。また mediabb.sty と BibTeX の互換性に関するトラブルが解消したことを知り、感涙にむせんだ。PDF のグラフィックファイルだけ貼り込むならば、Drag & Drop UpTeX や Ghostscript はもはや不要で、本当にすっきりした。

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